遺言がある場合の遺産分割協議はどうすればいい?手続き方法や注意点を行政書士が解説

遺言書がある場合でも遺産分割協議はできるのか? 手続きを行政書士が解説! 相続トラブル・事例
相続トラブル・事例

巷で言う「遺言書」。法律を学んでいない方でも、基本的には遺言書の記載通りに相続手続きを進める、つまり遺言書が法定相続に優先するというのはイメージが付くと思います。

では、遺言書がある場合でも遺産分割協議はできないものでしょうか?

この記事では、遺言書がある場合の遺産分割協議ができるかについて、「ドラクエ風」に例えながら解説します。

あらすじ・・・
現世から遠く遠く離れた、魔王が支配する異次元世界で、打倒魔王を掲げ旅をする勇者一行。

勇者を筆頭に、男気のある兄貴分的存在の戦士、知性を武器にパーティを支える僧侶、そしてひとりだけなぜか欲望にまみれた老魔法使い、最初は敵ながら勇者に憧れて加わったスライムという面々。

ところが、この勇者、なんと現世で行政書士をした男が、ひょんなことから転生してした姿だった…。

そんな勇者だけに、今日もモンスターを倒すより、異世界の住人からの相続相談のほうが忙しくなってしまうのだが…。

村人「勇者さん…夫の遺品を整理していたところ遺言書が見つかったのですが、困っていまして…相談に乗ってもらえませんか?」

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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遺言書の内容を優先して相続手続きを進めることが原則

村人の相談は、亡くなった父の遺言書に遺言執行者の指定があるが、必ず遺言書通りに相続をしなくてはいけないのか、他の方法をとってはいけないのかというものでした。

しかし原則として、遺言書がある場合は、遺言書の内容を優先して相続手続きを進めます。

遺言書は個人の最終意思として尊重されます。それは、私的自治の原則というのが民法で規定されているからです。

魔法使い「私的自治の原則?」

スライム「私的自治の原則とは、個人は他者からの干渉を受けることなく、自らの意思に基づいて自らの生活関係を形成することができ、国家も個人の意思で形成された生活関係を尊重し、保護しなければならないという原則です」

戦士「さすが行政書士を目指すだけあるな」

スライム「えへへ」

僧侶「要するに、遺言書に置き換えると、遺言者の意思を表明したものである遺言書がある場合、原則として遺言書が優先されるという理解でいいのかしら?」

戦士「ふむふむ、原則として遺言書が優先されるってわけか、勇者さん」

スライム「もちろん、その遺言書が有効である場合に限りますけどね」

遺言書があっても遺産分割協議ができるケース

遺言書があっても遺産分割協議ができるケースもあります。

僧侶「見て! 勇者さんの冒険の地図が光りはじめて、文字が浮かび上がってきたわ!」

《遺言書があるが、遺産分割協議できるケース》

  • 遺言書に一部の遺産についてのみ記載されている場合
  • 遺言によって遺産分割が禁止されておらず相続人・受遺者・遺言執行者の同意がある場合

遺言書に一部の遺産についてのみ記載されている場合

戦士「問題は、一部の遺産についてのみ記載されているってパターンか」

村人「亡くなった夫の遺言書には、こう書かれていたんです」

  • 妻に住むところを残してあげたい。だから土地・建物だけは指定する
  • 自身の会社の株券だけは後継の長男に指定する

僧侶「ということは、土地・建物と株券以外のところは指定されていないから、遺産分割協議が必要になるってことね」

現実的に考えると、その人の持っている財産を漏れなく全て遺言書に記載することは難しいものです。もし遺言書に一部の財産の記載のみあった場合、指定されていない財産については、遺産分割協議によって財産の分け方を決めなければなりません。

しかし遺言書に『その他の財産』や『その他一切の財産』というような文言があれば、「遺言書の中に遺産の全部が記載してあり、他に分割する財産がない」と見なされ、遺産分割協議は不要になります。

