平成29年に厚生労働省が行った終末期の意識調査があります。
それによると、回答者のうち6割超を超える方が、自分で意思決定できなくなった場合に備えて、自分の「死に際」について事前に指示を残しておくことに賛成していることがわかりました。尊厳死と呼ばれるものです。
でも、このような希望が実際に通るのでしょうか?
ここで重要になるのが「終末期の意思表示」です。そして「終末期の意思表示」には、いくつかの種類があります。
今回は終末期の意思表示の方法について、行政書士が法律的な観点からも紹介します。
難しい話になりすぎないよう、「赤ずきんちゃんの物語風」に解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
終末期における「尊厳死」とは
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むかしむかし、あるところに三匹のこぶたがいました。石の家、木の家、ワラの家をそれぞれ作って育った兄弟ぶたたち。
隣村に住む赤ずきんちゃんと漁師さんの協力もあり、自分たちを罠にはめようとしたオオカミを見事に撃退!
その後、行政書士の資格を取得した赤ずきんちゃんたちに、遺言のさまざまなことを教えてもらいながら、幸せに暮らしていました。
そんなある日のこと。赤ずきんちゃんがタブレットを見ながら深刻な顔をして考えこんでいるのを、母ぶたと兄弟ぶたたちが見つけました。
兄ぶた「あれ、赤ずきんちゃん。どうしたんだい?」
赤ずきん「みんな…。いえね、ちょっと考えごとをしていたの」
末っ子ぶた「考えごとって、今日の晩ごはんを何にしようかってこと? それとも明日の朝ごはん?」
弟ぶた「どうしてお前はごはんのことばっかりなんだ?」
赤ずきん「ちょっとこのタブレット見てくれる?」
兄ぶた「平成29年の厚生労働省による意識調査…尊厳死?」
赤ずきん「この調査によると、6割超の回答者が、もしも体が自由に動かなくなったりしたら、薬で眠るように亡くなりたいと考えているそうなの」
母ぶた「その気持ちはわからないでもないわね…」
弟ぶた「そうなのかい、母さん?」
母ぶた「あなたたちにいろんな迷惑をかけちゃうだろうし、何より人として自然に、無理なく旅立ちたいとは思うわ」
末っ子ぶた「オイラたちはぶただけどね」
赤ずきん「じゃ、今日は尊厳死について、みんなで考えてみようか」
尊厳死とは、生前のうちに延命治療に対する考えを書いておくことで、医療従事者もその希望に従った処置ができる可能性を残すというものです。
赤ずきん「治療をすることはできるけど、患者の意思として治療を始めたくないという思いがある場合、治療を行わずに自然な経過に任せて亡くなるのが尊厳死ね。元々の寿命をまっとうしてもらうという点では、安楽死とは違うわね」
尊厳死と安楽死の違い
兄ぶた「ひとつわからないのが、尊厳死と安楽死ってどう違うんだろう? そもそも亡くなる前にそんな意思表示ができるのかな?」
赤ずきん「例えば、病気や痛みでとても苦しんでしまう患者がいたとするでしょ。そのときに苦痛から救うために人工的に患者の寿命を短くするのが安楽死。安楽死は、人為的に寿命を短くさせる行為と考えられるわね。日本では安楽死は認められていないけど、安楽死を合法的に認めている国もあるのよ」
安楽死を認めている国はヨーロッパに多く、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、スペインなどが挙げられます。
なお、安楽死には複数の解釈があり、「積極的安楽死」は患者本人の意思により致死薬の注射を行うことで、「自殺ほう助」は医師が薬物の提供などを行い、それを患者が自分で実行することです。
自殺ほう助のみを認める国としては、スイスやアメリカ(一部の州に限る)が挙げられます。
終末期の意思表示の重要性
末っ子ぶた「尊厳死すべきかどうかは、お医者さんが判断するのかな?」
赤ずきん「大前提として、医療従事者は自分の判断で患者の延命治療を止めたりすることはできないのよ」
弟ぶた「なんかドラマでそういうの、あったね」
赤ずきん「明らかに、もう助かる見込みがないとするよね。患者も苦しんでる。家族も延命ではなく自然な死を迎えてほしいと思ってる。でも、患者本人の意思表示がない場合は、治療を継続しないといけないの。」
だからこそ、生前、延命治療に対する考えを書いておけば医療従事者も『そういう希望があるんだな』と、希望に沿った処置ができる可能性があるのよ。」
末っ子ぶた「可能性がある…というのは?」
赤ずきん「尊厳死については、日本の法律では明確に規定されていないの。いわば、法律上はグレーゾーンってことなのね」
兄ぶた「法律で定められていないとなると、判断がムズかしいよね」
赤ずきん「そこは厚生労働省が発表している終末期医療に関するガイドラインなどを基準に考えるしかないわね。誰しもがその人の身体生命に関することは決められないのよ。決められるのはまさに本人しかいないわ。本人が自己決定権を持って終末期をどのようにするかを決めることはとても重要なことなの」
兄ぶた「いずれにせよ、まだ自分の意思を伝えられるうちに、準備を進めておくことで自分の意思に沿った尊厳死を迎えやすくなるというわけか」
末っ子ぶた「ねえ、母さんはどっちがいいの?」
母ぶた「そうねえ…どっちというより、そもそもまだ亡くなりたくはないわね…」
尊厳死を希望するときの方法
自分で尊厳死の意思表示をするとき、何か決められた書式などはあるのでしょうか?
