「立て続けに父と息子が亡くなってしまい混乱しており、相続の事まで頭がまわりません」
「数次相続と代襲相続は何が違うのでしょうか」
「祖父からの相続は拒否したいけど父からの分の相続は受けたいんです」
今回のコラムでは親と子が立て続けに死亡した時などに発生する「数次相続」を取り上げてみたいと思います。
例を用いた数次相続の説明から始まり、よく似ている代襲相続や再転相続との比較を通じて数次相続への理解を深めていただければと思います。数次相続特有の手続きも紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
数次相続とは
数次相続とは、相続が発生しその遺産分割協議等が終わらないうちに相続人の一人が亡くなってしまい次の相続が発生してしまうことを指します。
例えば祖母が亡くなり相続のために遺産分割協議を重ねている最中に、配偶者として相続人の一人である祖父が亡くなってしまったというようなケースが数次相続の代表例です。
祖母と祖父のような老齢の夫婦は比較的年が近いことが多いでしょうし、また長年連れ添った伴侶を亡くしたショックもあるでしょうから、このようなケースは身近に起こりうるものと言えるのではないでしょうか。
代襲相続と数次相続の違い
数次相続と混同しがちな制度に、「代襲相続」というものがあります。
代襲相続と数次相続の違いを端的に言うと、相続人が遺産を残して亡くなった人(=被相続人)より先に亡くなっていたか(=代襲相続)それとも後に亡くなったか(=数次相続)というタイミングの違いです。
被相続人より先に相続人が亡くなる代襲相続
例えば、父A、母B、長男Cと次男D、長男Cの配偶者Eとその子(孫)Fの6人の家族がいたとします。
そして不慮の事故により長男Cが先に亡くなってしまい、その後に父Aが亡くなりました
この場合父Aの遺産の相続人である長男Cが先に亡くなっているので、代襲相続が発生し長男Cの代わりにその子(孫)Fが父Aの遺産を相続します。
よって父Aの相続人は、配偶者として母Bが2分の1、次男Dと孫Fが残りの2分の1を等分するので各4分の1ずつとなります。
被相続人より後に相続人が亡くなる数次相続
さて、ここで長男Cと父Aの亡くなる順番を変えてみましょう。
先に父Aがなくなり、まだその遺産分割協議が終わらないうちに長男Cが亡くなったとします。被相続人(父)より後に相続人(子)が亡くなるということです。
本来父Aの遺産は配偶者である母B、長男C、次男Dの3人で分けるはずですが、分け終わる前に相続人の一人である長男Cが亡くなってしまったので数次相続が発生します。
この例における数次相続の考え方としては、相続完了前でも亡くなった長男Cは父Aの遺産を受け継いでいたものとします。
そして長男Cの相続人である配偶者Eとその子(孫)Fが父Aの分の遺産も受け継ぐという流れになります。
よって父Aの遺産は母B、次男D、長男の配偶者Eとその子(孫)Fの4人で分けることになります。
父Aと相続人である長男Cの亡くなる順番が変わることで、配偶者Eが相続人になるかどうかの違いが見て取れます。
また、父Aが遺産を受け継ぐ事を一次相続、長男Cの遺産を受け継ぐことを二次相続といいます。
長男Cの遺産は父Aの遺産とは関係なく配偶者Eと子Fに相続されることに注意してください。
再転相続と数次相続の違い
ここでもう一つ、同じように相続人の死亡に影響を受ける状況に再転相続というものがあります。
再転相続と数次相続の違いについても知っておきましょう。
数次相続と再転相続はどちらも、
- 被相続人が亡くなった後に相続人が亡くなっている
- 相続が終了する前に相続人が亡くなっている
という2点では似ていますが、一番の違いは相続放棄が認められるか否かにあります。
熟慮期間が経過する前に次の相続が起きる再転相続
遺産にはプラスの遺産だけでなく、借金のようなマイナスの遺産もあります。
プラスの遺産だけ受け取るというような「いいとこ取り」はできませんので、相続人は相続が発生してから3カ月以内に相続を承認するか相続放棄を選択するかの意思表示をしないといけません。
