個人事業主が亡くなり、相続人が事業を引き継ぐ場合、「青色申告」もが引き継げるのか、疑問に思う方もいるでしょう。
そこで今回は、個人事業主の相続における青色申告の扱いや、必要な届出・提出期限・手続の流れについて解説します。個人事業主の相続で困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
青色申告は相続で自動的に引き継げるものではない
結論として、青色申告は、相続によって当然に引き継げるものではありません。
被相続人が青色申告の承認を受けていたとしても、その承認はあくまでも被相続人本人に対するものです。相続人が事業を引き継いだ場合でも、被相続人の青色申告の承認をそのまま利用することはできません。
そのため、相続人が事業を継続して青色申告をしたい場合は、相続人自身の名義で、改めて青色申告承認申請書を提出する必要があります。
相続に伴って事業をを引き継ぐ場合の青色申告承認申請書の提出期限
故人の事業を相続人が引き継ぐ際、最も注意したいのが、青色申告承認申請書の提出期限です。
提出期限は、被相続人が青色申告者だった場合と白色申告者だった場合で異なります。
被相続人が青色申告の場合
被相続人が青色申告の承認を受けていた場合、相続人の青色申告承認申請書の提出期限は、死亡日によって決まります。
- 死亡日が1月1日から8月31日までの場合:死亡日から4か月以内
- 死亡日が9月1日から10月31日までの場合:その年の12月31日まで
- 死亡日が11月1日から12月31日までの場合:翌年2月15日まで
相続発生後は、葬儀、遺産分割、金融機関の手続きなどで忙しくなりますが、事業を引き継ぐ場合は、青色申告の提出期限も意識しましょう。
被相続人が白色申告の場合
被相続人が白色申告者だったものの、相続人は青色申告したい場合の青色申告承認申請書の提出期限は、相続人が事業承継した日によって異なります。
- 1月16日以後に事業を承継した場合:原則として業務を承継した日から2か月以内
- 1月15日以前に事業を承継した場合:その年の3月15日まで
相続人が事業を引き継ぐ際の流れ
相続人が事業を引き継ぐ際の流れは、次のとおりです。
- 青色申告の承認状況を確認する
- 帳簿や決算書を確認する
- 事業を継続する相続人を決める
- 帳簿や証憑を引き継いで保管する
- 開業届・青色申告承認申請書などを提出する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
関連記事:個人事業主が亡くなったらどうする?相続手続の全体像を行政書士が解説!

青色申告の承認状況を確認する
最初に確認すべきなのは、被相続人が青色申告者だったかどうかです。
過去の確定申告書、青色申告決算書、税務署への提出書類、会計ソフトのデータなどを確認しましょう。青色申告決算書が作成されていれば、青色申告をしていた可能性が高いと考えられます。
しかし、過去に青色申告をしていても、取りやめ手続きをしていたり、承認が取り消されていたりするケースもあります。不明な場合は、税理士による閲覧申請や所轄税務署に確認することが大切です。
帳簿や決算書を確認する
被相続人の帳簿や決算書も確認しておきましょう。
青色申告では、一定の帳簿作成や保存が求められます。相続後に事業を引き継ぐ場合、過去の売上、経費、売掛金、買掛金、減価償却資産、借入金などを把握する必要があります。
帳簿が整理されていないと、相続人が事業の実態を把握できず、取引先への支払い漏れや売掛金の回収漏れが発生する可能性もあります。準確定申告や相続税申告にも関わるため、早めに資料を集めておきましょう。
事業を継続する相続人を決める
複数の相続人がいる場合は、誰が事業を引き継ぐのかを決める必要があります。
個人事業は会社の株式のように、事業そのものが明確な形で承継されるわけではありません。実際には、事業用資産、屋号、取引先との関係、従業員、許認可、在庫、設備などを誰が引き継ぐのかを整理する必要があります。
事業を継続する相続人が決まらないまま時間が経つと、青色申告承認申請書の提出期限を過ぎてしまう可能性があります。事業を続ける意思がある場合は、相続人間で早めに方針を決めましょう。
帳簿や証憑を引き継いで保管する
事業を引き継ぐ場合は、帳簿や証憑も適切に引き継ぐ必要があります。
領収書、請求書、契約書、通帳、クレジットカード明細、売上台帳、仕入台帳、固定資産台帳などは、税務申告や税務調査で確認される可能性があります。
被相続人の事業期間に関する資料であっても、相続人が準確定申告や相続税申告に対応する際に必要になることがあります。資料を処分せず、保管場所を確認しておきましょう。
開業届・青色申告承認申請書などを提出する
相続人が事業を引き継ぐ場合は、相続人自身が新たな個人事業主として開業届や青色申告承認申請書などを提出する必要があります。
先述したとおり、被相続人が開業届を提出していたとしても、それは被相続人本人の届出であるためです。
屋号や事業内容をそのまま引き継ぐ場合でも、事業主が変わる以上、税務上は相続人が新たに事業を開始したものとして扱われます。
先述した期限内に、しっかり提出できるように準備を進めましょう。
なお、許認可が必要な事業の場合、相続発生に伴って、何らかの継承手続きが必要になることがあります。※相続による承継ができない許認可の場合、後継者が新たに許可を取得しなければなりません。
個人事業主の相続に伴う、許認可の扱いについては、下記の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
関連記事:個人事業主の許認可は相続で引き継げる?必要な確認と注意点を行政書士が解説!

事業を引き継がない場合はどうする?
相続人が事業を引き継がない場合は、青色申告を引き継ぐための手続は不要ですが、事業の廃止に関する手続きが必要になります。
たとえば、税務署には「廃業届」を提出します。また、事業に伴う債権(売掛金など)・債務(買掛金など)についても、しっかり清算しなければなりません。
個人事業主の死亡に伴う、廃業に関する手続については、下記の記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてみてください。
関連記事:個人事業主が死亡した場合の廃業届の出し方|相続人が確認すべきポイントを行政書士が解説!
個人事業主の相続は税理士・行政書士などの専門家へ相談!
個人事業主の青色申告は、相続人が事業を引き継ぐときであっても、自動的に引き継げるものではありません。
相続に伴って事業を引き継ぐ場合は、相続人が改めて青色申告承認申請書を提出する必要があります。
また、個人事業主がお亡くなりになった場合、青色申告の承認申請以外に、少なくとも下記のようなことに対応しなければなりません。
- 死亡届の提出
- 相続人の調査
- 相続財産の調査(プライベートな資産・事業用の資産の両方)
- 遺産分割協議(遺言書がない場合)
- 準確定申告(亡くなった方の所得について、相続人が代わりに行う)
- 個人事業者の死亡届出書(亡くなった方が消費税の課税事業者だった場合に必要)
- 取引先・従業員・賃貸借契約への対応
- 許認可の引継ぎ
参考:個人事業主が亡くなったらどうする?相続手続の全体像を行政書士が解説!
これらに相続人の方々だけで対応するのは、非常に大変でしょう。そのため現実的には、税務関連のことは税理士へ、相続人調査や財産調査、遺産分割協議書の作成、許認可関連のことは行政書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
横浜市の長岡行政書士事務所では、税理士とも連携し、個人事業主だった方の相続手続をサポートしております。初回相談は無料ですので、何かお困りのことがある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