実は、特定の書式はないのですが、きちんとした書面や形式を整えたほうが、医療従事者や関係者がその意思を信用しやすくなります。
これらの背景を鑑みると、尊厳死を希望するときの方法としては次の2つが挙げられます。
- 書面による意思表示
- 尊厳死公正証書
書面による意思表示
末っ子ぶた「尊厳死を書面によって意思表示するって、紙に書いて希望するんでしょ?だったら、メモ帳とか紙ナプキンみたいなものでも、尊厳死の書面による意思表示として認められるのかな?」
赤ずきん「ダメってことはないわよ。でも、メモ帳とか紙ナプキンに人生最後の意思を書いても、医療従事者が見て『このとおりにしてあげよう』と思うかしら?」
弟ぶた「ボクがお医者さんなら、さすがに思わないね」
赤ずきん「書類の重みというか、『これだけきちんと書いてるなら、その意思を信頼できるな』と思える作り方はやっぱり必要よね」
尊厳死公正証書
弟ぶた「じゃあさ、どうしたら安心して書類の重みってのを持たせられるんだろう?」
赤ずきん「尊厳死宣言公正証書がいいんじゃないかしら」
兄ぶた「公正…なるほどね」
赤ずきん「ピンときた?そう、社会的に信用の高い公証人に書いてもらう公正証書だと重みを付けやすいのよ」
合わせて読みたい:公正証書遺言の公証人とは?スムーズに公正証書遺言を作る方法を行政書士が解説
兄ぶた「お金の貸し借りとかで、公正証書を使えば、裁判をしなくても判決文と同じ効果があるほどだもんね」
赤ずきん「さすが、良く知ってるわね! 公正証書で尊厳死の意思を書いておく…つまり尊厳死宣言公正証書をまとめておくのはお勧めの方法よ」
弟ぶた「それって、どうやって作ればいいんだい?」
赤ずきん「尊厳死を希望する原案を作成して、最寄りの公証役場に予約を入れるの。その後、公証人と打ち合わせして、自身の原案の意図をくみ取った文案を公証人に作成してもらうのよ」
尊厳死宣言公正証書の作成については、行政書士へ相談することも可能です。
もし手続きに不安なことがある場合は、横浜市の長岡行政書士事務所へお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。
遺言書は尊厳死の希望には向かない
末っ子ぶた「でもさ、ふと思ったんだけど、尊厳死の希望って、遺言書に書いておくんじゃダメなのかい?」
兄ぶた「何言ってんだい。遺言書は、なくなってから初めて効力があるんだよ。亡くなる前のことを書いても意味ないじゃないか」
末っ子ぶた「あ、そっか」
赤ずきん「そうね。ほかにも遺言書には適さない理由があるの。遺言には主に遺産の分割といった法で定められた内容(=法定遺言事項)しか書けないのね。つまり、延命治療の拒否は法定遺言事項じゃないから、効力がないってわけ」
合わせて読みたい:法定遺言事項とは?遺言書に書いて効力が発生する内容を行政書士が解説!
終末期の意思表示に困ったら行政書士に相談ください
誰しもが迎える「死」とそこにかかる「終末期」の問題。人が生きている以上は切り離せない問題です。
「もし」あの時こうしていればと後悔の無いように、ぜひお元気な今のうちから考えていただければと思います。
末っ子ぶた「尊厳死宣言公正証書の原案かあ…オイラみたいに作文が苦手だと困っちゃうね」
赤ずきん「ひとりで原案を考えるのは大変だし、公証人とのやりとりも自分だけだと不安だよね。そういう場合こそ、行政書士のような法律の専門家に相談するのがいいのよ」
兄ぶた「なんだ、それなら赤ずきんに相談するのが一番だね!」
末っ子ぶた「そうだね! 母さん、さっそく相談したらどうだい?」
母ぶた「いや…あのね…私はまだ…」
この記事を詳しく読みたい方はこちら:尊厳死宣言公正証書とは?終末期の意思表示について行政書士が解説!
終末期や尊厳死公正証書が気になる方は、横浜市の長岡行政書士事務所までお気軽にご相談ください。初回相談は無料で対応しています。