亡くなられたご家族に謝金などのマイナスの財産があるとき、相続において困ってしまいますよね。
マイナス財産の相続を避けたい場合は、相続放棄や、遺産分割協議上で放棄するという手段があります。今回は似て非なるこの2つの違いを見ていきましょう。
なお、難しい法律の話を分かりやすくお伝えするために、今回は「報道ニュース風」にお伝えいたします。
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皆様、こんばんは。社会の構図をわかりやすくお届けするニュース番組「報道小路」のお時間です。アナウンサーの西園寺遺子です。
この西園寺がさまざまな現場を徹底的に取材しており、この合成皮の手帳、通称、白革の手帳にまとめておりますのでご期待ください。
本日の特集は遺産相続時によく勘違いされる「相続放棄と遺産分割協議書上の放棄はどう違うのか?」です。
「マイナスの相続をしないために、相続放棄と遺産分割協議の放棄のどちらを採るべき?」というようなご相談は当番組にも多く寄せられますので、興味深いですね。
本日はコメンテーターとして、シンガーソングライターの逢紀真代さんにお越しいただいております。
では、早速まいりましょう。いつものセリフでスタートです。
「私、調べましたけど!」
相続放棄と遺産分割協議書上の放棄との違い
相続放棄とは、被相続人が所有していた財産について、プラス・マイナス問わず、すべてを放棄することです。一方、遺産分割協議上の放棄とは、遺産分割協議の中で、「私は被相続人の財産を相続しない」と宣言することです。
2つの放棄の法律上の違い
遺子「では真代さん、よろしくお願いいたします。早速ですが、この2つの違い、ご存じでしたか?」
逢紀「いやあ、全然知らなかったです。さだまさしさんの『関白宣言』なら知っていましたけど…」
遺子「まずは相続放棄ですが、これは一切合切を放棄するということですから、相続財産が債務超過のケースなどでよく行われているんですよ」
逢紀「はあ」
遺子「一方で、遺産分割協議上の放棄は、遺産分割協議で揉めず、被相続人の相続財産を受け取らないことを他の相続人も同意すれば放棄できるということになるんです」
逢紀「揉めない…『けんかをやめて~、2人をとめて~』という歌を思い出しました」
遺子「たぶん40代以下の方はほぼわからないですね、それ」
逢紀「…」
遺子「この2つの実質的な違いは、3つありますので、チェックしておきましょう。こちらのフリップをご覧ください」
裁判所の介入|違い①
- 相続放棄⇒相続財産の放棄を裁判所に認めてもらうための手続き
- 遺産分割協議上の放棄⇒相続人間で話し合って成立を目指すもの(裁判所は介入しない)
債務の放棄の可否|違い②
- 相続放棄⇒債務の放棄が可能
- 遺産分割協議上の放棄⇒債権者は相続放棄をしていない相続人に返済を請求可能
期限の有無|違い③
- 相続放棄⇒原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所に対して申述する必要がある
- 遺産分割協議上の放棄⇒相続税などの納付期限には配慮が必要だが、法的な期限はない
借金がある場合は要注意
遺子「注意していただきたいのは②でして、たとえば、親が遺した住宅ローンを、子がどうするかという問題はよく聞かれますよね」
逢紀「親が住宅ローンを返済できないうちに他界するわけですね」
遺子「このとき、相続放棄をすれば支払う義務は無くなります。一方の遺産分割協議はあくまでも相続人間の話し合いですから、「私は財産はいらない」と宣言しても「いや、そんなの困りますよ」と、債権者は相続放棄をしていない相続人に返済を請求できるんです」
逢紀「ということは、相続放棄のほうが効力は強いということなんですね。そうしたらみんな相続放棄を選んだ方が話は早いじゃないですか」
遺子「そう思えますよね。ところが、実は必ずしもそうだとは言い切れないのです」
遺産を放棄するならどちらの手続きがベスト?
