相続する際、遺産目録という財産の一覧表が必要になります。そして遺産を把握するには、銀行にいくら入っているのかなどをしっかり把握することが大切です。
しかし、親族とはいえ他の人の預金残高は一体どうやって把握すればいいのでしょう。実は、それを教えてくれる「むかし話」がありましたので、今回はそれを見てみましょう。
※この物語は昔話風に作られたフィクションです、予めご了承ください。
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
2人の飼っていた愛犬、シロが「ここ掘れわんわん」と小判を探り当て、2人はすっかり大金持ち。
その姿を見ていた神様が、ご褒美にシロを人間にしてくれました。
おじいさんとおばあさんはシロの成長を見守りながら幸せに暮らし、やがて天国へと旅立っていきました。
遺されたシロは、おじいさんの遺言書がきっかけとなり、なんと行政書士になりました!
実家を事務所に改装し「シロ行政書士事務所」として、今日も村人たちの相談に乗っています。
太助「おうい、シロや! ちょっと相談に乗ってほしいんだけど」
シロ「おや、小学校の時の同級生で家がちょっとした小金持ちだけにおもちゃも何でも買ってもらえて周囲からうらやましがられているのを鼻にかけてスネ夫的な存在感だったことから皆に嫌われていた実際のところはかわいそうな太助ちゃん」
太助「…説明ゼリフの中に大量のディスりをブチ込まないでくれよ…」
シロ「どうしたんだい? ジャイアンからおもちゃを返してもらえないから困っているとか?」
太助の困りごとは、相続に関することでした。
相続時には財産目録を作るのが一般的
相続において、遺産がどれぐらいあるかは大変重要な論点です。
残された遺産の全容を証明するために、財産目録を作るのが一般的です。財産目録は義務ではありませんが、遺言書などで記入が漏れた財産などがあるとトラブルになりかねないため、作成しておいたほうが無難と言えます。
遺産の種類が多いと把握が大変
亡くなった人が非常にたくさんの種類の財産を遺していることは、よくあることです。銀行口座をいくつも持っていたり、株などの有価証券を持っているときは本当に雑多になります。
太助「いや、作品が違うから…それに俺はスネ夫じゃないし…。あのな、実は財産目録のことで困っててさ」
シロ「財産目録?そういえば、こないだ、お父さんが亡くなられたって言ってたよね」
太助「ああ。うちの親父は好事家だったから、財産の種類がたくさんあってさ。あ、これ自慢とかじゃねえよ!」
シロ「ま、いいけど。続けて」
太助「だから財産目録を作らなくちゃいけないんだけど、どこから手を付けていいかわかんなくてさ…」
シロ「なるほどね。ま、昔のよしみだ、協力しましょ」
相続財産目録作成のための残高証明書がある
財産目録には、土地や車などのほか、銀行に預けている預貯金なども記していきます。その際に有用なのが銀行などが発行してくれる残高証明書。亡くなった方の残高をわかりやすく明示してくれる書類をまずは取り寄せます。
シロ「相続は、故人(被相続人)が亡くなったときから開始されるから、まずは故人が亡くなった日の残高を把握することが大切だよ」
太助「つまり銀行とかに問い合わせればいいんだよな?」
シロ「ザッツライト。いくつかの銀行にお金を分けて預けていたら、それぞれに残高証明書を請求する必要があるんだ」
太助「その銀行が同じ銀行で、支店が違う場合でも全部に?」
シロ「その場合は、同じ残高証明書にまとめてもらえるよ。通常預金、定期預金、信託とか預け方が違っても、同じ銀行なら種類ごとに記載してくれるから、そこは安心していいよ」
太助「そりゃ助かるぜ」
残高証明書には借金まで網羅的に記載されている
残高証明書は預けてある財産だけでなく、借りている財産も網羅的に記載されているものになります。
また、ネット銀行も請求できますから、通帳のある金融機関以外もないかしっかりチェックすることが大事です。
シロ「ちなみに、残高証明書を請求したら、その金融機関から借りている借金も記載されるんだ」
太助「借金って相続に関係あんのか?」
シロ「大ありすぎて、オオアリクイもびっくりさ。相続では借金も問題になってくるからね」
太助「お前のギャグセンスって、ほんと昔から独特な…」
シロ「あと、株などの有価証券もちゃんと証券会社に問い合わせて残高証明書を手にしておかないと。ヌケモレがあったら後々トラブルのもとになるから、もうしらみつぶしにお父さんの部屋をガサ入れすることをお勧めするよ」
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太助「…言い方」
シロ「特にネット銀行とかだと通帳が手元になかったりするから、もうメールもしらみつぶしに見ておくほうがいいね」
太助「なかなか大変なんだな…。で、残高証明書が揃ったら、次は何をするんだ?」
相続時の残高証明書の活用場面
実際の相続において、残高証明書が必要になってくる場面は、主に遺産分割協議時、相続税申告時です。
遺産分割協議時に正確な遺産を把握するため
相続財産がいくらなのか正確にわらかなければ、その財産をどうするかも正確には決められません。もし財産が漏れていたのなら、協議をしてもあまり意味がないことになってしまいます。
