相続する財産には財産的に価値がある「プラスの財産」と、借金や損害賠償など負債として残る「マイナスの財産」があります。
そして「マイナスの財産」を相続したくない場合は、相続放棄によって拒否することができます。
また、もし「マイナスの財産」を相続しても、債務控除としてマイナスの財産分は控除されるなど、相続人の負荷を軽くする措置はあります。ここまでは知っている方が多いのではないでしょうか。
しかし、亡くなった親のために子が立て替えた諸々の費用、たとえば親の生活費を立て替えていたような場合、その負担額は相続においてどのように扱われるのでしょうか?
今回はこの相続人における生前の立て替え問題を「ゴルフレッスン風」に解説いたします!(※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありませんが、相談内容は現行法に基づいています。)
立替金はマイナスの遺産
立替金はマイナスの遺産です。
そもそも立替金とは「本来本人が支払うべき費用を、代わりに誰かが支払っている時のお金」だといえます。
つまり、親のが支払うべき費用を、子が立て替えて支払っていたとしたら、親は子に対してお金を支払う(返す)義務が生じます。つまり債務ですから、立替金はマイナスの遺産だということです。
それでは物語に沿って、具体例を見ていきましょう。
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ここは、神奈川県横浜市にあるゴルフコース「ナガオカ港南カントリー」。
近年のブームからか、老若男女さまざまなゴルファーが、爽やかな風の中、プレーを楽しんでいます。
実はこのコース、他にはない一つの特徴で知られているのです。
それは、名物キャディ、白珠翔子さんがいること。
この白珠さん、元女子プロとして腕を鳴らした後、行政書士となり、今では行政書士事務所を切り盛りしながら、たまに気晴らしを兼ねてレッスンプロとしてコースにでることがあるのです。
ゴルフをしながら行政書士への相談ができるとあって、「ゴルフもうまくなるし、仕事や家庭の悩みもなくなって、一石二鳥だ」と経営者を中心に大人気。
さて、今日もお悩みを抱えたゴルファーが白珠さんのもとを訪れてきましたよ。
白珠「おはようございます、半加社長。今日は苦手なバンカーに入らないよう、フェアウェイど真ん中を狙い続けたいですね!」
半加「そうだねえ、相続の方でバンカーにハマりそうだから、せめてゴルフくらいはスッキリいきたいもんだよね」
白珠「おや、何かお悩みのようですね」
半加「ああ、実は亡くなった親の家のローンと入院費用を立て替えてたんだけど、立て替えたお金は、親の債務になるのかどうか、調べてもなんだか複雑で困ってんだよ」
白珠「わかりました。では、ゴルフも相続もナイスショットしていきましょ!」
立替金がマイナスの相続財産になる条件
半加「たしか立替金がマイナスの財産として承継されるのなら、その分の金額だけ相続税が控除されるんだろ?それなら家族全体として見れば、立替金も悪くないのかもな」
白珠「そうですね。しかし細かく言うと、立替金が相続財産と認められるためには、いくつかの条件をクリアしなくてはいけないんですけどね」
立て替えたお金が相続財産になる条件は以下の3つです。
- 立替の事実を証明する
- 立替えた人が分かるようにする
- 立替が扶養義務に該当しないこと
(上記以外にも、状況により条件が増える可能性もあります)
半加「なるほど、けっこう細かいんだな。こうした要件があるのは、やっぱり立替金が、その後の問題になりやすいからかい?
白珠「さすが社長、リスクへの意識はお高いですね!そうなんです。それぞれの条件について見ていきましょう。」
立替の事実を証明する
親に関する費用を支払った際に領収書を受け取るなどして、客観的にお金を立て替えたという事実を証明する必要があります。
立替えた人がわかるようにする
費用を支払い、領収書を受け取った際に、宛先として立替えた人の名前が記されているなど、支払者を明確に証明する必要があります。
立替が扶養義務に該当しないこと
亡くなった親に経済力がなく、経済力のある子が入院費用を支払っていたのなら、この扶養義務に該当する可能性があります。
もし扶養義務に該当するなら、立替金として相続時にマイナスの財産に加えることができません。
親の生活費を負担(立替)したら相続時に立替金となる?
半加「もし親の生活費を負担していたら、相続時に立替金として扱うことができるのかな?」
親が高齢になり、収入が減り、子が親の分の生活費(家賃や食費など)を支払うケースも珍しくはありません。
これは先述した「扶養義務」に該当するように見えますが、遺された財産が結果的にプラスであるならば、扶養義務には該当しません。
つまり親の生活費を負担(立替)していたら、その分だけ相続税の算定額が減る可能性もあるのです。
ただし個別具体的なケースについては、やはり相続税に詳しい税理士に相談して判断すべきです。横浜市の長岡行政書士事務所は税理士事務所とも提携しておりますので、個別事例のご相談については税理士をご紹介いたします。お気軽にご相談ください。
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立替金が問題になりやすいケース
マイナス財産承継時の要件が細かく決まっているのは、立替金により問題が起きるケースがありうるためです。いくつかの具体例を見ていきましょう。
- ローンや借金の立替
- 葬式の費用の立替
- 専門家の費用の立替
半加「白珠さんのおかげでだいぶ分かってきたけど、何が遺産なのか、そしてそれはどういう種類の遺産なのかを的確に把握するのは難儀なことだな」
ローンや借金の立替
親が亡くなりそうなので、親のローンや借金を子が自分のお金で清算することもあるでしょう。
子供への借金もマイナスの財産としてカウントされますので、相続税がかかる金額から控除されます。
葬式の費用の立替
葬儀費用を喪主である子が立替えて支払うことも多いです。
葬儀費用は厳密には相続財産ではありませんが、相続開始後発生する必要なお金であるため、葬儀費用は立替えた分、相続税の算定額からは控除されます。
専門家の費用の立替
遺産分割協議書の作成や遺言執行を行政書士に依頼し、相続税の税務申告を税理士に頼んだとしたらどうでしょう。
これは葬儀費用と違い、故人が遺したマイナスの財産と評価はされにくいです。死後に発生した任意の費用として、相続人や関係者が支払う費用とされています。
相続財産となる立替金の範囲に困ったら行政書士へご相談ください
白珠「さて、社長、ここから一気にグリーンを狙いましょう。2オンできれば、バーディトライですよ!」
半加「ようし…ここは秘伝の、チャー・シュー・丼!」
白珠「ナイスショット! …あっ!」
半加「ああっ、グリーン手前のバンカーに…!」
白珠「社長、でもちゃんとバンカー対策なさってきたじゃないですか! 相続もバンカーショットも、大事なのは対策です!」
半加「相続も?」
白珠「はい、専門家に相談をすれば、どのような立替金なら相続財産となり、そのためどのようなことになるのかがわかるので、ぜひしっかり専門家を味方につけてください!」
白珠「社長ならできます! しっかりボールをすくって…せーの!」
半加「おおおし、いった! しかもピンそば!」
白珠「社長、ゴルフも相続も最高の寄せができましたね!」
横浜市の長岡行政書士事務所は、相続手続きを全般的にサポートしています。相続税に詳しい税理士事務所とも提携しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。