「私は養子なんだけど、私の子は養父の遺産を相続できるのでしょうか」
「養子縁組のタイミングってなぜ重要なのでしょうか」
「配偶者が私の父母の養子になったのですが、相続にどう影響してくるのでしょうか」
皆様の周りに養子を迎えた、または養子になったという方はいらっしゃいますか?
実は、日本は年間8万件近くの養子縁組が成立する「養子大国」です。
日本より人口が3倍も多いアメリカでの養子縁組が年間11万件であることを考慮すると、いかに日本で養子縁組が身近な存在であるかがわかるかと思います。
今日のコラムでは、育ての親と養子、そしてその養子の子の相続について解説していきたいと思います。
養子縁組とは
そもそも養子縁組とは養親と養子の間に法律上の親子関係を作り出す制度のことを指し、日本には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類が存在します。
- 普通養子縁組:生みの親との法律上の親子関係を残したまま、育ての親との親子関係にも入る
- 特別養子縁組:生みの親との親子関係は消滅し、育ての親とのみの親子関係となる
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実子も養子も法律上は同じ扱いになる
養子縁組をすると、法律上の養子と実子の扱いは同じになります。
例えば夫Aと妻Bは再婚で、妻Bには前夫との間に生まれた子Cがいたとします。
やがて夫Aと妻Bの間に子Dが生まれると、子DはAB夫婦と血の繋がりがある実子なので、夫Aが亡くなった時は相続をうけることができます。
連れ子は養子縁組しないと相続できない
しかし子Cは夫Aとは血の繋がりがないので、夫Aが亡くなっても相続を受けることができません。
このような事態を避けるため、夫Aと子Cとの間で養子縁組をすることで養子Cと実子Dの両方とも法律上は同じ扱いとなり、夫Aが亡くなった場合はどちらも相続を受けることができるようになります。
ここで注意していただきたいのは、妻Bと子Cは元々親子なので、妻Bが亡くなった場合は夫Aと子Cの養子縁組に関係なく子Cは妻Bの相続を受けることができることです。
このように養子縁組により親子関係を作り出し、相続に影響を与えることが可能となります。
養子の子は養親の相続を受けられるのか?
それでは養子に子が生まれた場合、養親である祖父母の相続を受けることができるのでしょうか?
養子の子と代襲相続の関係
先ほどの例を用いて説明していきます。
夫婦ABの養子Cと実子Dに法律上の違いがないことは先ほど説明いたしました。
この養子Cがやがて大きくなりEと結婚し、夫婦ABからみると孫にあたるFが生まれたとします。
そして不慮の事故により養子Cは亡くなってしまい、しばらくして夫Aも亡くなりました。
夫Aの遺産の相続人は妻Bと実子D、そして養子Cになりますが、養子Cは夫Aより早く亡くなってしまっています。この場合、孫Fは養子C(孫Fから見ると父にあたる)に代わって相続を受けることができます。
このように世代を飛び越えて発生する相続を「代襲相続」と言います。
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養子縁組日の後に生まれた養子の子は代襲相続する
では、この養子Cが夫Aと養子縁組をする前にEと結婚して既にFが生まれていたらどうなるでしょう。
夫Aとの間に養子Cは養子縁組をしましたが、不慮の事故により養子Cは亡くなり、しばらくして夫Aも亡くなってしまいました。
この場合、夫Aの遺産はFに相続されません。
Fが生まれたのがC(Fから見ると父にあたる)と夫Aが養子縁組をする前なので、夫AとFの間に法律上の家族関係が存在せず代襲相続が発生しないからです。
相続と養子縁組を考える時はタイミングが大切、と言われる理由がお分かりいただけましたでしょうか。
配偶者が義親と養子縁組をしていた場合の相続関係
