「父の相続が始まったけど、遺産がどの程度あるのかどうやって調べるの?」
「遺産分割協議のために、家族が遺してくれた財産を調べたい。」
「相続が始まると遺産の調査が必要と知った。誰に相談できる?」
相続が開始されると、被相続人が遺してくれた「遺産(相続財産)」について、種類や額を特定していく必要があります。
これが「相続財産調査」です。
しかしいきなり「相続財産を調べる」といっても、どのように調査したらいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。また、無用なトラブルを避けるために、財産調査の注意点も知っておきたいところです。
そこで、この記事では遺産(相続財産)の探し方や注意点について、日ごろ相続手続きをサポートしている横浜市の長岡行政書士事務所の立場から解説します。
相続財産調査に困った時の対処方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
相続財産調査の目的
家族が亡くなり、相続が開始されたら残してくれた遺産の種類や額を特定する「財産調査」を行う必要があります。
ではそもそも、なぜ遺産の調査を行う必要があるのでしょうか。主な理由は次の3つです。
- 遺産分割協議のため
- 相続税や相続登記漏れを防ぐため
- 相続放棄など検討するため
スムーズに相続手続きを進めるために、まずは相続財産調査の目的について知っておきましょう。
遺産分割協議のため
相続をする際には、遺言書が無い場合には相続人間で「遺産分割協議」を行う必要があります。遺産分割協議とは、相続人がどの種類の財産を、いくらもらうのか決めるものです。
合わせて読みたい:遺産分割協議とは~知っておきたいポイントと注意点を解説
未把握の財産があると、その財産について分割方法を協議できず、管理する方がいないまま放置されてしまいます。
財産を正しく、円満に承継していくためには、不動産や預貯金などの財産はもちろん、借金などマイナスの財産まで把握する必要があります。
相続税や相続登記漏れを防ぐため
被相続人が遺してくれた財産を適切に把握しなければ、相続税を期限内に納付できなかったり、不動産の相続登記漏れが起きてしまうおそれがあります。
期限内に行うべき手続きがもれないようにするためにも、遺産の把握は必要です。
相続放棄など検討するため
遺産には借金のようなマイナスの財産も含みます。
そしてマイナスの財産は、相続放棄をすることが可能です。
しかし、相続放棄は「自己のために相続があったことを知った時」から3か月以内に行う必要があります。
手続きが遅れると相続放棄ができなくなるおそれがあるため、借金も含めた遺産の調査が欠かせません。
合わせて読みたい:相続放棄とは?遺産相続で負債がある場合の対処法を行政書士が解説!
相続における財産とは
相続財産と聞くと、現金や株式、不動産のような資産を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし記事冒頭でも触れていますが、相続における財産は次の2種類に分けられます。
- プラスの財産
- マイナスの財産
漏れなく「相続財産」を把握するために、財産の種類についても知っておきましょう。
プラスの財産
プラスの財産としては、次のような例が挙げられます。
- 現金・預貯金
- 不動産・借地権
- 骨とう品・貴金属類
- ゴルフ会員権
- 株式・投資信託
- 著作権
一般的に資産だとみなされるものは「プラスの財産」に該当すると覚えておきましょう
マイナスの財産
マイナスの財産は「債務・義務」などが挙げられます。代表例は次のとおりです。
- 借金(消費者金融などからの借入など)
- 住宅ローン・自動車ローン
- クレジットカードで未払いとなっているもの
- 買掛金
- 未払医療費・未払家賃
- 滞納税
- 保証債務
これらマイナスの財産はよくある例なので、意識的に探す必要があります。
相続財産に含まれないもの
被相続人が亡くなったあと、遺族が受け取る金銭でも、相続財産とはされないものもあります。相続財産に含まれない金銭の代表例は次のとおりです。
- 生命保険金
- 死亡退職金
- 遺産から発生する収益
- 祭祀財産、葬式費用、香典
また、生活保護・老齢年金の受給権など「一身専属権」に該当するものも、相続財産には含まれません。死亡後に振り込まれてしまった場合には、返還する義務があります。
遺産の調査方法
遺産の調査はどのように行えば良いのでしょうか。まず、調査に使える主な資料を紹介します。
財産名 | 調査方法に使える資料 |
預貯金 | 通帳やカード、取引のありそうな金融機関への問い合わせ、金融機関からの郵便物など |
不動産 | 固定資産税の納税通知書、登記済権利書、名寄帳など |
有価証券 | 取引のありそうな証券会社への取り合わせ、ほふり(証券保管振替機構)など |
保険 | 保険証券など |
その他 | 宝石や絵画などの鑑定書など |
マイナスの財産 | 信用情報機関など |
預貯金の調査方法
財産にはさまざまな種類がありますが、調査に使える資料を基に、調べていくことが可能です。
たとえば、よくある預貯金については給与や公的料金の引き落としのために、口座を開設していることが多いため、心当たりがある金融機関がある場合は、しっかりと調査を行うことが大切です。
不動産の調査方法
また、不動産のように、納税があるものは固定資産税の納税通知書や名寄帳を活用することで被相続人が所有していた不動産の特定が可能です。
有価証券(株式)の調査方法
被相続人の有価証券(株式)取引有無が分からないようなケースでは、「ほふり」を活用します。
ほふりとは「証券保管振替機構」のことです。
被相続人に関する取引の開示請求を行うと、取引があった証券会社などの取引が開示されます。
株式を調査する際に利用する保管証券振替機構について書いてある、こちらの記事もご一読ください。 株式の調査方法とは|相続手続きを行政書士が解説!
