胎児は遺産相続できるのか?概要を行政書士が解説!【異説・花咲かじいさんに学ぶ!】

inheritance 相続手続の基礎
相続手続の基礎

相続発生時に、例えば配偶者のおなかの中にいる赤ちゃんに相続権は認められるのでしょうか? 
実は、原則的に「人」として権利の主体となれるのは出生から。つまりお腹から生れ出た時からです。

例えば、不法行為の損害賠償や遺言で財産を受け取る場合などでは、胎児でも権利の主体となります

今回は胎児の遺産相続について「昔話花咲じいさん風」にお伝えしていきます。

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

2人の飼っていた愛犬、シロが「ここ掘れわんわん」と小判を探り当て、神様が、ご褒美にシロを人間にしてくれました。

おじいさんとおばあさんが天国へと旅立ったあと、シロはなんと行政書士になりました!

実家を事務所に改装し「シロ行政書士事務所」として、今日も村人たちの相談に乗っています。

一寸法師「おうい、シロ!」

合わせて胎児にも相続権はあるのか?胎児の法的地位から行政書士がわかりやすく解説!

シロ「おっとあぶない!一寸法師くん、久しぶりだね!」

一寸法師「お前、いま俺のこと踏もうとしただろ…」

シロ「ごめんごめん、わざとじゃないんだよ。おや、隣にいるのは噂の彼女の親指姫ちゃんかい?」

親指姫「はじめまして」

一寸法師「いやあ、実はよ。俺たち結婚することになってよ」

シロ「いいね、国際結婚じゃん」

親指姫「でもちょっと心配なことがあって、シロさんに相談に乗ってもらおうと…」

一寸法師「いまお前が踏もうとしたみたいに、俺たち小っちゃいからいつ踏まれてくたばっちまうかわかんねえだろ」

シロ「なんだかやるせない悩みだね」

一寸法師「実はいま親指姫のお腹に俺たちの赤ちゃんがいてよ。もしかして妊娠中に俺がくたばっちまうともかぎらねえ。そこで、胎児の相続について学んでおきたくてよ」

シロ「OK、昔たくさん踏んづけたお詫びにレクチャーするよ」

親指姫「…たくさん踏んづけてたのね」

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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胎児の法律上の位置とは?

原則として、胎児はお腹の中にいるうちは権利の主体になれないと解釈されています。つまり、母親のお腹から出てきた時に、初めて「人」としての権利を得ることになるというのが法律の考え方です。

シロ「…って前提があるんだけど、これじゃ困っちゃうシチュエーションも出てくるから、相続時とか損害賠償の時には権利を認めちゃおうってことになってるんだよ」

親指姫「つまり、夫がぷちっと踏みつぶされてぺちゃんこになっても、夫の遺産は赤ちゃんにもわたるんですね」

一寸法師「…なんか、言い方」

シロ「そうだね。ただ、残酷なことを言うようだけど、赤ちゃんが無事出生できなければ…つまり死産とかだね…そもそも権利はなかったということになるんだ」

一寸法師「そういう原理原則なんだな。わかったぜ。で、相続権はあるってことなんだけど、相続分についてはどうなるんだ?」

シロ「もちろん子と同じになるよ。つまり親指姫ちゃんが1/2、赤ちゃんが1/2って”寸法”だね」

一寸法師「おっ、なんかうまい言い方しやがった」

親指姫「ねえシロさん、ひとつわからないんだけど、遺産を受け取るときに遺産分割協議をすることもあるんでしょ?」

シロ「うん、遺言がないときとかね」

親指姫「お腹の中にいる赤ちゃんは、さすがに遺産分割協議には参加できないんじゃない?

胎児と遺産分割協議

遺産分割協議とは、遺産をどうするかを決める話し合いのこと。遺産分割協議の成立要件は相続人全員の合意です。胎児が産まれる前に遺産分割協議をして内容を決めても、いざ胎児が生まれたのなら意味がなくなってしまうことに。ですので、胎児が産まれるのを待ってから遺産分割協議をすることになります。

シロ「親指姫ちゃんはさすがだね。川をお椀で下るような無謀なヤツとは違うね」

一寸法師「おい、こう見えてパリ五輪のカヌー競技の代表狙ってんだからな」

シロ「パリオリンピック、こないだ終わったじゃん…」

親指姫「お腹の中にいるときはもちろん、生まれてすぐに参加すると言うのも無理があるし…そうなると何年も遺産分割協議はできないってこと?」

シロ「それじゃさすがにみんな困るから、そういうときは代理人を立てるんだよ」

一寸法師「なら話は早いや。親指姫ちゃんが代理人になりゃいいんだ」

シロ「残念だけど親が代理人になるのはNGなんだよね。利益相反といって、親が自分の都合のいいように物事を決めてしまうケースも世の中あるからね」

合わせて読みたい:遺産分割協議に親は子の代理人になれる?相続における利益相反と対処法を行政書士が解説!

