遺産分割協議の「ハンコ代」に贈与税はかかる?相場とあわせて解説!【税理士監修】

遺産相続のかかるハンコ代とは 相場や注意点を行政書士が解説!【必察仕事人!一本判子の慎太郎】 相続手続の基礎
相続手続の基礎

相続時に自分が財産をもらう代わりの謝礼に、「ハンコ代」を支払うということを聞いたことがないでしょうか?

ハンコ代のやり取りは慣習的に行われていますが、贈与税がかかるケースもあるため注意しなければなりません。

この記事では「ハンコ代」に贈与税にかかるケースや、ハンコ代の相場について解説します。

この記事の執筆・監修者
大岡 俊明(税理士)

税理士。神奈川県横浜市のクロスウィード税理士事務所代表。メンターキャピタル税理士法人で13年間実績を積み、2024年にクロスウィード税理士事務所を開業。相鉄線沿線を対象に、相続税申告のなかでも遺産総額が1億円以下の相続税申告に特化していることが特徴。

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ハンコ代とは

ハンコ代とは、遺産分割協議時に、遺産の取り分が少ない相続人などに支払うお礼のことです。法的な義務は特になく、「ハンコ代」という呼称も法的なものではなく慣習から来る呼び名です。

被相続人の配偶者や子など家族が遺産分割協議を行うとき、円満に協議が進まないケースもあります。でも、場合によってはハンコ代を支払うことで協議を円滑にまとめていけることもあります。

依頼人「税理士さん、ハンコ代ってのは、印鑑を買うお金ってことじゃなかったんですね」

税理士「確かに印鑑そのものを買ってもハンコ代と言えるかもしれませんが、少し違うんです。遺産分割協議で相続人全員が合意をして締めくくるには、全員が実印を押さなきゃいけないんですよ」

遺産分割協議の成立は実は結構大変です。それに法定相続分で決まっていたとしても、具体的にどのような内容で相続をするのかを決めなければなりません。そのためには多くの手間をかける必要があります。

依頼人「遺産分割協議では、法定相続分が決まっていて、決まった範囲で分割して終わりじゃないのでしょうか?」

税理士「そもそも協議ですから、話し合いで相続人の取り分を決めていく場なんですよ。ってことは、受け取らない人がいても問題ないですし、『不動産は母、預金は兄、証券関係は私』というふうに財産の種類別に分配してもいいんです」

合わせて読みたい:法定相続をする時も遺産分割協議書の作成は必要?行政書士が解説!

依頼人「じゃ、話は案外まとまりやすいってものではないのでしょうか

税理士「ところがそう簡単にはいかないことが多いのです。」

依頼人「確かにお金が絡んでくるとまとまらないこともありそうですね」

税理士「遺産分割協議の内容によっては、相続人の誰かが『ちょっと待った!』状態になって、すんなりいかない場合もあるんです」

依頼人「相続人同士でもめるのは嫌ですね」

協議をまとめるために、直接相続とは関係のないところで謝礼を用意しておくことは別に問題がありません。ハンコ代はそういった円滑に物事を進めるための潤滑油として有効な選択肢だと言えます。

ハンコ代の相場

では、ハンコ代の相場はあるのでしょうか?

税理士「あらかじめお礼としてハンコ代を用意しておけば、『取り分が少なくてもお礼をくれたから納得しましょう』となるケースもあるってわけなんです」

依頼人「そのハンコ代ってのは、だいたいどのくらい払うものなのでしょうか」

税理士「相場で言うと、約5万~30万程度ってところですかね。財産によりますが、高額の相続財産があるならもっと額が上がることもあります」

依頼人「ケチケチしてたら、収まるものも収まらないってことですね」

ンコ代に贈与税がかかるケース

ハンコ代は法律的に考えると贈与に該当します。

そのためハンコ代に税金、とくに贈与税がかかる可能性があることは覚えておきましょう。

ハンコ代のやり取りによって発生する税金とのバランスを取って、結果的にうまくまとまる選択肢を取ることをおすすめします。

税理士「ハンコ代のやり取りが贈与と見なされる可能性があることには注意してくださいね。特に暦年贈与の非課税枠である「110万円」を超えてしまう場合には要注意です」

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ハンコ代にまつわる注意点

ハンコ代はあくまでも慣習。相場感覚もざっくりしていて掴みにくいため、支払う側の相続人は「本当に支払わなきゃいけないの?」と判断に困るケースもあります。

ここからはハンコ代にまつわる注意点についても紹介します。

ハンコ代を支払う義務はない

「ハンコ代は絶対に支払わないといけないの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。

実務的には、「必ずしも支払わなくてよい」が答えです。

ハンコ代とは要するに遺産分割に係る段取りの一種です。あらかじめ渡しておくお礼の提案といった感じでしょうか。トラブルを未然に防ぐ、あるいはトラブルの長期化を防ぐためのものです。