マイナスの財産の調査方法
借金についても、あわせて調査を進めましょう。借金は「信用情報機関」を使って情報開示請求を行うことが一般的な方法です。
請求方法は下記リンクからご確認ください。
■信用情報機関
・CIC
郵送、窓口もしくはWEBで申請。10日程度で開示される。
・JICC
郵送、窓口もしくはWEBで申請。10日間程度で開示される。CICとデータが重複する場合もある。
・KSC
郵送のみ。10日間程度で開示される。主に銀行・信用金庫などの情報が開示される。
■保証債務や個人からの借入にも注目を
保証債務や個人(友人や親族など)からの借入も、遺産に含みます。心当たりがある場合には、借用書などを必ず確認しましょう。
また、相続の開始を知った借入先から、督促状が送られることも多いでしょう。この督促状に従って相続人が返済すると、単純承認(相続したとみなすこと)したことになってしまいます。
単純承認すると、相続放棄できなくなってしまいます。
相続放棄を検討する場合には、単純承認を避けるために、すぐに返済しないように注意しましょう。
遺産調査を急いで行うべき3つの理由
プラスの財産やマイナスの財産など、調査するべき財産項目が多く、面倒くさいと感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし次のような観点から、遺産の調査は急いで行う必要があります。
- 期限がある相続手続きがある
- 単純承認となる可能性がある
- 財産が放置されるおそれがある
遺産調査を急いで行うべき理由について詳しく見ていきましょう。
期限がある相続手続きがある
相続手続きの中には、適正に遺産総額を確定させなければ進まない手続きがあります。代表例は次のとおりです。
- 相続放棄
- 相続税申告
- 相続登記
①相続放棄
借金が多い場合などで行う手続き。「自己のための相続を知った日から3か月以内」に行う必要があります。
「借金は相続したくない」とお考えの場合には、すぐに遺産調査を完了させ、相続放棄をするべきか早急に検討する必要があるでしょう。
②相続税の納付
相続税の納付は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」です。
③相続登記
相続登記は令和6年4月1日より義務化されます。「所有権の取得を知った日から3年以内」に申請が必要です。
単純承認となる可能性がある
遺産の調査を行わず、被相続人の預貯金を使ってしまったり、不要なものを処分したりすると、「単純承認をした」とみなされる可能性があります。
財産を使った後に、つまり単純承認をした後に借金の存在が分かっても、相続放棄ができなくなるおそれがあるため注意しなければなりません。
意図せず借金を相続しないためにも、遺産の調査は欠かせません。
財産が放置されるおそれ
被相続人の財産をきちんと調べなければ、大切な財産が眠ったままになってしまうおそれがあります。埋没してしまったら、大切な財産を相続人の名義にすることができないまま、放置されてしまいます。
その間に相続人が亡くなってしまうと、次に発生する相続の手続きがややこしくなってしまうおそれもあるため、必ず遺産の調査は終えておくようにしましょう。
相続財産調査の注意点
遺産の調査は相続放棄などの手続きを見据えると、被相続人の死後すぐからスタートする必要があります。
しかし、遺されたご家族は遺品整理などの手続きも多く、遺産の調査については重い負担となるおそれがあります。
では、遺産の調査に悩んだらどうするべきでしょうか。
相続財産調査の注意点としては、次の2つを意識してみてください。
- 相続人と協議しながら進める
- 困ったら行政書士などの専門家に相談する
それぞれ詳しく解説します。
相続人と協議しながら進める
相続人が複数いる場合は、手分けをして調査を進めることがおすすめです。被相続人と同居していた家族がいる場合、通帳や証券などの保管先が分かることも多いでしょう。
また、高齢者の相続人よりも、若い相続人のほうが、アプリやパソコンを使いなれているため、ネットバンキングや証券取引の特定がスムーズでしょう。
相続人と協議をしながら相続財産を進めると、特定の相続人の着服・使い込みが疑われにくくなる、というメリットもあります。
困ったら行政書士などの専門家に相談する
遺産の調査に悩んだら、まずは専門家に相談をすることもおすすめです。
相談先には以下の候補が挙げられます。ただし、相談先によってメリット・デメリットが異なっているためご注意ください。
相談先候補 | メリット | デメリット |
各市区町村の無料法律相談 | 無料、予約制で気軽に相談できる。 | 相談回数に制限があることが多く、一般的なアドバイスに留まる。 |
士業(弁護士・司法書士・税理士・行政書士) | 専門的なアドバイスが受けられ、そのまま業務を依頼できる | 実際に業務を依頼する場合は費用がかかる。 |
法テラス | 無料、同一案件3回まで利用できる | 相談するためには資力要件をクリアしている必要がある。 |
遺産調査(相続財産調査)は行政書士に相談できる
今回は相続時に悩む方が多い、遺産の調査について詳しく解説しました。遺産の調査は被相続人が遺した通帳や納税に関する通知書などを手掛かりに進めることができます。
しかし、財産の数が多いケースや、被相続人が遠隔地だった方の場合には、どこにいくら遺産があるのか判断が難しい場合もあります。
遺産調査(相続財産調査)は行政書士へ依頼することも可能です。横浜市を拠点とする長岡行政書士事務所でも、これまで多くの相続財産調査を行ってきました。
初回相談は無料で対応しているため、相続財産調査にお困りの方はお気軽に長岡行政書士事務所にご相談ください。電話・LINE・メールのすべてに対応しています。