一寸法師「じゃ、誰がやるんだ? 仕方ねえ…俺がゾンビになって…」

シロ「…ゾンビに代理権はないと思うよ。普通は、家庭裁判所に請求して、中立の立場を守れる特別代理人を決めてもらうんだよ」

一寸法師「なんだ、マイケル・ジャクソンのスリラー並みに復活してやろうと思ったのによ」

親指姫「本当に出てきたら、塩ふるわよ…」

相続時に胎児が関係するときの留意点

相続時に胎児が存在する場合に気を留めておくべきポイントはほかにもあります。例えば相続放棄や遺言書の作成、そして相続税についても知っておくべきことがあります。

一寸法師「そうそう、相続放棄とかいろいろな。そのへん、どうなんだ、シロ?」

シロ「じゃ、まず相続放棄からいこうか。もちろん胎児も相続放棄はできるよ。でも内容を理解して放棄するわけじゃないから、やっぱり身内ではない特別代理人が判断するんだよ」

親指姫「将来的に、この子の負担にならないように、第三者の視点でちゃんと判断してくれるのね」

遺言書を作る

一寸法師「あと遺言書な。念のため、踏みつぶされる前に書いておこうと思ってはいるんだけど」

シロ「うん、赤ちゃんは遺言書で財産を受け取れるもんね。でも、万が一生まれてこれなかったら無効になってしまうのは覚えておいて」

親指姫「遺言書が無効になったら、どうなるの?」

シロ「それこそさっき話した遺産分割協議ってわけさ。ただ、一寸法師くんが不要な遺産分割協議をさせたくないっていう殊勝な気持ちをかすかにでも持っているなら、予備的条項を備えた遺言にするのが無難だね」

一寸法師「…お前、俺のことどう見てるんだよ」

相続税に注意

親指姫「あと、最後に気になっているのが相続税のことなの。遺産分割協議は赤ちゃんが参加できないから、生まれるのを待ってからなんでしょ? だったら相続税の納付が間に合わなくなるんじゃ…」

シロ「そうだよね、相続税は相続開始後10カ月以内が期限になっているもんね」

一寸法師「おいおいおい、それヤバイじゃん。一寸先は闇ってこのことかよ?」

シロ「…結論から言うと、赤ちゃんを除外して先に計算をして申告するんだ。で、赤ちゃんが生まれたあと、相続税修正の申告をすればOKなんだ」

合わせて読みたい:相続税申告はどうすればいい?手続き方法や期限・税率を解説!【税理士監修】

不動産の登記も出来る

親指姫「不動産の場合は? 登記を移したりしないといけなかったりするんじゃないの?」

シロ「登記も相続によって不動産取得を知ったときから3年以内だもんね」

一寸法師「まあ俺たちの場合、土地と言っても広くはないけどな」

シロ「不動産の登記は仮の名前でしておけるよ。もちろん、生まれて本当の名前が決まってから、登記の変更をしないといけないけどね」

一寸法師「仮の名前ね。一寸家の長男だから『一寸某氏』ってか。わはは、うまいこと言ったな」

親指姫「…この痛々しいところだけは、遺伝しないでほしいわ」

合わせて読みたい:相続法改正のまとめ|2024年4月・2023年4月・2018年7月の改正を行政書士が解説!

胎児の相続問題でお困りの方は行政書士までご相談ください

今回は胎児の遺産相続について昔話風にお伝えしていきました。

胎児はそれだけでは権利を取得することはできませんが、出生により権利能力を得ることができるようになります。

例えば、妊娠したばっかで夫が余命宣告をされた場合などあまり想像したくはありませんが、このようなケースでも遺言書で今はまだ見ぬ我が子に遺言書を遺すことも出来ます。

合わせて読みたい:胎児に相続させる遺言書は有効?胎児の相続権はいつから発生するか行政書士が解説!

ぜひ、皆様の遺産相続が安心できるようになりますよう、私たちも願っております。

相続でお困りの方は、横浜市の長岡行政書士事務所までお気軽にご連絡ください。

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この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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