遺産相続にはいろんな書類を準備する必要があります。その中には相続関係を明らかにする「相続関係説明図」という書類があります。
何となくイメージできるかもしれませんが、「相続関係説明図」はどのように作り、どのように活用するのでしょうか。
今回は「相続関係説明図」の活用方法や作り方について、物語風に解説していきます。
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現世から遠く遠く離れた、魔王が支配する異次元世界で、打倒魔王を掲げ旅をする勇者一行。
勇者を筆頭に、男気のある兄貴分的存在の戦士、知性を武器にパーティを支える僧侶、そしてひとりだけなぜか欲望にまみれた老魔法使い、最初は敵ながら勇者に憧れて加わったスライムという面々。
ところが、この勇者、なんと現世で行政書士をして男が、ひょんなことから転生してした姿だった…。
そんな勇者だけに、今日もモンスターを倒すより、異世界の住人からの相続相談のほうが忙しくなってしまうのだが…。
スライム「あれ? 勇者さん見てください、あそこに誰か倒れています!」
戦士「ほんとだ。ありゃ、ホイミスライムじゃないか?」
スライム「ぼくの親戚です。どうしたんだろう?」
ホイミ「うーんうーん、ごめんね、スライム。ちょっと知恵熱が出て倒れちゃったよ」
僧侶「いったいどうしたの?」
ホイミ「実は、うちのパパが亡くなって相続をしているんだけど、相続関係説明図という書類を用意したほうがいいのか分かんなくて、考えていたら…」
スライム「ねえ、うちの勇者さんは行政書士だから、相談してみるといいよ」
相続関係説明図とは?
相続関係説明図とは、家系図に近い形で、相続人の関係について任意に記載できる書類です。
戦士「相続関係説明図は、被相続人と相続人との関係を一覧として作図した書類だな。でも公的な証明書じゃない。ここがポイントだな」
魔法使い「相続関係説明図は、ネット上に無料のテンプレートがあるそうじゃ。要するに、家系図を作る要領で、誰でも作れる書類というわけじゃな」
僧侶「なるほど、ということは相続関係説明図には、相続関係を含めて自由に記載できるのね!家族関係と言っても、離婚したり養子縁組をしたりと複雑なこともあるから、家系図に近い感じで書けるのはいいわね。」
相続関係説明図の活用シーン
ホイミ「でもさあ、相続関係説明図って、そもそもどうやって使うものなの?」
相続関係説明図は不動産の名義変更・預貯金の解約など相続手続きで活用できます。
提出が必須なわけではありませんが、相続関係説明図を添付することで、相続手続きで使った「戸籍謄本」を返却してもらえることがポイントです。
相続手続きでは相続人を確定させるために、戸籍謄本を用意しなければなりません。そして通常、相続手続きで使った戸籍謄本は返却されません。
しかし戸籍謄本の取得にも費用・手間がかかりますから、相続関係説明図を添付して戸籍謄本を返してもらい、それを使いまわすことができれば、相続手続きの負担を減らすことができるのです。
相続関係説明図の作り方
相続関係説明図の作り方は、それほど難しくありません。
相続関係説明図に記載する情報は次のとおりです。
亡くなられた方の情報 | 氏名 最後の住所 最後の本籍 出生日 死亡日 被相続人であること |
相続人全員の情報 | 氏名 現住所 出生日 相続人であること |
これらの情報を集めたら、法務局のホームページにある「法定相続情報一覧図」のテンプレートを利用して、「相続関係説明図」を作ることが可能なのです。
ただし相続人全員を把握するためには、次の戸籍謄本が必要となります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人の現在戸籍
戸籍謄本の収集・相続人調査が難しい場合には、行政書士に依頼することも可能です。
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相続関係説明図と法定相続情報一覧図の違い
ホイミ「さっき『法定相続情報一覧図』のテンプレートを使って『相続関係説明図』を作れる、って聞いたけど、何が違うの?」
法定相続情報一覧図と相続関係説明図は、どちらも相続人と被相続人の関係を示す書類です。でも混同されやすいので、どのように異なっているかを知っておきましょう。
僧侶「勇者さんが言うには、法定相続情報一覧図とは、故人と相続人との関係が分かりやすく作図された書類なんだって。法務局で登記官が証明書として交付してくれるから、いわば公的な書類と言えるわね。相続手続きで活躍することが多い書類だそうよ。相続関係説明図は自分で作るだけで、公的な書類ではない、ってことね。」
「法定相続情報一覧図」は、法務局にて登記官が証明書として交付してくれる公的な書類です。被相続人と相続人の関係を公的に説明してくれるため、戸籍謄本類に置き換えて使用できます。
一方、相続関係説明図は相続人が自身の相続手続きを整理する際や、相続手続きで戸籍謄本類を原本還付してほしいときに添付しておくなど特徴の違いがあります。
法定相続情報一覧図 | 相続関係説明図 | |
法務局による認証の有無 | あり | ない |
交付先 | 法務局 | 自分で作成できる |
相続手続きの際の戸籍謄本の有無 | 不要 | 必要 |
書き込める内容 | 制限あり | 無制限 |
求められる役割 | 戸籍謄本類の代わり | 戸籍謄本類の原本還付や相続登記における添付書類 |
法定相続情報一覧図と相続関係説明図のどちらを作る?
