同性パートナーの将来の相続について|遺言書等の対策を行政書士が解説!

同性パートナーの将来の相続について 遺言書等の対策を行政書士が解説! 相続トラブル・事例
相続トラブル・事例

最愛のパートナーである彼女が死んだ。深い悲しみの中届いた一通の遺言書。それがすべての始まりだった。それから私は知ることになった。パートナーシップとはどういうことか?パートナーたちはどうやって相続をするのか?法的には異端である愛情は、死後、どうやって実現することができるのか。

今回は非常に現代的な同性パートナーの相続について【掲示板風】に解説してみました。同性パートナーの将来の相続対策について分かりやすい内容になっていますので、どうぞご一読ください。

大好きなパートナーの、命の灯が消えた。

窓辺に飾る写真には、彼女とあたしの、まばゆいばかりの笑顔が封じ込められている。

この笑顔を取り戻す手段を、いまのあたしは持っていない。

ねえ、どうしてあたしを残して逝っちゃったの? あたしはこれからどうしたらいいの?

0.1ccほどの涙が床を揺らしたのか、不意にどこからともなく、1通の封筒が落ちてきた。

遺言書…。

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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パートナーシップ制度と相続とは

異性カップルと比べると、同性カップルが相続をするためには、法的な対策が必要です。なぜなら日本では、同性婚が認められていないことから、どれだけ絆の強いカップルでも法的には「他人」ということになってしまうからです。

何も対策をしないでパートナーが亡くなると、法定相続人(パートナーの家族など法律上の相続人)に財産が渡るなどして、生活が一変してしまう可能性があります。

そこで、日本における同性カップルが、より望ましい相続を達成するための方法を見てみましょう。

パートナーから遺言書が届いたら

遺言の内容はある日突然知ることになります。

遺言書、それは彼女が残した、最後の文字…。

封筒を手に取った瞬間、封筒が震え出した。あたしの手の震え? いや、ちがう。しかも妙な声が聞こえる。

「泣いている暇はないぞ。お前にはやらないといけないことがある」

死ぬほど驚いたが、なんと遺言書がしゃべりだした。今までの感傷が全部吹っ飛んでしまう。

そいつは、「九十九神だ」って名乗ってて、どうやらあたしに、これからのアドバイスをくれるみたい。

ということで、ひとりでこの状況を処理しきれないから、ここに書いていくね。

パートナーシップ制度は法律上の制度ではない

近年話題の「パートナーシップ制度」は自治体が同性カップルを婚姻に相当する関係と認め証明書を発行する制度のこと。しかしこれは法律上の制度ではありません。

この制度を使うと、確かに発行した自治体にある公営住宅への入居条件を満たせたり、病院への救急搬送時に家族として扱ってもらえるなどできますが、相続においては効力がないのです。

「実を言うと、お前が結んでいたパートナーシップは自治体が行っているものであって法律で整備されたものではないんだ」

「けれど安心しろ。それでも方法はある」

そんな声が聞こえてきた。一体どんな方法が?

同性パートナーの3つの相続対策

結婚はしていないけれどパートナーになっている方に財産を遺す方法は大きくわけて三つあります。そして積極的にそれらの方法を使わないと、将来の相続で財産を遺すことはできません。

1:九十九神って付喪神?

だってさ。モノに神様が宿る、あの付喪神。

2:彼女の遺言書からでてきたの?

そう。どうせ出てくるなら、あの子がよかったのに。

3:アドバイスって何の?

LGBTQの相続についてだってさ。同性カップルの間で相続を実現させるためには、3つの対策が必要だって言ってる。遺言、養子縁組、死因贈与契約だって。

遺言でパートナーに財産を遺す

遺言書は自分の遺産を整理する、最もシンプルかつ強い方法のひとつです。もちろん家族だけでなく、遺贈という手段を使って、パートナーの方にも遺産を遺すことができます。

4:とりあえず遺言はもうクリアしてんじゃね?

まあそうだね。実際、手元に遺言書があるし。付喪神が言うには、これがあれば基本的に遺言の通りに遺産は分割されるみたい。相続人による遺産分割協議もいらないんだって。

5:あれ? でも遺留分は法律上あるはずだよね?

詳しいね。そう、相続人の権利として遺留分はもちろん考慮しなくちゃいけないようだけどね。

合わせて読みたい:遺留分とは何か?遺留分の割合と遺留分侵害請求について解説!

6:ちなみに遺言書はもう読んでみたの?

