遺産分割協議が無事に終わると安心できますが、思わぬところに落とし穴があるというもの。協議が終わった後に遺産分割協議書の未記載の遺産が見つかったらどのように対応すれば良いでしょうか?
今回は「推理小説風」に解説していきます!これを読むころには遺産分割協議書に記載のない遺産の対応策が理解できることでしょう。
こんにちは。ぼくは名探偵として知られる明智小五郎先生の助手、小林です。
明智先生は、永遠のライバルである怪人三十面相との闘いの日々。でも、相手もそう毎日毎日出没できるほどヒマなわけではありません。
そんなときは、ぼくがやっている行政書士のほうでの依頼をこなし、先生は居眠りをしたり、茶々を入れてきては暇をつぶしているというわけです。
ということで、今日も事務所に相続のご相談がやってきまして…。
令嬢「かのご高名な明智先生の事務所はこちらでしょうか?」
小林「あ、はい。明智探偵事務所兼小林行政書士事務所です」
遺産分割協議書に遺産の記載が漏れることもある
令嬢「突然ですが、遺産分割協議を行ったんですが、そのあとに遺産分割協議書に記載されていない、奇妙な遺産が見つかったんです」
明智「いま奇妙とおっしゃいましたね! 事件のにおいがする…!」
小林「わっ、驚 かさないでくださいよ、明智先生。めんどくさくなるから、そのまま昼寝してくれてりゃよかったのに…」
明智「なんか言ったか?」
小林「いえ、別に。そうそう。未記載の財産が出てきた場合の対応ですね」
令嬢「やはり遺産分割協議をやり直したほうがいいのかしら?」
小林「いえ、案ずるに及びませんよ。遺産分割協議書に未記載の財産が見つかったとしても、遺産分割協議をやり直す必要はありません」
令嬢「そう、それは助かりますわ」
小林「でも、新たな財産は、相続人全員が共有している状態になります。ですので、一部の相続人が勝手に使うことはできず、その部分だけ相続人全員で話し合い、法定相続分どおりに分割するか、特定の相続人が取得するかなどを決めます」
令嬢「……そうなの?」
記載漏れの場合は遺産分割協議書を再度作る
小林「はい、ですから今ある遺産分割協議書は有効なまま、新たに見つかった財産の遺産分割協議書を別途作成すればいいんです。もっとも、一部の相続人がこっそり財産を隠していたことがバレたら、遺産分割協議を無効にして再度遺産分割協議をやり直すことになったりしますけど」
令嬢「(ギクッ)……」
明智「おや、顔色が優れませんね。何かお困りになる事でも?」
令嬢「と、とんでもありませんわ」
小林「たまにあるんですよ。高額な財産を隠しておいて、あとから発覚し、「最初からこんな財産があるとわかっていたなら、遺産分割協議に合意しなかった!」とモメにモメるケースが」
令嬢「そのような主張が起きたらどうなるんです?」
小林「その人が無効を主張して、遺産分割協議をやり直したり、家庭裁判所で遺産分割調停を起こしたり、いろいろです。調停が不成立の場合は遺産分割の無効確認請求訴訟…なんてことも考えられます」
明智「ちなみに、新たな財産が見つかったとき、「他の相続人に言わずこっそり使ってしまう」「手続きをせずに放置してしまう」という対応だけは絶対にNGですぞ。手続きをせずに放置してしまうのもダメ」
令嬢「臭いものには蓋をしたくなるのが人情では?」
明智「蓋をしたところで、この場合は相続税申告を正しくしていないことになりますし、相続登記が遅れることがあるなど、ロクなことにはなりませんのでね」
遺産分割協議書に遺産の記載漏れをしたときの対応策
相続税申告や相続登記の期限に間に合うように、遺産分割協議は相続開始後すぐに開始していきます。短期間で財産を把握するのは、大変な苦労ごと。万が一、記載漏れの相続財産が見つかることに備えて、対策を講じた遺産分割協議書を作ることが推奨されています。
令嬢「対策を練ってある遺産分割協議書ですって?」
小林「まずは相続財産の調査ですね。金庫や机はもちろん、被相続人のスマホやパソコンからネットバンキングやネット証券までしっかりと財産を探します。不動産の取得にあたっては固定資産税評価証明書だけではなく、名寄帳なども活用して調べていくんですよ」
相続財産調査のお悩みも
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令嬢「そんなに細かいとは…」
小林「あと、あらかじめ遺産分割協議書の作成時にひと工夫もお忘れなく。例えばこんなふうに文言を入れておくと手続きがスムーズになります」
見つかった財産は特定の相続人が取得するケース
記載例「本協議書に記載のない遺産および後日新たに判明した遺産については、相続人長岡花子が取得する。」
見つかった財産は、相続人全員で法定相続分を取得するケース
記載例「本協議書に記載のない遺産および後日新たに判明した遺産については、相続人全員が法定相続分に従って相続する。」
見つかった財産は、その時相続人全員で話し合って決めるケース
記載例「本協議書に記載のない遺産および後日新たに判明した遺産については、相続人全員がその財産の帰属について再度協議を行うこととする。」
遺産分割協議の際は漏れが無いように遺産調査を確実に
遺産分割協議時には他の相続人がすぐわかるように遺産の調査をすることが大事です。
例えば、金融機関にて残高証明を取得する、株式の調査のためにほふり機構(証券保管振替機構)に開示請求をする、不動産の名寄せをするなど、事前の準備をすることで遺産の記載漏れを防ぐことが出来ます。
令嬢「は~あ、こりゃ、ここまで細かくやられちゃ、どうにもならないわね…」
小林「え? 突然どうなさったんです?」
明智「小林君、わからんのか。ご令嬢は、わざと隠し財産をつくって、親類縁者を出し抜こうとしたんだよ」
令嬢「実は、よからぬ殿方に騙されまして、家族に内緒で借財を…。普通に分配されたのでは足りませんで…でもわたくしが愚かでございました」
明智「魔が差すこともあるでしょう。だいじなのはこれからです」
令嬢「ええ、これから小林様に教えていただいたとおりに、親類に相談をしてきますわ」
小林「帰っちゃった…。先生、最初から見抜いていたんですか?」
明智「うむ。しかし、小林君の説明がなかったら、こうも納得はしてくれなかったろう」
小林「なんだか久しぶりにチームワークで問題解決した感じですね!」
明智「うむ。よし小林君、たまには親交を深めるべく、牛鍋にでも繰り出そうじゃないか」
小林「あれ? そんなお小遣いありましたっけ? ははあ…先生、新たに見つかったへそくりですか? こりゃ僕のお給料、協議のしなおしかな?」
遺産の調査をすることと共に、漏れた場合に備えて遺産分割協議書には「この協議書に記載なき財産は相続人○○が取得する」等の文言があれば、再度協議書を作成する必要がございません。
もし、遺産相続が起きて遺産の調査に迷ったら、横浜市の長岡行政書士事務所までお気軽にご連絡ください。
皆様とお会いできることを楽しみにしております。