死亡者消除とは?失踪宣告との違いを行政書士が解説!

inheritance 相続に関連する法制度
相続に関連する法制度

今、悩まれている方はお問い合わせください

長岡行政書士事務所

まずは初回0円相談でお悩み解決!

ご予約・お問い合わせはこちら

平日9:00~21:00(土日祝日予約制)

『戸籍に死亡者消除って書いてあった!死亡者消除ってなに?』
『死亡者消除の手続きをしていれば相続はできるの?』
『死亡者消除と失踪宣告の違いが知りたい』

 高齢化が進んだ日本において、高齢者の孤独死や身寄りのない高齢者の増加に伴って、所在不明者や生死すら不明といったケースが多数存在していることが判明しています。

 100歳以上の高齢者で戸籍上生存しているとされている方は約20万人以上、また、驚くことにこの20万人のうち7万人は120歳以上、800人は150歳以上とされています。

この100歳以上で戸籍上生存しているとされている20万人の中には戦争などによって生死不明のままに死亡届が提出されていなかったり、移民先で死亡したにもかかわらず日本において死亡届が提出されていなかった、といったケースが多く含まれているそうです。

このように戸籍上まだ生存していることになっている状態が続くことで、相続ができないことはもちろん、年金の不正受給などさまざまな問題が生じています。

そこで死亡者消除という制度が有効な手段となります。

今回は死亡者消除について、失踪宣告との違いについても合わせて解説します。

死亡者消除は戸籍上死亡したとみなす制度

100歳以上の高齢者の方で、所在不明の方が全国には多くいらっしゃいます。

平均寿命から考えると、100歳以上、特に120歳や150歳といった方々はすでにお亡くなりになっている可能性が高く、戸籍上ずっと生存しているものとしておくことは、行政上様々な不都合を生じさせるため、適切ということはできません。

 そこで、戸籍実務において100歳以上の高齢者で、所在不明の方について死亡した可能性が高い場合においては、市区町村長が法務局長の許可を得て、その権限において死亡したものとして戸籍から該当の高齢者の戸籍を削除することが認められています。

 これが『死亡者消除』です。

死亡者消除された場合の戸籍の記載

死亡者消除の場合、戸籍には以下のように記載されているケースが多いようです。

死亡者消除の戸籍への記載例

高齢者につき死亡と認定令和◯年〇月〇日許可同月〇日除籍

そのほか、

死亡者消除【死亡者消除の許可日】令和〇年〇月◯日【除籍日】令和〇年〇月〇日

高齢により死亡と認定

上記のような記載がある場合には、死亡者消除があったと考えられます。

死亡者消除の注意点

死亡者消除において注意が必要なのは、死亡者消除は”あくまでも戸籍上の整理”であるという点です。

裁判所の見解によれば、死亡者消除は失踪宣告のような法的な効果が生じるものではなく、死亡者消除の記載によって相続の開始を認定することはできないとされています(松山家裁審昭和42年4月19日月家19巻11号117頁)。

以上のことから、例えば、死亡者消除の対象者が不動産を有していて、その者が死亡したとして相続登記の申請をしたいと思ったとしても、死亡者消除の旨が記載された戸籍に基づいて当該不動産の相続登記をすることはできません。

死亡者消除の対象者の方の相続手続きを進めるためには、死亡届を提出して、死亡した旨を戸籍に記載してもらう、あるいは、失踪宣告により死亡したものとみなされる旨を戸籍に記載してもらう必要があります。

