「家族が遺した自宅を相続するけど、どのような注意点がある?」
「亡くなった父には、遠方に所有している田畑があったはず。どうやって調べる?」
「兄弟で不動産を相続するけど、相続方法にはどのような方法があるか知りたい。」
現金や預貯金とは異なり、相続時には不動産だからこそ知っておきたい注意点があります。特に複数名の相続人で1つの不動産を相続する場合、相続の方法には慎重な検討が必要です。そしてとくに親の不動産を「兄弟姉妹」が相続するときは、売却してから相続するなどの選択肢も検討したほうがいいでしょう。
この記事では不動産は兄弟でどう相続するのかについて、相続方法や不動産の調査方法を紹介していきます。
相続財産に不動産があるか調べる方法
被相続人が遺した財産の中には、「不動産」も含まれます。戸建やマンションのような住まいから、田畑などの土地なども含むため、遺産相続の調査を行う際には丁寧に不動産がないか、調査を行う必要があります。
自分の配偶者の不動産を相続するとなれば、どこに不動産があるか知っていることも多いでしょう。
しかし親の財産を「子どもである兄弟姉妹」で相続するとき、もしくはある兄弟姉妹の財産を「別の兄弟姉妹」が相続するケースでは、そもそも相続財産に不動産が含まれているのかわからないこともあります。
では、相続財産に不動産が含まれるかどうかは、どのように調査すれば良いのでしょうか。主な方法は次の5つです。
- 被相続人名義の固定資産納税通知書
- 名寄帳
- 非課税証明書
- 不動産登記権利情報
- 共同担保目録
それぞれ詳しく見ていきましょう。
被相続人名義の固定資産納税通知書
まずは被相続人名義の固定資産納税通知書を確認しましょう。
多くの不動産は課税対象となっているため、被相続人が不動産を所有している場合には、「固定資産税」を納付している可能性が高いです。
そのため、被相続人宛に届いていた「固定資産税納税通知書」を確認すると、被相続人が所有していた不動産が分かります。
なお、固定資産税通知書は、すでに被相続人よりも前に亡くなられている家族宛てに届く場合もあります。不動産の所有者あてに届くため、鬼籍に入られている方宛でも、不動産の所有者が変更されていなければ届くことがあるのです。
先代宛などに来ている固定資産税の納税通知書も、被相続人が以前に相続していた不動産である可能性が高いため、必ず確認しましょう。
ただし、「固定資産税納税通知書」にすべての不動産が記載されているわけではないため、注意が必要です。
名寄帳
不動産によっては、固定資産税が課税されない不動産もあります。課税されない不動産については固定資産税の納税通知書には記載されないため、別の方法で調べる必要があります。
まず確認すべきが「名寄帳」です。
各市区町村では、課税対象となる不動産を調べることを目的に作られた、「名寄帳」と呼ばれるものが保管されています。
名寄帳は相続人であれば取り寄せることができる資料で、課税対象とならない不動産(例・私道や山林など)が掲載されていることがあります。
関連記事:名寄帳とは?方法や利用時の注意点を行政書士が解説!
非課税証明書
各市区町村で取得できる「非課税証明書」も役立ちます。固定資産の所有者や所在、地積(土地)、種類・構造などが記載されています。
不動産登記権利情報
不動産の有無を調べるにあたっては、「不動産登記権利情報」も役立ちます。(平成17年3月6日以前は権利証が発行されていました)
亡くなった方の不動産の所在がわからない、あるいは不動産の権利証が見当たらない場合には、不動産登記識別情報が発行されている可能性があります。
共同担保目録
不動産を調べる際には、「共同担保目録」も調査することが大切です。複数の不動産が抵当権や根抵当の担保となっている場合に作られている目録で、把握していない不動産が掲載されていることがあります。
不動産の相続方法は3種類
不動産が無事に特定できたら、今度は不動産を次の世代の方が所有・管理していくために、相続手続きを進める必要があります。
そこで、この章では不動産相続の方法について、注意点も踏まえながら詳しく解説を行います。
不動産の相続を進めるにあたっては、以下の方法が考えられます。メリット・デメリットも踏まえて紹介しますのでご一読ください。
相続方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
共有 | 法定相続分通りに相続できるため、話し合い時間が短く住む | 活用や売却がしにくい。 将来の相続時に共有がさらに細分化されるおそれがある。 |
代償分割 | 不動産を取得しなかった人は金銭などで代償を得られる。 | 不動産を取得する人は代償分の資金を用意する必要がある。 |
換価分割 | 不動産を売却し、得られたお金を分割できるため揉めにくい | 売却時には手数料や税金が発生する。 |
共有
相続が開始されると、不動産は「共有状態」となります。兄弟姉妹で親の不動産の分け方が決められず、そのまま共有財産として相続するケースもゼロではありません。
しかし共有状態は、次世代の相続で所有権が細分化するなどのリスクが大きいため、相続時には相続人全員で話し合いを重ねて、いずれか一人が相続するよう決めておくことがおすすめです。
たとえば不動産の価値が上がり売却しようと思っても、共有者全員の同意がなければ売却もできません。共有者が増えすぎると、そもそも誰が所有権を有しているのか調べることも大変になります。
代償分割
代償分割は、特定の相続人が不動産を取得する代わりに、本来得られたはずの相続分を、金銭などで支払って解決する方法です。
この方法は不動産を取得する相続人にとって、重い負担となりやすいため注意が必要です。
換価分割
換価分割は不要な不動産を売却して、その売却代金を分割できるメリットがありますが、大切な資産を売却によって減らすことにもつながります。
また、売却時には税金なども発生するため注意が必要です。
不動産を相続したら相続登記が必要
不動産を相続したら、相続登記を行う必要があります。相続登記は令和6年4月1日以降に義務化され、3年以内に登記されなければ過料が科せられるおそれがあります。(なお、相続登記の義務化は、法改正前の不動産も対象です)
遺言書がある場合は不動産の所有権を取得したことを知った日から3年が期限です。
遺産分割協議の場合、期限は以下の2つに分けられます。
①遺産分割協議が成立したケース
相続人であること、かつ相続財産の中に不動産があることを知ってから3年以内
②遺産分割協議がまとまらないケース
3年以内に遺産分割協議がまとまらない場合、相続人申告登記(※)をすること
※相続人申告登記とは、戸籍などを提出して、自分が相続人であることを申告するというものです
詳しくは東京法務局HPを参照:相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)
兄弟で不動産を相続する方法に悩んでいる方は行政書士に相談を
この記事では、遺産相続について「不動産」に焦点を当てて詳しく解説しました。不動産の相続は相続登記や相続税を見据えて進める必要があり、どこに、どのような不動産があるのか早急に特定を進める必要があります。
不動産の調査に翻弄されないためにも、相続手続きに慣れた専門家に相談することをおすすめします。
横浜市の長岡行政書士事務所では、清算型遺贈・換価分割などで不動産の売却が発生する相続手続きもサポートしていることが特徴です。
初回相談は無料で、わかりやすいご説明を心掛けておりますので、お気軽にご相談ください。