遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、全員が合意して初めて成立します。そのため、知的障害のある相続人がいる場合でも、その人を除外して協議を進めることはできません。
しかし、知的障害のある相続人が、協議の内容を理解できるのか、不安に感じる方もいるかもしれません。そのような相続人がいる場合、協議が有効に成立するのか、疑問に感じる方もいるでしょう。
そこで今回は、横浜市で相続手続をサポートしている行政書士として、知的障害の相続人がいても遺産分割協議書は通常どおり作成できるか、解説します。
知的障害のある相続人が遺産分割協議書に署名・押印できるケース
まず前提として、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要であり、一人でも参加していない相続人がいれば成立しません。そのため、知的障害のある相続人を除外して作成した遺産分割協議書は無効になります。
これは相続人に、知的障害がある場合も同様です。本人が相続財産の内容や遺産の分け方を理解し、その内容に同意するかどうかを自身で判断できる場合は、本人が遺産分割協議に参加します。
また、もし名前を書くことが苦手な場合でも、本人の意思を確認できる状態であれば、代筆で対応できる可能性があります。ただし、その場合、本人の意思を明確に確認し、代筆者や立会人を記録するなど慎重な対応が必要です。
関連記事:遺産分割協議書に署名できないときの対処法|代筆や添え手の有効性を行政書士が解説

なお、本人が協議内容を理解できているか判断に迷う場合は、家族だけで決めず、医師や専門家に相談することが大切です。判断能力が不十分な状態で遺産分割協議書に署名・押印しても、後から無効になるおそれがあるため注意してください。
本人の意思確認ができないまま親族が代筆したり実印を押したりすると、後から「本人の同意がなかった」として協議そのものが無効になる可能性があります。
知的障害のある相続人に判断能力がない場合は成年後見人が必要
知的障害のある相続人が、遺産の内容や分け方を理解し、自身にとって有利か不利かを判断することが難しい場合もあるでしょう。
このようなケースで、家族が勝手に本人の代わりに署名・押印してよいわけではありません。本人の意思確認ができないまま親族が代筆したり実印を押したりすると、後から「本人の同意がなかった」として協議そのものが無効になる可能性があります。
もし知的障害のある相続人に判断能力がない場合は、家庭裁判所に申立てを行い、成年後見人を選任してもらわなければなりません。
成年後見人とは、判断能力が十分でない人の財産管理や法律行為を支援・代理する人です。本人に代わって預貯金や不動産などの財産を管理したり、必要な契約や手続きを行ったりします。
相続の場面で、遺産分割協議は重要な法律行為にあたります。そのため、知的障害のある相続人が協議内容を理解し、自身で判断することが難しい場合は、成年後見人が本人の利益を守る立場で関与します。
知的障害のある相続人本人に代わって、成年後見人が遺産分割協議に参加するということです。遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書には成年後見人が本人の代理人として署名・押印します。
関連記事:成年後見制度は相続手続と関係がある?相続人に成年後見人がついている場合について行政書士が解説!

なお、成年後見人は、ほかの相続人の都合ではなく、本人の利益を守る立場で判断しなければなりません。そのため、たとえば知的障害のある相続人の取り分を極端に少なくしたり、本人に十分な説明がないまま財産をほかの相続人に集中させたりする取り決めは行えません。
また、成年後見人は相続手続きのためだけに一時的に選任されるものではなく、本人の判断能力を補い、財産管理や法律行為を継続的に支援するために選ばれるものです。そのため、相続手続きが完了したからといって、成年後見制度の利用を止めることができない点も知っておきましょう。
※2026年6月現在、成年後見制度の改正案が審議中です。この改正案では、制度利用の必要がなくなれば、制度を終了できる方向へ見直される見込みです。法改正後は、遺産分割協議のためにスポットで後見人を付けることができるようになるかもしれないため、新しい情報が公表されたら、改めて解説させていただきます。
知的障害のある相続人がいる場合の遺産分割協議書作成の流れ
それでは、知的障害のある相続人がいる場合の遺産分割協議書作成の流れについて見ていきましょう。
- 相続人と相続財産を確認する
- 知的障害のある相続人の判断能力を確認する
- 必要に応じて成年後見人選任を申し立てる
- 利益相反がある場合は特別代理人選任を申し立てる
- 遺産分割協議を行い、協議書を作成する
- 署名・押印後に預貯金解約や相続登記を進める
1.相続人と相続財産を確認する
まずは、誰が相続人になるのか、どのような財産があるのかを確認します。
相続人を確認する際は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍などを集めます。相続人が欠けた状態では遺産分割協議を成立させられないため、非常に重要なステップといえます。もしご家族だけで相続人調査をすることが難しい場合は、行政書士などの専門家へ依頼することも可能です。
相続人調査のお悩みも
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対応エリア:横浜市・神奈川県全域・東京23区
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関連記事:相続人はどう確定する?調査方法や戸籍収集方法を行政書士が紹介!