依頼人「ハンコ代とは要するに遺産分割協議をスムーズに進めるための根回しの一種みたいなもんですよね。紛争を起こさないための下準備というか」

税理士「言い方はともかく、紛争の可能性があるなら、あらかじめお礼を提案しておくことで、調停や審判のリスクは避けやすいですよね」

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ハンコ代よりもコミュニケーションが大切

依頼人「ハンコ代がお礼の提案ってのは、角が立たない、いい言い方ですね」

税理士「特に介護や生活資金などの面で支えてくれた家族が、少ない遺産で相続に同意してくれそうなケースでは、これまでのお礼の意味も込めてハンコ代をお渡しすることで双方気持ちよく協議を終えられたりもしますから」

遺産分割協議において一番大切なのはやはりコミュニケーションです。ハンコ代を渡しておけばそれでいい、というわけではありません。逆に、法的な効力がないゆえに、「ハンコ代さえ渡しておけば」と考えていると厄介な問題になることがあります。

依頼人「もし『ハンコ代はいらない』と言っているのに無理矢理ハンコ代を渡そうとするとどうなるんだい?」

税理士「『私の気持ちはお金では買えない』と、逆に敵愾心を持たれる可能性もありますね。そこはもう気持ちの問題なんですけど、ちゃんとコミュニケーションをとることが大事ですよ」

依頼人「相手の性格にもよりますね」

税理士「そうなんです。『支払ってもらって当然』と思っている相続人に支払いをしなければ怒りを買うでしょうし、性格によってどこに地雷があるかわからないんです。ですから、トラブルになりそうならハンコ代ではなく、代償分割として協議をしたほうがいいこともあります」

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ハンコ代によるトラブルを防ぐ方法

ハンコ代は便利な方法ですが、どちらかといえばそれはコミュニケーションの一種として行われる行為です。

やはり協議が難航しないよう、あるいは難航したときのため、他に有効な手段を知っておいた方が無難でしょう。

ハンコ代によるトラブルを防ぐ方法としては、次の2つが挙げられます。

  • 遺言書
  • 遺産分割調停

遺言書

相続において最も話をまとめやすいのは、やはり遺言の存在です。

遺言があれば、遺産分割協議すらする必要もなくなります。そのくらい、遺言というものは相続において明確な指針となるのです。

税理士「生前に思いを込めて書かれた遺言書を見て、『あえてモメてやろう』と考える人は少ないですから」

依頼人「そりゃそうですね。それでワザとやられたらたまったもんじゃないですよね」

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遺産分割調停

仮に遺言もない、ハンコ代の話が進まず遺産分割協議もまとまらない、となっても、裁判所を利用して紛争を解決することができます。これが遺産分割調停です。

しかし多くの場合、裁判所に申し立てるというのは勇気がいる選択肢になります。最後の手段として把握しておくのがよいでしょう。

税理士「どうしてもトラブルを回避できなさそうなときは、遺産分割調停を検討すべきでしょう。遺産分割調停は公平な立場の調停委員がおり、冷静な話し合いを進めやすいですから。いずれにせよ、困る前に専門家への相談が一番ですよ」

依頼人「遺産分割調停はできれば避けたいので、そうなる前に相談させていただこうと思います」

税理士「はい、私ども士業にお任せください」

遺産相続のハンコ代で悩んだら専門家に相談

以上、今回は遺産分割協議におけるハンコ代についてのお話でした。ハンコ代というものがどういうもので、そしてどのように活きてくるのか、わかっていただけたでしょうか。

やはり感情と利害が絡む場面でありますから、話し合いは大変です。ほんの少しのアイデアで、それがスムーズに進むならとてもよいことだと思います。

もしハンコ代についてどうすればいいか困ったら、初回相談無料、経験豊富な行政書士からアイデアをもらってみませんか。

横浜市の長岡行政書士事務所へお気軽にご相談ください。

また、ハンコ代のやり取りで贈与税が発生するかどうかは、税理士に相談しなければなりません。長岡行政書士事務所は信頼できる税理士事務所と提携しています。そのため、贈与税はもちろん相続税について相談したい方には、税理士を紹介することも可能です。

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