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この相続を受けるか否かの検討をする期間の事を熟慮期間と言いますが、この熟慮期間中に意思表示をしないまま亡くなってしまう状況が「再転相続」です。
先ほどの家族の例を用いて考えてみましょう。
父Aの相続について、長男Cが相続の意思表示をする前に亡くなった場合、それは再転相続です。
再転相続であれば配偶者Eとその子(孫)Fは、父Aの遺産は相続放棄することができます。たとえば借金が多い父Aの分の相続は放棄し、長男Cの遺産はプラス分が多いので承継する、といった判断が可能です。
遺産分割協議が終わる前に次の相続が起きる数次相続
単純承認はしており、相続放棄しないことは確定しているものの、遺産分割協議が終わる前に次の相続が起きるのが「数次相続」です。
先ほどの家族の例を用いて説明します。
長男Cが遺産分割協議に参加しているということは、長男Cは父Aの相続を承認し、相続人になっているということです。
その後長男Cが亡くなると数次相続が発生します。配偶者Eとその子(孫)Fは既に長男Cが父Aの相続を承認しているので、改めて相続を放棄することは認められません。
(相続放棄が認められないのは父Aの遺産に関してであり、長男Cの遺産分に関しては配偶者Eとその子(孫)Fはまだ相続の承継も放棄も可能です)
数次相続手続きの流れ
数次相続の手続きを非常に単純化すると、次のような流れで進みます。
- 相続人を確定
- 遺産分割協議の開催
- 遺産分割協議書を別々に作成
- 相続登記
実際にはさらに細かく分けられますが、全体の流れを知っておきましょう。
相続人を確定
遺産分割協議をするために、まずは相続人を確定させなければなりません。
しかし数次相続が発生すると相続人が増え、相続人の範囲を確定するのが大変になります。
最初の相続(一次相続)と次の相続(二次相続)の被相続人について出生から死亡するまでの戸籍謄本を本籍地の役場から取り寄せ、一つ一つ相続人を確定させていく作業が必要です。
数次相続の際、誰が法定相続人になるのかは民法の知識がなければ難しいため、行政書士など専門家に相談してもいいでしょう。横浜市の長岡行政書士事務所でも、相続人調査に対応しています。
遺産分割協議の開催
相続人が確定したら、遺産分割協議を開催します。
なお、数次相続における遺産分割協議は、一次相続と二次相続のものを同時にまとめても、別々に開催しても、どちらでも問題ありません。
一次相続で父、二次相続で母が亡くなった場合など、相続人が完全に重複している場合には、まとめて協議したほうが手間は少ないでしょう。
しかし一次相続で父、二次相続で子が亡くなった場合など、相続人が重複していないケースでは、別々に開催したほうが分かりやすいかもしれません。
遺産分割協議書を別々に作成
たとえ遺産分割協議を同時に開催したとしても、遺産分割協議書は別々に作成します。
なお、一次相続における遺産分割協議書は、通常の遺産分割協議書とは異なり、「相続人情報の記載欄(二次相続の対象となっている方を「相続人兼被相続人」として記載する欄」が必要になります。
相続登記
原則として、まずは一次相続の相続登記をし、つづいて二次相続の相続登記をしなければなりません。
ただし中間の相続人(一次相続の相続人)が単独相続(相続人が一人)である場合等、まとめて申請することも可能です。(中間省略登記といいます)
数次相続の手続きは煩雑なため長岡行政書士事務所へ相談を
数次相続・再転相続・代襲相続の発生要件をまとめると以下の通りになります。
- 数次相続:遺産分割協議が終わる前に次の相続が起きること
- 再転相続:熟慮期間が経過する前に次の相続が起きること
- 代襲相続:相続人が被相続人より先に死亡してること
相続登記や相続税申告など、各種相続手続には期限が決まっているので、たて続けに家族が亡くなって悲しみと混乱しているなかでも手続きを進めないといけません。
とくに数次相続のような複雑な相続手続を円滑に進めるには経験や専門性が求められます。
横浜市の長岡行政書士事務所は相続の経験が豊富にあり、相談者様に寄り添った相続をモットーとしております。数次相続の手続きも安心してお任せください。
少しでも不安や疑問を感じられた場合は、横浜市の長岡行政書士事務所へご相談ください。初回相談は無料で対応しています。