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また、財産についても、漏れなく協議できるよう、ピックアップしていきましょう。不動産がある場合は登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金がある場合は残高証明書の確認も必要です。この財産調査も、行政書士へ依頼できます。
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関連記事:相続財産の調べ方とは?遺産の探し方や注意点を行政書士が解説!

2.知的障害のある相続人の判断能力を確認する
次に、知的障害のある相続人が遺産分割協議の内容を理解し、自身で判断できるかを確認します。
前述のとおり、知的障害があるからといって必ず遺産分割協議に参加できないわけではありません。本人が相続財産の内容や分け方を理解し、同意するかどうかを判断できる場合は、自身が協議に参加できる可能性があります。
一方、遺産分割の意味や財産の内容を理解することが難しい場合、本人だけで協議に参加するのは適切ではありません。判断に迷う場合は家族だけで決めず、医師の意見や診断書を確認したり、相続手続きに詳しい専門家へ相談したりしましょう。
3.必要に応じて成年後見人選任を申し立てる
本人に遺産分割協議を行うための判断能力がない場合、家庭裁判所へ成年後見人選任の申立てを行います。成年後見人が選任されると、本人に代わって遺産分割協議に参加します。
申立てには申立書、本人の戸籍謄本、住民票、診断書、財産に関する資料などが必要になるため、準備には一定の時間がかかります。
4.利益相反がある場合は特別代理人選任を申し立てる
成年後見人と本人が利益相反の関係にあたる場合、要注意です。たとえば、知的障害のある子の成年後見人が母であり、父の相続で母と子がどちらも相続人になるようなケースです。
この場合、母は自身の相続人としての立場と、子の成年後見人としての立場を同時に持ちます。たとえば、遺産が預貯金1,000万円だった場合、母が「私が800万円、子が200万円」と決めてしまうと、母の取り分は増えますが、子の取り分は減ります。反対に、子の取り分を多くすれば、母自身の取り分は少なくなります。
つまり、母が子の代理人になると、母は子の利益を守る立場であると同時に、自身の取り分を決める当事者にもなってしまいます。これでは、子にとって本当に公平な判断がされたのかわかりません。
こうした理由から利益相反がある場合、成年後見人が本人を代理して遺産分割協議を行うことはできず、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
特別代理人は、利益が対立している場面に限って本人を代理する人です。遺産分割協議では、本人の利益を守る立場で協議に参加します。
5.遺産分割協議を行い、協議書を作成する
相続人全員で遺産分割協議を行います。知的障害のある相続人に成年後見人や特別代理人が付いている場合は、その代理人が本人の立場で協議に参加します。
遺産分割協議書には、誰がどの財産を取得するのかを明確に記載します。不動産であれば登記簿どおりの所在地や地番、預貯金であれば金融機関名、支店名、口座番号などを正確に書きましょう。
また、知的障害のある相続人の取り分が極端に少ない内容になっていると、本人の利益を害する内容として問題になる可能性があります。
成年後見人や特別代理人が関与する場合は、本人の法定相続分や今後の生活費なども踏まえ、本人に不利益がないかを慎重に確認することが大切です。
6.署名・押印後に預貯金解約や相続登記を進める
遺産分割協議の内容がまとまったら、相続人全員で遺産分割協議書に署名・押印します。
遺産分割協議書が完成した後は、預貯金の解約や名義変更、不動産の相続登記などを進めます。相続登記では、一般的に遺産分割協議書、印鑑証明書、戸籍関係書類、住民票、固定資産評価に関する資料などが必要です。
金融機関や法務局では、成年後見人や特別代理人の権限を確認する書類の提出を求められることもあります。手続き先によって必要書類が異なる場合があるため、遺産分割協議書を作成する前後で、銀行や法務局に必要書類を確認しておくと安心です。
知的障害のある相続人がいる遺産分割協議書の作成は専門家へ相談しよう
知的障害のある相続人がいる場合、遺産分割協議書の作成は慎重に進めなければなりません。家族が本人の代わりに署名したり、本人を除外して協議書を作成したりすると、預貯金の解約や相続登記が進まず、後にトラブルになるおそれがあります。
知的障害のある相続人に判断能力がない場合、成年後見人の選任が必要です。また、成年後見人自身も相続人である場合は利益相反にあたるため、家庭裁判所で特別代理人を選任しなければならないケースがあります。
成年後見制度は相続手続き後も原則として続くため、利用前に制度内容を理解しておくことも大切です。相続手続きに詳しい専門家に早めに相談し、本人の権利を守りながら適切に手続きを進めましょう。
行政書士に相続手続きを依頼する場合、法律に基づいた正確な文面の作成はもちろん、相続財産調査のサポートや必要書類の収集なども可能です。
スムーズな相続手続きのためにも、遺産分割協議書の作成はお気軽に横浜市の長岡行政書士事務所へご相談ください。初回相談は無料で対応しています。


