「家族が亡くなったらすぐに口座が凍結された!」なんて話を聞いたことはないでしょうか。
実際、相続が開始されたら、銀行や信用金庫などの金融機関口座が凍結されてしまいます。
では、口座の凍結は死亡届の提出と同時に行われるのでしょうか。今回は口座凍結のタイミングについて、相続実務に精通した行政書士の立場から解説します。
死亡届の提出と銀行口座凍結について、どのような点に注意していけばいいか、「座談会風」に一緒に考えてみましょう。意外と知られていない死亡との口座凍結の謎について、相続に直面しているAさん、Bさん、Cさんに話し合っていただきました。
死亡届とは
死亡届とは、家族が亡くなった際に届け出る、公的な書類です。
「死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは、その事実を知った日から3か月以内)」に提出する必要があります。
死亡届と銀行凍結は関係ない
では、死亡届が提出されたら、すぐに銀行などの口座が凍結されるのでしょうか?
結論として、死亡届と銀行凍結(口座凍結)は無関係です。
A「よろしくお願いします。身内が亡くなった瞬間、いきなり口座凍結されたら、たまりませんよね」
B「まったくですよ。それこそ、私たちの背筋が瞬間凍結しますよ」
C「うまいですね(笑) なんでもAさんは、死亡届提出後の口座凍結のタイミングについて行政書士さんに相談したんですって?」
A「はい。なので、答えは知っています(笑)」
B「ずるいなあ(笑)」
A「結論から言うと、死亡届を提出したからといって、すぐに銀行口座が凍結されることはないそうです」
C「よかった…」
B「でもなんで? そういう情報って、共有されたりしないのですか?」
A「死亡届を扱う行政は、民間企業である金融機関に情報を提供することはないんです。だから、自動的に凍結されることは考えられないんですよ」
銀行口座が凍結するタイミング
B「じゃ、銀行口座はどのタイミングで凍結になるんだろう?」
被相続人の死去は、基本的には遺族側から銀行側へと報告をすることで伝わります。
銀行間で顧客の死亡情報を共有することもないので、凍結を依頼したい場合は、各金融機関に手続きを依頼する必要があります。
つまり、銀行口座は、銀行が被相続人の死去を知った時点で凍結されるということです。
A「でも、地方では地方新聞紙のおくやみ欄に死亡に関する情報が掲載されることがありますよね? それを見た金融機関側がすぐに凍結することもあったみたいです。最近では金融機関側が自己判断でこうした凍結を行うことは少ないようですけど」
B「なんで少ないんですか?」
A「訃報の情報を得たら、凍結を確認するためにご家族に連絡をするからですね」
C「でもさ、銀行口座の凍結をされると、口座からの引落しや預金の引き出しができなくなるから、残る家族が困りますよね」
B「そうそう、引き落としが止められてしまったりすると大変だ」
A「確かに。でも銀行側にも事情はあるんですよ。例えば、勝手に引き出されてトラブルになったりとかね」
口座凍結の解除方法
相続発生により口座の凍結が行われたとしても、手続きを行えば解除はされます。解除方法とは主に以下のとおりです。
- 銀行側が指定する必要書類を整える
- 審査を受ける
- 払い戻し・名義変更(凍結解除)
B「よかった、解除されるケースもあるんだね」
C「そりゃそうですよ、永久凍土じゃないんだから」
銀行側が指定する必要書類を整える
被相続人が亡くなったことを伝えると口座が凍結されますが、そのタイミングで金融機関から口座凍結解除の案内が行われることもあります。
来店を要求されることもありますが、電話で必要書類を案内してくれることも珍しくありません。必要書類を聞いて、すべて収集しましょう。一般的に必要となる書類は次のとおりです。
相続人が1人の場合 | 相続届(銀行ごと異なるため注意) 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) 相続人の戸籍謄本相続人の印鑑証明書 |