一応、家族に渡して、行政書士さんにチェックしてもらったみたい。私も詳しくなかったんだけど、遺言ってちゃんと形式があるんだね。その形式に則ってなかったら、無効になっちゃうんだって。

合わせて読みたい:公正証書遺言の方が優先される?実際の効果と確実性を行政書士が解説!

7:それ、素人がやんないほうがいいやつじゃね?

一応、自筆証書遺言といって自分で書けるパターンと、公正証書遺言という信用できる公証人というプロの人に書いてもらうパターンに大きく分かれるみたい。ほかにもあるようだけどね。で、リスクがないのはやはりプロが書いた公正証書遺言なんだって。

合わせて読みたい:遺言書を作成する場合は、公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらを選べばよいのか?

8:公正証書遺言って、もう「公正」って文字面からして安心なんだね。

形式不備による無効リスクがほとんどなく、原本は公証役場で保管されるから、紛失や改ざんのリスクもないって。

合わせて読みたい:公正証書遺言の公証人とは?スムーズに公正証書遺言を作る方法を行政書士が解説

9:彼女さんの遺言書はどっちだったの?

公正証書遺言。きっと、不備があってあたしが困らないようにって…。彼女、いつもそういうふうに気遣ってくれてたから…。

10:いい子だったんだね

うん、ありがと。

養子縁組制度を活用する

パートナーシップが法律上の家族とは認められないのならば、他の方法で家族になることも考えられますね。夫婦ではなく親子になってしまいますが養子縁組制度は、まさしくそれを実現してくれる方法になりえます。

11:パートナーが生前に手続きできるなら、養子縁組という手もあるんでしょ?

そうみたいだね。養子縁組で法律上は養親と養子になる。養子と実子は法律上同じ権利だから、法律上の保護が強化されるよね。遺産分割協議でも法定相続人として相続分を主張できるんだってさ。

合わせて読みたい:普通養子縁組とは、相続との関係を解説【吾輩家族の相続事情】

12:だったら養子縁組最強説確定じゃん。

でも、デメリットもあるの。もしも、パートナー解消になったら、離縁の手続きがいるのよ。もし話し合いがこじれると家庭裁判所に申立てなくちゃいけないから、簡単な話じゃないんだよね。

合わせて読みたい:養子縁組は解消できるのか?離縁の概要と相続への影響を行政書士がい解説!        

13:まあ人生どこで何があるかわからないもんな。

そうだね。しかも、何らかの目的を達成するための養子縁組は効力を生じないという判例もあるから、養子縁組すいれば100%安全ってわけじゃないんだよね。

14:じゃあ、同性パートナーへの遺産を残すのは、公正証書遺言がベストってことになるね。

死因贈与契約という選択肢もある

最後に契約という手段を使って遺産をパートナーに遺す方法をお伝えします。遺言と似ているようですが、明確に違う部分もありますので、その性質を理解したうえでご自身に合った方を選択するとよいと思います。

もうひとつ考えられるのが、死因贈与契約だね。あたしも付喪神に教えてもらったばかりだけど。ざっくり言うと、「自分が死んだら財産をパートナーに譲ります」という契約のこと。

合わせて読みたい:死因贈与契約と遺言書はどちらが優先?いつ財産を渡すかによって手続きが違う!

15:それ、遺言とどう違うんだろ?

そうだよね、まとめるとこんな感じかな。

死因贈与契約は財産に関することしか決められない
⇒お墓のことなど、財産以外の内容を盛り込むことができない

一度に複数の相続は不可
⇒この財産はパートナーに、この財産は両親になどと複数の相続を一度にすることはできない

贈る側と受け取る側の双方の合意による契約
⇒財産の受け渡しになったとき、相続放棄のように拒否することができない(つまり借金などマイナスの財産が見つかっても拒否できない)

こう考えると、やはり公正証書遺言が一番ってのは間違いないかもね。あ、そろそろ付喪神が眠たくなってきたみたい。

16:トピ主さんも、付喪神が心配を減らしてくれて、こんばんはぐっすり寝れるかな?

そうだといいな。彼女が遣わしてくれたのかもね、この付喪神を。

同性パートナーの相続は対策が必要

以上、今回も付喪神のおかげで勉強になりました。時代は変わりつつありますが、まだまだ同性カップルのような新しい家族という形は法的には整備されていません。

ですから当然、そのままにしていると同性パートナーが相続に関与できないということにもなってしまいます。自分で方法を見つけて実行していく必要があります。

もしお困りの方は、横浜市の長岡行政書士事務所までお気軽にご連絡ください。

この記事を詳しく読みたい方はこちら:同性カップルの将来の相続について|法的な対策をパターン別に行政書士が解説!

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長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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