名義預金とは?注意点や対策方法を解説!【税理士監修】

名義預金とは 被相続人が作った相続人名義の預金には注意点を行政書士が解説! 相続手続の基礎
相続手続の基礎

「母が生前に私名義の通帳を作ってくれていた。相続時にはどう扱えばいい?」
「相続税申告の後、税務署から名義預金を指摘されている。」
「名義預金は危険と聞いた。子どもにはどのように財産を遺すべき?」

名義預金という言葉をご存じでしょうか。名義預金とは、口座の開設者と、口座の名義人が異なる預金方法のことを意味します

よくあるのは、親が子の通帳を作成し、将来のために貯金してくれるケースです。

今回の記事では、相続時によく問題となる名義預金について、注意点を紹介します。

この記事の執筆・監修者
大岡 俊明(税理士)

税理士。神奈川県横浜市のクロスウィード税理士事務所代表。メンターキャピタル税理士法人で13年間実績を積み、2024年にクロスウィード税理士事務所を開業。相鉄線沿線を対象に、相続税申告のなかでも遺産総額が1億円以下の相続税申告に特化していることが特徴。

長岡行政書士×大岡税理士 対談記事|横浜での相続のエキスパートとして

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名義預金とは

名義預金とは、口座を実際に開設した方と、口座の名義人となっている方の名前が異なっている預貯金口座を意味します。祖父母やご両親が、大切な孫や子のために口座を開設し、コツコツとお金を貯めているようなケースです。

また、専業主婦・主夫の方向けに、働いている配偶者側が口座を開設し、入金しているようなケースもあります。

名義預金はよく相続時のトラブルとして取り上げられていますが、名義預金そのものに違法性があるわけではありません。そのため、金融機関側でも口座の開設は受け付けており、広く名義預金は行われています。

名義預金に注意すべき理由

名義預金が違法ではないのであれば、なぜ注意しなければならないのでしょうか。

それは名義預金があると、相続時にトラブルが生じる可能性があるためです。

名義預金は口座の「開設者」「管理者」「預金者」と「口座名義人」が異なります。

そのため相続が発生すると、被相続人の財産だけではなく、相続人の財産も確認されることがあるのです。

わかりやすく例で述べましょう。父親が子のために預貯金口座を開設し、毎年お金を貯めていましたが、通帳も印鑑もカードも、すべて父親が管理していたケースでは、父の死後、口座の名義自体は子の名前であっても、実質は「父親の財産」とみなされます。

つまり名義預金は、被相続人の財産としてカウントする必要があるのです。

相続税申告が必要な場合は、たとえ口座の名義人の名義が子であっても、亡き父の財産として相続税計算に入れる必要があります。

名義預金が引き金となる相続トラブル

この章では、名義預金が引き金となる相続トラブルを紹介します。

代表例は次の2つのケースです。

  • 相続税申告から漏れやすい
  • 遺産分割協議の対象からも漏れやすい

相続税申告から漏れやすい

被相続人名以外の名義で口座が作られていると、家族が「この口座は相続税計算の対象ではない」と思い込んでしまい、申告から漏れてしまうことがあります。

しかし税務署による「税務調査」が行われ、初めて名義預金は実質的に被相続人の財産とカウントする必要がある、と知る人も多いのです。

名義預金が相続税申告から漏れやすいことは覚えておきましょう。

遺産分割協議の対象からも漏れやすい

名義預金は遺産分割協議の対象からも漏れやすいです。

たとえば、亡父が子名義の預金していた場合、子は自分の財産だと思い、遺産分割協議に必要となる相続財産の調査時に、名義預金の口座は申告しないことも予想されます。

しかし、相続人名義でも、被相続人の相続財産として加える必要があり、遺産分割協議が必要です。

父から、「大人になったら、この貯金を使うんだよ」と言われていたら、相続開始後にも自分の財産だと子が認識してもおかしくありません。このように名義預金はトラブルの温床になりやすいのです。