相続人が複数の場合(遺産分割協議により相続する場合) | 相続届(銀行ごと異なるため注意) 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) 相続人全員の戸籍謄本 相続人全員の印鑑証明書 遺産分割協議書 |
遺言書がある場合 | 相続届(銀行ごと異なるため注意) 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) 口座を相続する相続人の戸籍謄本 口座を相続する相続人の印鑑証明書 遺言書 |
なお、戸籍謄本については法定相続情報一覧図で代用することもできます。
審査を受ける
書類提出後、金融機関側で審査が行われます。口座凍結解除までの期間は2〜3週間を見込んでおきましょう。
払い戻し・名義変更(凍結解除)
被相続人の口座を解約し、預金の払い戻しを受ける場合、相続人が指定した銀行口座に払戻し金が振り込まれます。また、被相続人名義の解約済み通帳も受け取ります。
被相続人の口座を引き継ぐ名義変更であれば、名義変更後の通帳を受け取ります。
これにより、凍結された口座が解除されたことになります。
相続が発生したら考えるべき口座凍結対策
相続が発生したら考えるべき口座凍結対策としては、次のような例が挙げられます。
- 銀行の仮払い制度を利用
- 銀行凍結前の引き出し
- 生命保険の受取人が保険金を受領
それぞれ詳しく見ていきましょう。
銀行の仮払い制度を利用
A「凍結が解除される前に、預金の引き出しをする必要がる場合は、仮払い制度もあるみたいなんです」
B「出張に行く前みたいな?」
A「あはは。2019年7月1日からスタートした制度で、相続預金の払戻し制度とも呼ばれています。例えば、相続人が単独で払い戻しする場合は、こんな感じです」
家庭裁判所の判断が不要な方法
・同一の金融機関からの払い戻し上限:150万円
・相続人単独で払い戻しできる額:預金額×3分の1×相続人の法定相続分
家庭裁判所の判断が必要な方法
・家庭裁判所が認めた額
※共同相続人の利益を害さない範囲程度
銀行凍結前の引き出し
C「うーん。うちの場合は、入通院や介護に関する費用の支払いもけっこう多そうだし、葬祭費用、遺品整理とかを考えると、仮払い制度で対応できるお金だけでは、やっぱり心配だな…」
A「相続人でこうした費用を支出することが難しい場合には、相続人全員に確認した上で、凍結前に引き出しをすることも可能性としてはあるでしょうね。相続人全員の同意を得ているなら、相続トラブルは起こりにくいでしょうから」
B「なるほどね、そりゃそうだ」
なお、凍結前の引き出しには、相続放棄ができなくなるなどのリスクもあることは覚えておきましょう。具体的な相続手続きについては、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
横浜市の長岡行政書士事務所でも、相続発生後にどのように行動するべきかといったアドバイス、さらにはその後の相続手続きまで一貫して対応可能です。
生命保険の受取人が保険金を受領
A「あと、被相続人が加入している生命保険について、死亡保険金の受取人を確認しておくことも対策になりますね。この場合、受取人に直接保険金が支払われるため預貯金口座の凍結とは関係なく、受領できますから」
C「さっそくチェックしてみよう」
相続発生後の銀行手続きも行政書士へ相談できる
相続が発生し、銀行口座が凍結してしまうと、お金を引き出せずに困ってしまう方も多いでしょう。
遺産分割協議書を用意し、戸籍謄本なども収集し、さらに銀行所定の書類も用意すれば凍結解除が可能ですが、これらの手続きには手間がかかります。
とくに遺産分割協議書の作成のためには、そもそも法定相続人をすべて特定するなど、法律的な知識も必要です。
銀行口座の凍結解除を含めた相続手続きは、行政書士へも依頼できます。
横浜市の長岡行政書士事務所は面倒な相続手続であっても、印鑑1本でスムーズに実現することが特徴です。
口座凍結解除を含め、相続手続きを手間なく完了させたい方は、ぜひ長岡行政書士事務所へご相談ください。初回相談は無料で対応しています。