このように死亡届の提出や失踪宣告のような手続きをしてからでなければならず、死亡者消除だけでは相続手続きを進めることは難しいのです。

死亡者消除も”死亡したとみなす制度”ですが、失踪宣告も”死亡したとみなす制度”です。

では、同じ”死亡したとみなす”制度であるにもかかわらず、なぜ失踪宣告は相続手続きができて、死亡者消除は相続手続きができないのでしょうか。

以下で死亡者消除と失踪宣告の違いについて見ていきたいと思います。

失踪宣告とは法律上死亡したとみなす制度

失踪宣告とは、生死がわからない行方不明の人に対して、要件を満たした場合に法律上死亡したとみなす制度のことです。

行方不明者がいる場合は離婚ができない

行方不明と聞いてもあまりピンとこない人も多いのではないでしょうか。

身近な話題ということはできない人も多いため、なぜこのような制度が必要なのか?と思われるかもしれません。

 では、悲しいことではありますが、ご家族が行方不明となった場合を想像してみてください。

例えば、配偶者が行方不明になった場合に、その行方不明の配偶者と離婚したいという状況になったとします。

 離婚は双方の意思に基づいて行う必要があるため、行方不明の相手方の意思を確認することはできないため離婚することができません。

一生配偶者の方が戻るのを待って一人でご家族を支えることは容易ではありませんね。

行方不明者の財産は勝手に処分できない

また、財産は行方不明となったとしても行方不明者であるご本人の物です。

家族とはいえ他の人の所有物を勝手に処分することは、感情論としては仕方がないと認められるかもしれませんが、法律上認められるものではない場合が多いです。

そうすると、行方不明者がお戻りになるまでいつまで経っても財産を処分することもできません。

このように、行方不明者をいつまでも待つとなると、再婚ができない、財産を処分することができない、といったように、残された家族は気持ち的にはもちろん法的に不安定な立場に置かれてしまいます。

そのため、一定の条件のもとに行方不明者を死亡したと取り扱う制度が”失踪宣告”です。

失踪宣告について、詳しくは以下のリンクからご確認ください。

合わせて読みたい:行方不明の相続人がいる場合の相続はどうしたらいいの!?失踪宣告とは何かを説明!

死亡者消除と失踪宣告の違い

死亡者消除と失踪宣告についてご説明をしましたが、一体何が違うのでしょうか?

いずれも”死亡したとみなす制度”でしたね。

では、次は死亡者消除と失踪宣告の違いについてみていきたいと思います。

目的が違う

まず、死亡者消除と失踪宣告の違いの1つ目は、”目的”が異なります。

死亡者消除と失踪宣告の目的は以下の通りです。

死亡者消除 ⇨ 戸籍の整理

失踪宣告  ⇨ 行方不明者の死亡

死亡者消除の目的

死亡者消除の目的は戸籍の整理、あくまでも行政側の便宜的な措置に過ぎません。

死亡者消除が行われると戸籍には死亡の記載がなされますが、あくまでも”戸籍の整理”という扱いになります。

生存していることが考えられれない年齢になっても死亡届が提出されない限り戸籍はいつまでも残り続けます。

そこで戸籍を整理する為に死亡者消除が認められています。

死亡者消除が行われたとしても”行政上死亡した”とみなされますが、”法律上は生存”しているということになります。

失踪宣告の目的

一方で、失踪宣告の目的は行方不明者の死亡です。

行方不明者は死亡が確認できない限り何十年経っても戸籍上生存しているということになります。

そこで一定期間生死不明の場合にご家族などの申し出によって死亡したとみなし、法的安定性を目的とする制度です。

失踪宣告では行政上死亡したとされることはもちろん、法律上でも死亡したとみなされます。

つまり、行方不明なため死亡の真否は不明ではあるが、実際に死亡したものとして扱うということになります。

対象者の年齢が違う

死亡者消除と失踪宣告の違い、2つ目は”対象者の年齢”です。

死亡者消除の対象年齢

死亡者消除の対象年齢ですが、行方不明者の年齢によって要件が異なります。

120歳以上

120歳以上の行方不明者については、以下の要件となっています。

  • 行方不明者が120歳以上
  • 戸籍の附票に住所記載なし

戸籍が簡単に消されてしまっては困るはずなのになぜこんなに要件が少ないのか・・・

それは、120歳以上の行方不明者であれば生存している可能性が限りなく低いと考えられるからです。

人の戸籍を勝手に消すにもかかわらず、『120歳以上の行方不明者が生きているはずがないから消す!』なんて横暴な上に失礼な話です。

しかし、日本でご存命中の最高齢者は115歳(2023年12月時点)だから許されると考えられているのです。

通常、行方不明者の高齢者を消除するためには親族等の調査も必要とされていますが、120歳以上の高齢者については特段の事情がない限り調査は不要となります。

100歳以上

100歳以上の行方不明者については以下のことが要件となります。

  • 行方不明者が100歳以上
  • 戸籍の附票に住所記載なし
  • 生存を証する資料が存在しない

現在日本には100歳以上の人が9万人いるとされています。

そのため、120歳以上の行方不明者とは異なり、親族等の調査が必要となります。

行方不明者の親族等が見つからなければ生存を証する資料は存在しません。

その場合、”生存を証する資料なし”として法務局長へ許可を求めることになります。

90歳以上、100歳未満の高齢者

最後に、90歳以上100歳未満の死亡者消除の要件は以下の通りです。

  • 行方不明者が90歳以上
  • 戸籍の附票に住所記載なし
  • 生存を証する資料が存在しない
  • 親族からの高齢者消除の申出あり

原則として死亡者消除は100歳以上の行方不明者です。

しかし、行方不明者の親族からの申出があった場合、90歳以上の行方不明者であっても死亡者消除の対象となります。

行方不明者の親族から申出があった場合も、生存を証する資料が存在しないかの調査は不要です。

親族からの死亡者消除の申出をするケースは多くあるわけではないかと思いますが、戸籍に残り続けているご親族がいらっしゃる場合には、親族からの申し出により死亡者消除を行うことも可能です。