遺言によって遺産分割が禁止されておらず相続人・受遺者・遺言執行者の同意がある場合

僧侶「勇者さんが言うには、遺言書に全財産の記載がある場合遺言によって遺産分割が禁止されていないことのほかに、相続人や相続人以外の受遺者の全員が遺言の内容に納得しておらず、さらに遺言書とは異なる遺産分方法に全員が合意した場合、遺産分割協議による相続が認められるみたいね」

魔法使い「相続人以外の受遺者って? 例えば、わしの愛人である酒場のバニーちゃんとかか?」

戦士「じいさん、今日2回目のセリフでそれかよ…」

スライム「相続人以外の受遺者とは、相続人以外の第三者で、遺言者の財産を遺贈された人のことですよ。相続人の意思だけで一方的に受遺者の権利を奪うことは許されません。そのため、遺言の内容と異なる遺産分協議を行う場合には受遺者の同意も必要と考えられているんです」

僧侶「ここで気になるのが遺言執行者がいる場合ね」

遺言執行者とは、遺言者の死後に遺言書の内容を実現する手続きを行うために選任された人のこと。相続財産の管理その他の遺言の執行に必要な一切の行為をする権利や義務があり、その権限内でした行為は相続人に対して直接にその効力を生じることから、いわば遺言者と相続人の代理人と言えます。

スライム「相続人等全員が同意しているからといって、遺言執行者の権利や義務が免除されるわけじゃないですからね」

魔法使い「そうじゃ。遺言執行者にもメンツってもんがあるじゃろ」

僧侶「勇者さんが言うには、遺言執行者がいる際に遺言と異なる遺産分割協議を行う場合には、遺言執行者の同意も必要なんだって」

遺言執行者の同意がない場合の遺産分割協議はどうなる?

戦士「でもよ。相続人全員と受遺者は同意したけど、遺言執行者が同意しない場合はどうなるんだ?」

魔法使い「…戦闘で決着付けるしかないじゃろ。どれ、わしの得意な火炎魔法で…」

僧侶「ちょっとややこしくなるから黙ってて…」

戦士「ほほう。勇者さんが言うには、2つの相反する考え方があるらしいぞ」

  • 遺言執行者は、遺言の内容の実現に努めるべき。ゆえに遺言の内容の実現を妨げることがあれば、その妨げている事由を排除することも任務のひとつ。つまり、遺言と異なる遺産分割協議はできないという見解。
  • 遺言によって相続人や受遺者が取得した権利を、相続人全員と受遺者の合意によって変更するならば、それは故人の遺言を離れた相続人全員と受遺者の問題。したがって遺言と異なる内容でも、遺産分割できるという見解。

魔法使い「どっちも言い分はわかるのぅ…」

スライム「なんだかモヤモヤしますよね。だからこそ、遺言執行者の同意は取り付けておくに越したことはないということですね」

僧侶「そうね。相続する側にとっては一方の人が財産をもらうよりも、もう一方の人がもらうほうが有意義であったり、いろいろ事情があるものね」

遺言書があっても遺産分割協議することには意義がある

魔法使い「遺言書通りに相続することで揉め事になるならば、遺言書が存在しても遺産分割協議をする意義もあるってもんじゃの」

戦士「おお、じいさん、最期の最期にまともなこと言ったな」

魔法使い「おい、「最後」の漢字が違うぞ…」

スライム「いずれにせよ、複雑な問題になる前に、行政書士さんに相談するのが一番ですね」

遺言書がある場合でも、次の場合には遺産分割協議を開催できます。

  • 遺言書に一部の遺産についてのみ記載されている場合
  • 遺言によって遺産分割が禁止されておらず、相続人・受遺者・遺言執行者の同意がある場合

そして遺産分割協議をするとしたら、その内容をまとめた「遺産分割協議書」も必要となります。

もし「私が関わっている相続は、遺産分割協議できるのだろうか」と疑問に思っている方は、ぜひ横浜市の長岡行政書士事務所にご相談ください。相続手続きを全般的にお任せいただけますので、相続手続きのお困りごとを解消できます。

私たちの事務所で取り扱えない分野の手続は、提携している弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士、土地家屋調査士等をこちらの責任で手配いたしますので、ご安心ください。

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この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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