シロ「まずは遺産分割協議だね。そもそも、この協議は遺産の分け方を決めるものだから、遺産がいくら残っているかを正しく知っておかないと話にならないのは、算数苦手な太助ちゃんでもわかるよね」
太助「…あい」
相続税の申告のためにも取り寄せる
相続税は当たり前ですが、相続財産を基礎にして算定されます。したがって、基礎となる相続財産がわからなければ、相続税の算定自体ができない、あるいは間違ったものになってしまいます。
シロ「で、今度は相続税の申告。相続財産がある一定の金額を超えると、相続税が発生するのは、世間知らずの太助ちゃんでもわかるよね」
太助「…シロ、言い方ってば」
シロ「あ、ごめんごめん、昔の恨みがつい…」
太助「…今度アイス山ほどおごるから」
シロ「よし、じゃぶじゃぶ水に流そう! 話の続きだけど、そもそも相続税が発生するのか、発生するとしたらいくらなのかも、財産の総額がわからないと決められないんだ」
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残高証明書は早めに手に入れよう
残高証明書は、遺産分割協議をするため、ひいては相続税の申告のために必要なものになります。特に相続税の申告は期限が定められていますから、早めに動いて、相続財産をしっかりと算定するのがいいでしょう。
太助「そういえば、相続税には期限があるって聞いたから、残高証明書をそろえるのはとにかく早くなくちゃいけないよな」
シロ「そういうこと。相続発生を知った日の翌日から10カ月以内だね。相続人でもいいし、委任状があれば遺言執行者、弁護士、行政書士といった代理人でも請求できるから、サクサク動くに越したことはないね」
残高証明書の取得方法と注意事項は?
実際に、残高証明書を取得するためには、必要書類を集め、該当する金融機関で残高証明発行依頼書に記入していく流れになります。
残高証明書取得の一般的な必要書類
残高証明書を請求する際、いくつかの書類が必要になります。また金融機関に請求する、つまりは民間の会社に請求することになりますので、それはそれぞれの会社ごとに少し異なることもあります。
シロ「さて、まず残高証明書を取得するために必要になる書類はこんな感じだね。でも金融機関によって必要な書類や発行手数料は違ってくるから、必ず事前に連絡して確認しておくこと」
・亡くなった方の戸籍謄本、除籍謄本
・申請者の戸籍謄本など(申請者が相続人だと確認できる書類)
・申請者の身分証明書(マイナンバーカードや運転免許証)
・実印、印鑑証明書(認印でいい場合も)
太助「あい」
シロ「で、金融機関で残高証明発行依頼書に記入をするわけなんだけど、ゆうちょ銀行などでは貯金残高証明請求書と呼ばれていたりとか、記入用紙の呼び方が違うのでこんがらがらないようにね」
太助「わかった。ほかに何か気を付けておくことはある?」
残高証明書を請求すると口座は凍結される
残高証明書を請求するということは、その口座の持ち主が亡くなったということを意味します。したがって、多くの場合、銀行は不正な利用がないように口座を凍結する手続きを取ることになります。
シロ「そうだね。残高証明書を請求すると、その口座は凍結されるんだ。口座から不当にお金が引き落とされるのを防ぐためにね。そこは気をつけて」
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太助「ごもっともな考え方だよな」
シロ「あと、定期預金などの場合、残高証明書に記載されているのは元の金額だけなんだよね。利息は考慮されてないから、利息の金額も書いた経過利息計算書も発行してもらったほうがいいね」
太助「がってん」
残高証明書の発行までに約2週間
銀行も網羅的に調べますので、残高証明書の発行には少し時間がかかります。ですから、早めに相続手続きを終わらせたいのなら、その時間も考慮して早めに請求しましょう。
シロ「あと、発行まではちょっと時間がかかること」
太助「え? 役所みたいに、申請すればその場ですぐもらえるもんじゃないのか?」
シロ「金融機関の方でも各支店の資産をきっちりとチェックしなきゃいけないでしょ」
太助「そりゃそうか」
シロ「だいたい発行までに1~2週間かかると思っていたほうがいい
太助「わかった。早速申請したいんだけど、いま新規事業を始めてて手が離せなくて、シロ、行政書士として代わりにお願いできないか?」
シロ「すごいね、儲かりそうだね」
太助「おかげさんで」
シロ「じゃ、がっぽりはずんでもらおうかな」
太助「まったく…かなわねえなあ」
残高証明書の取得も行政書士にお任せください
以上、遺産目録と残高証明書にまつわるむかし話でした。
相続人は誰か、そして遺産は何か、というのは相続においては本当に重要な部分です。
行政書士も残高証明書の取得を引き受けてくれますので、シロのように物知りな行政書士に頼んでみてもいいかもしれませんね。
相続時の残高証明書のことなら、横浜市の長岡行政書士事務所までご連絡ください。
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