「遺産を放棄したい」と感じたとき、相続放棄と遺産分割協議上の放棄のどちらを選ぶべきなのか? それぞれ、おすすめのケースを見ていきましょう。
相続放棄をした方がベスト
遺子「まず相続放棄をおすすめしたいのは、こちらに当てはまるケースです」
- 高額の借金引き継がされそう…返済なんてムリ!
- 亡くなった人と生前から付き合いが無いので、財産をもらってもどう管理したらいいか…
- 家族の仲が悪いから、遺産分割協議で顔を合わすなんて冗談じゃない!一切関わりたくない!
遺子「相続放棄ができれば、そもそも相続人ではなかったことになります。つまり、遺産分割協議に参加する必要もないんですね。また、借金も含めて、全部を放棄すいるため、債権者から督促状が届いても、「いいえ、相続放棄が完了していますからお支払いの義務はありません」と、督促を受けなくて済むようになります」
(※)相続放棄の完了後、裁判所に依頼すると、相続放棄受理証明書の発行を受けられる(手数料150円)
逢紀「まあ、そうですよね」
遺産分割協議上の放棄がベスト
遺子「遺産分割協議上の放棄がおすすめされるケースは、こちらですね」
- 別に債務とかはないけど、相続したい財産も特にないんだよね
- 事業継承で特定の相続人に相続財産を集中させたい
- そもそも債務も含めて円滑に遺産分割協議がまとまるし
逢紀「遺産分割協議上の放棄は、債務の負荷がなかったり、あっても相続人皆で平和に話し合える場合に向いているわけですね」
遺子「そうですね。あとは債務があっても家族が暮らす住まいを守りたいときなどに、こちらを選ぶケースがあるようです」
逢紀「わかりやすい…でも私、今日、ほとんどまともにコメントしてない…」
遺子「でも、遺産分割協議上の放棄には思わぬ落とし穴があるので気を付けていただきたいんですね。では逢紀さん、ご一緒に?」
逢紀「きた、あのフレーズだ!」
遺子「私、調べましたけど!!!」
相続放棄と遺産分割協議上の放棄のデメリット
遺産分割協議上の放棄を選ぶときには、そのデメリットも知っておかないと、あとで「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。今後の生活に大きく影響しないよう、特に注意したい2つのデメリットを把握しておきましょう。
借金が消えてなくなるわけではない|デメリット1
- 遺産分割協議上の放棄では、被相続人の借金を放棄したことにはならない
- 「相続人を代表してAさんが支払います」と結論づけても、Aさんが債務の返済に行き詰まったら、請求は別の人に及ぶ
- このとき請求が及ぶのは相続放棄をしていない相続人
後順位への相続ができない|デメリット2
- 相続人という立場を放棄したことにはならないので、後順位の相続人は相続はできない
- 後順位の方に相続させたい場合には相続放棄をしたほうがよい
逢紀「なるほど。やっぱり相続放棄のほうが無難なのかな」
相続放棄のデメリット
遺子「もっとも相続放棄にもトラブルリスクはあります。たとえばこのようなケースですね」
- 父・母・子1名で暮らしていたところ、父が他界した
- 「父の財産を母に集中させたい」と子が相続放棄した
- まだ存命だったため祖父母も相続人となり、結果相続人が増えてしまった
遺産相続で不安があれば行政書士に相談
逢紀「あらら」
遺子「祖父母だけでなく、父に兄弟姉妹がいたりすると、相続人になってしまいますので、遺産分割協議がややこしくいなる場合もあるんですね」
逢紀「もうこうなったら私たち素人にはお手上げだ! ここで一曲、『お手上げサンバ』聴いてくださ…」
遺子「あ、歌は結構です。皆さん、お困りならば、まずは行政書士などの専門家にお尋ねいただく方がいいですね」
逢紀「…結局、今日私は何をしに来たんだろう…?」
この記事を詳しく読みたい方はこちら:相続放棄と遺産分割協議書上の放棄は違う!よくある勘違いを行政書士が解説