スライム「法定相続情報一覧図と相続関係説明図は似ているけど、中身の記載については違いがある。交付してくれる機関も法務局と自己作成で、全然違う。ねえ、勇者さん、実際の相続手続きで、この2つの書類はどちらの作成がおすすめなの?」
法定相続情報一覧図と相続関係説明図をどちらを作るべきかについては、次のように考えるといいでしょう。
- 戸籍謄本の提出先が多ければ法定相続情報一覧図
- 相続人の順位が変動等があれば相続関係説明図
戸籍謄本の提出先が多ければ法定相続情報一覧図
僧侶「勇者さんが言うには、まずは戸籍謄本類の提出先件数で決めるのがいいそうね」
ホイミ「提出先件数?」
戦士「相続手続きでは、被相続人が所有していた財産を引き継ぐときに、戸籍謄本類の提出が必要なんだってさ」
魔法使い「例えば、銀行などの金融機関口座の解約や、有価証券の解約手続き、不動産の相続登記とかじゃの。酒場のバニーちゃんへの婚姻届けには…必要ないか」
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僧侶「今回はおとなしいと思ったら、とうとう出たわねスケベジジイ」
魔法使い「このシリーズが真面目な話で終わったら、わしのファンが泣くじゃろがい」
僧侶「いくつかの銀行口座に預貯金があったら、1行ずつ解約していかなきゃいけないよね? そのときに、多くの戸籍謄本類を用意するか、1行ずつ手続きを進めて、原本還付してもらうかを検討する必要があるわけね」
ホイミ「1行ずつは大変だなあ…」
僧侶「だから法定相続情報一覧図があれば、一気に相続手続きを進めていけるってわけ」
公的な書類である「法定相続情報一覧図」は戸籍謄本類の代わりとなりますから、戸籍謄本の提出先が多い場合には、「法定相続情報一覧図」で手続きをどんどん進めたほうが手間が少ない、ということです。
相続人の順位が変動等があれば相続関係説明図
スライム「あと、勇者さんの話では、相続人の変更の有無で決めてもいいそうだよ」
ホイミ「どういうことだい?」
スライム「法定相続情報一覧図には、相続放棄や胎児の出生など、相続開始後に発生した「相続人の変更」に関する情報を記載できないんだって。でも、相続関係説明図には記載できる。こちらには、遺産分割に関する情報を書くこともできるみたいだから」
戦士「なるほど。戸籍謄本だけでは読み解けない相続人の変更が発生すると、相続関係説明図のほうがいいわけか」
スライム「あと、勇者さんの話では、法定相続情報一覧図が作れないケースもあるみたいだよ」
法定相続情報一覧図は、相続において便利な書類として近年多く使われるようになっていますが、一方で作れないケースもあります。
- 外国籍の相続人がいる
- 生前に作成はできない
- 相続放棄等で相続人の順位が変動した
僧侶「作れないケースとしては、まず外国籍の人ね。日本国内に暮らしていても戸籍謄本がないから、戸籍謄本をもとにする法定相続情報一覧図を作れないわけ」
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戦士「あと、あくまでも被相続人の死後に作る書類だから、生前に相続人を予想して作ることもできないわな。うちのパーティで一番最初にくたばるのは、魔法使いのじいさんだとすぐ予想がつくけど」
魔法使い「うるせえやい」
スライム「あと、相続放棄などで相続順位が変動する場合も使えない。相続順位が移動しても、移動した事実は戸籍謄本に記載できないから。ちなみに、この場合にどのように手続きをするかというかわかる?例えば、第一順位の子供が全員相続放棄して、その後第2順位の親が相続人となった場合とか」
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僧侶「もしかして、相続放棄時に取得する「相続放棄受理証明書」が関係ありそう」
スライム「そうそう、相続情報一覧図とその「相続放棄受理証明書」をセットで使用していくよ。そうすると仮に相続放棄したことが一覧図に記載されていなくても、受理証明書でわかるからね」
魔法使い「合わせ技一本というところかいな」
スライム「上手いのか上手くないのか」
このように法定相続情報一覧図が作れないケースでは、相続関係説明図を自分で作ることで、相続手続きの手間を少しだけ軽減できるかもしれませんね。
相続関係説明図の作成は行政書士に相談できる
公的な書類である「相続情報一覧図」は便利なものですが、作成できないケースもあることには注意しなければなりません。一方、「相続関係説明図」は任意に作成できるものですから、誰でも作成できます。
しかし誰でも作成できるといっても、「相続関係説明図」を作成するためには亡くなった方や相続人の戸籍謄本を集め、その情報から相続人の関係を法律に則ってはっきりさせなければなりません。そのため法律に詳しくない方にとっては負担となってしまうでしょう。
長岡行政書士事務所では相続関係説明図を作ってほしい、などのご要望にも対応していますので、お気軽にお尋ねください。その後の財産調査・遺産分割協議書の作成などにも対応しています。初回相談は無料ですので、ぜひご予約ください。
ホイミ「なるほどなあ。勇者さんや皆さんのおかげでだいぶわかってきましたよ。法定相続情報一覧図は使いやすく汎用性も高いけど、正しく作れないこともある。だから、相続関係を整理しておくためにも、相続関係説明図を作って、併用しておくのがいいかもね」
僧侶「さすがスライムちゃんの仲間ね。飲み込みが早いわ」
ホイミ「なんとお礼を言ったらいいか。そうだ、私にできるのは回復呪文ですから、みなさんの中でどこか悪いところを治してさしあげますよ」
戦士「だったら、魔法使いのじいさん、治してもらえよ」
魔法使い「そうじゃの。また最近腰が痛くなってきたから…」
戦士「いや、腰よりもっと悪いところがあるだろ?」
魔法使い「どこじゃ?」
戦士・僧侶・スライム「…性格」
魔法使い「どないやねん」