失踪宣告の対象年齢

失踪宣告の対象となる行方不明者に、年齢要件はありません。

その代わり、行方不明期間に要件があります。

  • 普通失踪(※1):7年
  • 特別失踪(※2):1年以上

※1 普通失踪とは・・・行方不明者が生死不明のまま7年間を経過し、親族などの請求によって家庭裁判所が失踪宣告をすること。失踪宣告されることによって死亡したとみなされる。

※2 特別失踪・・・戦争や船の沈没などに遭遇し、その後1年間生死不明となった場合に原因となった事故や戦争等の危難が去った時点で死亡したとみなされる。

たとえ行方不明者が100歳、120歳、150歳・・・何歳であっても行方不明期間の要件を満たしていなければ失踪宣告を利用することはできません。

ただ、行方不明期間を満たしていれば10歳でも20歳でも失踪宣告をすることが可能です。

相続の開始時期が違う

死亡者消除と失踪宣告の違い、3つ目は”相続の開始について”です。

死亡者消除されたとしても相続は開始しない

行方不明者の戸籍に死亡者消除が記載されたとしても相続は開始しません。

これは、死亡者消除はあくまでも戸籍上の整理であって、行方不明者を法的に死亡したとみなす制度ではないため、当該行方不明者に死亡の効力は発生しないからです。

したがって、行方不明者が死亡していない以上、死亡者消除されても相続は開始しません。

失踪宣告によって相続が開始する

失踪宣告によって行方不明者の相続は開始します。

なぜなら、失踪宣告の審判が確定すると、行方不明者は法的に死亡したとみなされるからです。

行方不明者の戸籍にも”死亡とみなされた日”が記載されます。

そのため失踪宣告をすることで相続手続きを行うことができるようになります。

したがって、行方不明者の相続を開始させたいのであれば、失踪宣告の申し立てをしなければなりません。

取消方法が違う

高齢者消除と失踪宣告の違い、4つ目は”取り消し方法”です。

死亡者消除は届出によって訂正できる

死亡者消除の記載がされた後に、行方不明者のしぼうが確認されたり失踪宣告が確定することも想定されます。

そして、行方不明者の死亡届や失踪届が提出された場合、死亡者消除は訂正されます。

訂正は市役所等の手続きとして訂正されるため、届出人が何かしなければならないということはありません。

失踪宣告を取り消すためには審判が必要

失踪宣告の審判が確定した後に行方不明者の生存又は死亡が確認される場合もあります。

行方不明者の生存(死亡)が確認されたとしても、自動的に失踪宣告の記載は削除されません。

失踪宣告を取消すためには、家庭裁判所に失踪宣告の取消しを申し立てる必要があります。

そして、取消しの審判が確定すれば、戸籍から失踪宣告の記載を削除することができます。

”死亡者消除=相続開始”ではない

今回は死亡者消除とはなんたるか、から失踪宣告との違いまでご紹介しました。

死亡者消除と失踪宣告はいずれも”死亡したとみなされる制度”です。

しかし似ているようで全く異なる点に注意が必要です。

ご家族の戸籍に”死亡者消除”という記載があればびっくりされると思います。

もっとも、死亡したとされているのね!じゃあ相続!と思われるかもしれませんが、そうではありません。

あくまでも行政手続き上、”便宜的に死亡したことにした”というだけです。

相続に関して、どのように手続きをしたら良いか不安な点がある場合や困りの際には、ぜひ弊所へご相談にいらしてください。

〈参考文献〉

常岡史子/著 新世社 『ライブラリ今日の法学=8家族法』

今、悩まれている方はお問い合わせください

長岡行政書士事務所

まずは初回0円相談でお悩み解決!

ご予約・お問い合わせはこちら

平日9:00~21:00(土日祝日予約制)

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

タイトルとURLをコピーしました