「父が亡くなり、相続手続きを進めている。預貯金口座をいくつか持っていたようだけど、どのように調べるの?」
「亡くなった家族の相続財産を調べているけど、知らない預貯金があったらどうしよう」
「預貯金口座の相続財産調査の手続き方法や注意点を知りたい」
ご家族が亡くなられ、相続財産の調査を始める場合、被相続人が有していた財産を特定する必要があります。相続財産にはさまざまな種類がありますが、給与の受取や貯蓄のための定期性預金、公共料金の支払いなどに使う「預貯金口座」は代表的な相続財産の1つです。
そこでこの記事では、相続手続きに欠かせない預貯金の調査方法について、詳細を行政書士が解決します。
相続財産の調査が始まったら|何から始めるべき?
家族が亡くなられ、相続財産の調査を始める際には一体何から始めれば良いでしょうか。この章では相続時に必要な「相続財産の調査」について、詳細をわかりやすく解説します。
プラス・マイナスの財産を特定する
相続では、亡くなられた家族(被相続人)の財産を承継するために、遺された財産がどのような種類で、いくらあるのか調べましょう。相続財産には以下のものが含まれます。
①プラスの財産
相続財産にはプラスの財産が含まれます。現金・預貯金・不動産や、有価証券などです。
②マイナスの財産
相続はマイナスの財産も承継します。具体的には、ローンや消費者金融からの借入、未払いの医療費や滞納税などです。
プラス・マイナスを問わず財産を特定し、被相続人が遺した財産を把握しましょう。
相続財産が確定したら手続きの方針を決める
相続財産の総額が確定したら、次に相続手続きの方針を決めます。被相続人が遺してくれた財産が多く、そのまま承継する場合は裁判所への手続きは不要です。この場合は「単純承認」と言い、必要に応じて遺産分割協議を実施の上で、財産を相続人へ分けます。(※1)
合わせて読みたい:遺産分割協議書の作り方とは~実際の書き方を詳しく行政書士が解説
被相続人が遺した債務が多く、承継すると相続人の生活に大きなダメージを与える場合は相続放棄、もしくは限定承認を行うことができます。
相続放棄・限定承認はいずれも「相続の開始を知った日から3か月以内」に行う手続きですので、ご注意ください。
(※1)法定相続分どおりなら遺産分割協議は不要です。
相続財産の調査に期限はない
相続財産の調査自体には、法律で定められた期限はありません。しかし、先に触れたように相続放棄と限定承認には期限があります。また、相続税申告が必要な場合にも期限があります。詳しくは以下です。
手続きの期限 | 手続き先 | |
相続放棄 | 相続の開始を知った日から3か月以内 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 |
限定承認 | 相続人の開始を知った日から3か月以内 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 |
相続税申告 | 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内 | 被相続人の住所地を管轄する税務署 |
相続財産における預貯金口座の調査方法とは
相続財産の対象となるプラスの財産には、いろんな種類が挙げられますが、給与の受取や公共料金の支払い、貯蓄などに使用される「預貯金口座」は多くの人が解説しており、実際に相続でも多くの方が発見する財産の1つです。では、預貯金口座を調べるためには、どのような方法が挙げられるでしょうか。
通帳・キャッシュカードの確認
まずは被相続人が所有していた、通帳やキャッシュカードを調べてみましょう。財布の中や通帳などの貴重品の保管場所などを探してみてください。
銀行名のあるタオルなどの粗品
銀行の取引があると、景品でタオルやポケットティッシュなどの粗品をもらうことがあります。銀行名のあるグッズがあったら、取引先かもしれませんので問い合わせてみましょう。
アプリの確認
近年はネットバンキングの利用者も多く、通帳を持たない人も増えています。スマホやパソコンに、ネットバンキング名のアプリがある場合には、取引をしている可能性があります。
また、ネット銀行の場合も通帳がありません。スマホに口座のアプリがある可能性があるため、もしも画面上で確認出来たら、ネット銀行側に問い合わせるようにしましょう。
