もしあなたが故人(被相続人)の財産を受け取りたくないと思ったら、相続放棄をすることができます。
預貯金や有価証券などプラスの財産も、被相続人が残した住宅ローンなどの債務といったマイナスの財産も、全部「受け取りません!」と言うことができるのです。
でもここでひと疑問が。相続放棄したあとに、故人の衣類・家財などを処分しなくてはいけないとき、相続放棄がどのように関わってくるのでしょうか?
相続放棄をしたら、故人の遺物にはもう一切手を付けられないのでしょうか?
そこで今回は相続放棄した後の遺品整理について、「クイズ形式」で楽しく学んでいきましょう。
本記事は、通常の法律の文章は難しいことから、楽しくわかりやすくお伝えするためにクイズ形式にしています。そのため、法律的な表現が少し変、厳密に言うとこうだ!等あるかと思いますが、そこは温かい心で読んでいただきつつ、ぜひご参考にして頂ければと思います。
相続放棄後の財産処分の判断基準
相続放棄をしたあとでも、様々な事情により被相続人の財産を処分することがあります。たとえば、食べ物やお菓子はそのままではやがて腐ってしまいます。
また、「大量に残っている衣服を捨てたほうがいいかな?」という場合や、「このコートは形見として取っておきたい」などと思うこともありますよね。
すべての財産が処分できないとなったら、それはそれで大変なことになります。このあたり、どのようになるのでしょうか?
ポイントは次の3つです。
- 金銭的価値のある財産は処分ができない
- 食べ物などは処分することが認められる
- 衣類の処分はケースバイケース
さあ今回も、司会の私と、解説として横浜市の行政書士長岡さんでお届けしいたします! 長岡さん、よろしくお願いします!
金銭的価値のある財産は処分ができない
では第1問、相続放棄したあと、スマートフォンは処分できる?できない?どちらでしょう!
被相続人の財産を相続放棄したあと、できなくなるのが「金銭的価値のある遺品」の処分です。
例えば預貯金や不動産、株券、さらには車やパソコン、スマートフォンといった金銭的価値があると判断されるものは処分できません。
ということで、答えは「できない」ですね。長岡さん、解説をお願いします!
長岡「はい、結論から言うと、金銭的価値があると判断されるものは処分できないんですね」
注意しないといけないのは債務の支払いです。実は知らずに支払っていると、法律上厄介なことになるかもしれません。先に知っておいて対策したいところですね。
ひとつ疑問なのですが、スマートフォンは、そもそも本体価格が高いですから、本体を売るのは相続放棄した後にやってはならない、ということはわかります。
でも通信料などの契約はどうなるんですか?
長岡「まず相続放棄を携帯電話の回線会社側に伝えたほうがいですね。相続人の財産から携帯料金を支払い続けると、単純承認とみなされることがあります。携帯会社側に相続放棄予定であることを伝えて、その後どうするのがいいかを相談するのがベストでしょう」
単純承認ってなんですか?
長岡「簡単に言うと、故人の相続財産を無条件で全部まるっと相続するということですね」
合わせて読みたい:遺産から葬儀費用を払うと相続放棄できない?法定単純承認とみなされる行為を行政書士が解説!
食べ物などは処分することが認められる
あと、例えば冷蔵庫の中身とか、そのままにしておくと腐っちゃうものもありますよね?こういうのは、相続放棄してから処分してもいいのですか?
長岡「その場合は、保存行為といって、処分することが認められるんです。保存行為の対象は、ほかにも建物の修繕対応とか、相続人自身の財産で被相続人の債務を弁済する行為などが挙げられますよ」
衣類の処分はケースバイケース
さて、意外と疑問に感じている方が多いのが、相続放棄してから故人の衣類を処分してもいいのか?ということです。
実は相続放棄後の衣類の処分は、ケースバイケースで判断しなければなりません。
遺産のなかには金銭的な価値のないものもあります。相続放棄していても、それらのものには関わることができる可能性があります。
では金銭的な価値がないものはどうでしょう? 例えば、故人と一緒に写っている家族旅行の写真とか。
長岡「その場合は、いわゆる形見分けをすることができます。金銭的価値は無くても家族の中では大切な意味を持つものは、相続放棄をしていても整理できるんです」
この前提をふまえると、財産的価値のない衣類なら、家族が遺品整理で処分したり持ち帰ったりしても問題ないでしょう。
しかし、たとえば着物、高価なブランド品、ヴィンテージの洋服など、衣類自体の価値が高額なものの扱いは、注意しなければなりません。
故人の衣類を処分する際は単純承認に注意
相続放棄で重要なポイントのひとつが「単純承認とみなされないようにする」こと。
もし単純承認とみなされてしまうと、相続放棄が認められなくなってしまいます。債務を被相続人の財産から弁済する行為は単純承認と見なされやすい行為です。
単純承認とみなされる行為は
どんな行為が単純承認に該当しやすいのでしょうか?
長岡「例えば、不動産の売却や譲渡、車や換価価値の高い家財の売却や処分、あとは被相続人の財産を隠すような行為ですね」
このような前提をふまえると、そのもの自体の価格が高い衣類の処分は、法定単純承認とみなされる可能性があるため、基本的には避けたほうがいいでしょう。
法定単純承認とみなされる具体的な金額・ブランドが決まっているわけではないので、少しでも不安に感じたら「処分しない」「持ち帰らない」ということが重要です。
単純承認とはならない行為は
なお、財産的価値のない衣類、たとえば特にブランドものというわけではないが、昔から着ている思い出の服などは、形見として持ち帰っても単純承認とならない可能性が高いです。
ただし必ず単純承認とならない、というわけではないので、迷ったら手を付けないことが重要です。
また、葬式や生命保険金など、被相続人との関わりで生じる支払いや財産であっても、遺産とは直接関係のない財産に対する行為は単純承認とはなりません。
長岡「可能性としては、葬祭費用を被相続人の財産から支払うことなどです。もちろん一般的な相場であることが前提ですが。あと、相続人が受取人名後となっている生命保険金の受取は、単純承認にはみなされないと考えることが出来ます」
合わせて読みたい:葬儀代は遺産分割の対象となる?相続における葬儀代の注意点を行政書士が徹底解説
相続放棄に関する疑問は専門家に相談!
相続放棄後の遺品整理は何かと難しい局面があるんですね。
長岡「もし相続放棄をするかどうかわからない段階ならば、単純承認にならないよう、衣類や家財などの遺品整理には手を付けず、先に法律の専門家に相談するのが一番ですね。債務調査中などの理由で相続放棄するかどうか決められない場合も同様です」
わかりました。長岡さん、今回もありがとうございました!
相続放棄に関する手続は、弁護士に相談する必要があります。しかしその前に、そもそも故人の財産がどのような状態なのか、借金のほうが多いのか、よく分かっていないという方もいるのではないでしょうか。
このような場合は、ぜひ横浜市の長岡行政書士事務所へご相談ください。相続財産調査をしたうえで、相続放棄の必要性がなければそのまま相続手続を代行いたしますし、相続放棄が必要なら信頼できる弁護士を紹介いたします。
初回相談は無料なので、お気軽にお問い合わせください。