それでは、少し特殊かと言えるかもしれませんが配偶者と自分の親が養子縁組をしていた場合に発生したケースを解説をいたします。
具体的にイメージしていただきやすいのは、夫が妻側の家名や家督を継ぐため、結婚後に夫が妻の両親と養子縁組をするケースではないでしょうか。
他にも、妻が夫の両親の介護に献身的に尽くしてくれたので、報いるためにも妻と夫の両親との間で養子縁組を結ぶケースが考えられます。
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養子縁組日前に生まれた養子の子は代襲相続しない|原則
さて、このケースにおいて何が特殊かというと
「親が祖父母と養子縁組する前に生まれた子なのに、実際は祖父母の孫でもあるので亡くなった親からの代襲相続を認め相続が発生した」 という点です。
それでは例を用いて説明していきましょう。
夫Aと妻Bは結婚し、子Eが生まれました。
その後、妻Bは夫Aの両親CとDと養子縁組をしました。
妻Bは夫の両親CとDにとって、息子の嫁でもあり養子でもあるという状態です。
数年後に夫Aが不慮の事故で亡くなりその後Cが亡くなったとすると、Cの遺産の相続人は配偶者D、養子となった妻B、そして夫Aの代襲相続を受ける子Eとなります。
ここまでは比較的すんなりと説明がつきますが、複雑になってくるのは 「夫Aでなく妻Bが亡くなり、その後Cが亡くなったケース」です。
Cの遺産の相続人は、
- 配偶者であるD
- Cの実子である夫A
ですが、子Eはどうでしょう。
C―>B->Eという流れで考えると、C->Bが親子関係になる前に子が生まれているので子Eは相続人になれません。
しかしC->A->Eと言う流れで考えると、C->Aは親子、そしてA->Eも親子として血の繋がりが存在します。そしてAが健在であるのでCの遺産はAに受け継がれてそこでストップし、下の代のEに代襲相続は起きないはずです。
養子縁組日前に生まれた養子の子でも代襲相続する|例外
裁判所の判断は以下の通りです。
養子縁組前の養子の子が養親の実子の子でもあって、養親の直系卑属にあたる場合には、養親を被相続人とする相続において、養子の子は養親より先に死亡した養子を代襲して相続人となる。
(大阪高裁平元8.10判決)
つまりEは「Bが養子縁組前に生まれた子だがAを通して血のつながった孫でもあるので」Bの遺産相続分を代襲相続する。
ということになります。
よってこのケースでCの遺産が4,000万円の預金で遺言が残ってなかったすると、遺産相続分は
- Dが配偶者としての2分の1の遺産を相続:2,000万円
- Aが直系卑属(子:実子)として4分の1の遺産を相続:1,000万円
- EがBの直系卑属(子:養子)としての遺産4分の1を代襲相続:1,000万円
となります。
ざっくりまとめると、 「養子縁組前の子だけど血が繋がっているから、遺産を後代の家族に受け継がせていくという代襲相続の本旨とはずれてないので、代襲相続を認める」という判例だと言えます。
養子縁組が関連している相続は注意が必要
さて、ここまで養子の子が相続を受けられるかどうかは養子縁組のタイミングが大切であること、また養子縁組の子の特殊なケースを解説してきましたが、養子縁組の場合の相続は注意が必要となります。
相続でお金が係わってくると実子と養子の間で感情のこじれも生じるかもしれません。
特に実子にとっては自分の取り分が減ってしまうかもしれませんので、養子縁組前に理解を求めておく必要があります。
また、実子の配偶者を養子縁組した後で実子が離婚した場合、養子縁組の解消には相手の同意が必要となる離縁という手続きをおこなわなければならず、トラブルに発展する可能性があると言えるでしょう。
できれば法律の専門家のサポートを得て、遺言を残す等の準備をし円滑な相続を達成するよう心掛けてください。
長岡行政書士事務所は相続の経験が豊富にあり、相談者様の負担を減らすべく印鑑一つで終了する相続を目指しています。
ご不明点や不安を感じられている場合は、是非当事務所にご相談ください。