郵便物の確認
定期性預金の満期など、銀行からは定期的に郵便物が届いていることがあります。被相続人宛に銀行からの郵便物が保管されている場合は、被相続人名の口座がある可能性が高いため、調査しましょう。過去にネット銀行から届いたはがきに問い合わせたら1000万円近く残高があったことがあります。
転勤先にある地方銀行なども確認する
被相続人が過去に転勤や通学などの理由で、今とは違う場所に暮らしていた場合、その地域で使いやすい銀行に口座を開設していることがあります。相続人にはあまり馴染みのない地方銀行にも、預貯金が残されていることがあるため、心当たりがある場合は調べてみると良いでしょう。
預貯金調査を進める際の注意点とは
被相続人の預貯金口座の調査を進めるにあたって、知っておきたい注意点はあるでしょうか。詳しくは以下です。
金融機関の借り入れ状況も把握すること
相続財産には債務も含まれるため、預貯金口座の調査を進める際には、金融機関から借入の有無も、合わせて確認するようにしましょう。金融機関からの借入には、以下のような種類があります。
・住宅に関するローン(住宅ローン・リフォームローン・不動産担保ローンなど)
・車のローン
・教育ローン
・カードローン など
銀行が統廃合されていることがある
銀行は統廃合があり、現在は違う名前となっている場合があります。見つかった通帳やカードが、心当たりがない名前の場合にはインターネットを活用して、現在はどこに統廃合されているのか調べてみましょう。「一般社団法人 全国銀行協会」にアクセスすると、平成元年以降の提携・合併の歴史がリスト化されています。以下ご参照ください。
参考URL 一般社団法人 全国銀行協会 「最近の銀行の合併を知るには」
休眠口座となっている可能性がある
古い通帳が見つかった場合、現在「休眠口座」となっている可能性があります。休眠口座とは、長期間口座から預金・出金を行わないまま放置している状態の口座を指します。
2018年1月、休眠口座については「休眠預金等活用法」が施行され、2019年1月以降に発生する休眠預金は民間における公益的な活動に活用することになりました。銀行・ゆうちょ銀行における以下の口座は対象となるため、今後の相続時にも注意が必要です。
休眠預金の対象となる口座 | 対象にならない口座 |
普通預金・貯蓄預貯金・通常預金 | 外貨預貯金 |
定期預金・定額預金・定期預貯金 | 仕組預貯金 |
当座預金 | 財形貯蓄 |
大切な財産をご家族へ承継させるコツとは
預貯金口座が手軽に開設できること、給与口座やさまざまな支払いに活用することなどから、非常に多くの方が所有している財産です。その一方で、お金を入れたまま放置してしまうことも多く、休眠預金については社会問題にも発展しています。そこで、大切な預貯金口座を含む大切な財産は、円満にわかりやすく承継できるように準備しましょう。この章では承継させるコツを紹介します。
遺言書を作ろう
ご自身にしかわからない口座がある方もいるでしょう。相続財産は残されるご家族にとって大きな負担ですそこで、遺言書を生前からしっかりと作り、ご家族の負担を減らすことがおすすめです。
遺言書は誰に、いくら相続させるのか示すだけではなく、どのような財産をもっているのかも財産目録として記載するため、ご家族が相続財産の調査に必要とする労力も減ります。
合わせて読みたい:親に遺言書を書いてもらう意味とタイミングを行政書士事務所として相談を受けた経験から解説
不要な口座は解約しよう
転勤先で使っていた口座や、現在すでに預け入れはしていないままになっている口座がある場合は解約をして整理しておくことがおすすめです。
相続財産の調査にお困りですか?ご相談は長岡行政書士事務所におまかせを
今回は相続時に触れることが多い被相続人の「預貯金口座」について、相続財産の調査の視点から詳しく解説を行いました。預貯金口座は身近な銀行だけではなく、今お住まいの地域以外の場所に開設しているケースもあるため、被相続人のライフヒストリーに沿って丁寧に洗い出すことがおすすめです。
預貯金口座だけではなく、相続財産の調査はもちろんのこと生前からの相続対策については、解決実績豊富な横浜市の「長岡行政書士事務所」におまかせください。