合わせて読みたい:遺産分割協議とは

名義預金によるトラブルの対策方法

違法性はないものの、トラブルの温床になりやすい名義預金を作る場合は、正しい知識を身に着けた上で対策を講じる必要があります。

そこで、この章では名義預金からトラブルを減らすためにも、4つの対策方法を紹介します。

  • 贈与契約書を作る
  • 名義人自身で印鑑・通帳を管理する
  • 名義預金はありがたく使おう
  • 遺言書で財産を残す

贈与契約書を作る

名義預金を作る場合、「贈与契約書」を作っておくことで、生前贈与が成立します。

「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」

民法549条

生前贈与が成立していれば、名義預金とはみなさないため安心です。口約束でも贈与は成立しますが、相続対策としては、きちんと契約書を交わすことが大切です。

なお、孫や子が未成年の場合は、親権者が署名捺印を行います。

また、贈与額・贈与方法によっては贈与税がかかる可能性もあるため注意してください。

関連記事:暦年課税とは?令和5年度の税制改正点や相続時精算課税との違いを税理士が解説

名義人自身で印鑑・通帳の管理する

名義預金は、印鑑、通帳、カードの管理などを全て口座開設者側が管理し続けている場合にみなされやすいため、名義人自身で印鑑や通帳など管理することが大切です。

特に名義預金は、以下のポイントを税務署側がチェックしているため、ご注意ください。

  • 口座名義人が、自身の口座であると認識しているか
  • 贈与税を申告しているか

まず、祖父母やご両親が、子や孫に無申告で口座を管理している場合、名義預金とみなされる可能性が高まります。贈与する場合も、贈与を受ける側が「贈与されたこと」を知らなかった場合は、名義預金口座とみなされやすくなります。

また、暦年贈与(※)なら贈与税は不要ですが、それ以上に名義預金を重ねている場合は正しく贈与税を申告することが大切です。贈与税の申告は、この預金が確かな「贈与」であったと証明できる資料となるため、名義預金とみなされにくくなります。

(※)毎年1月1日~12月31日までの1年間の間に行われる、110万円までの贈与のこと

名義預金はありがたく使おう

名義預金は将来の学費や結婚など、人生の大きな岐路に備えてご家族が作ってくれていることが多く、大切に貯蓄を重ねていることが多いでしょう。

しかし、管理者側があくまでも名義人であるべき以上は、名義預金もありがたく使用することがおすすめです。贈与を受けた方が自由に使っていれば、名義預金にみなされにくくなります。

遺言書で財産を残す

名義預金は古典的な財産の託し方ですが、きちんと対策を講じなければ相続時には大きなトラブルになってしまうことが予想されます。

税務署による税務調査が行われると、高額の追徴が発生するおそれもあります。

そこで名義預金ではなく、遺言書によって財産を残す方法も検討してみてください。

遺言書は名義預金とは異なり、死後に財産の継承が行われます。

そのため、「この預貯金は相続財産になるのか、ならないのか」など、相続人側が不安を感じることがありません。遺言書に沿って、遺されたご家族が相続財産を分配すれば良いため、相続人同士のトラブルも防げます。

横浜市の長岡行政書士事務所では、遺言書作成もサポートしているため、お気軽にご相談ください。初回相談は無料で対応しています。

名義預金には要注意!財産の遺し方は慎重に検討しよう

この記事では、財産の遺し方として広く活用されている名義預金について、相続時によくあるトラブルの視点から、詳しく解説を行いました。

名義預金はそれ自体には問題はないものの、贈与として記録を残したり、正しく名義人自身による管理ができていない場合には、相続時にトラブルとなるおそれがあります。

もしも、今後財産を正しく遺していきたいと検討する場合には、名義預金ではなく遺言書も視野に入れることがおすすめです。詳しくは、長岡行政書士事務所にご相談ください。

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