遺産分割協議はストップさせられる?条件を行政書士が解説!

遺産分割協議が出来なくなることとは?行政書士が解説!【異説・花咲かじいさんに学ぶ!】 相続に関連する法制度
相続に関連する法制度

複数人の相続人がおり、遺言書が無い場合には、「遺産分割協議」という話し合いが行われます。

実は相続の開始後5年以内であれば、遺産分割を禁止、すなわち協議の開始をストップすることもできます。

今回はこの遺産分割ができなくなる「遺産分割の禁止」について、禁止できる条件などを「童話風」に行政書士が解説します。

この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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遺産分割協議の開始はストップできる

故人が亡くなると相続が始まります。相続が始まると財産を誰が、何を、どのように、どれぐらい分けるか?ということを話し合う場が遺産分割協議と言います。

遺産分割協議は相続人全員の同意をしたうえで進めていく訳ですが、遺産分割協議を5年以内の期間で禁止、すなわちストップすることもできます。

合わせて読みたい:遺産分割協議とは|目的や条件・注意点を行政書士が解説!

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むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

2人の飼っていた愛犬、シロが「ここ掘れわんわん」と小判を探り当て、2人はすっかり大金持ち。

その姿を見ていた神様が、ご褒美にシロを人間にしてくれました。

おじいさんとおばあさんはシロの成長を見守りながら幸せに暮らし、やがて天国へと旅立っていきました。

遺されたシロは、おじいさんの遺言書がきっかけとなり、なんと行政書士になりました!

実家を事務所に改装し「シロ行政書士事務所」として、今日も村人たちの相談に乗っています。

最近、シロの友人でもある隣村の佐吉さんが、新しいアメリカンバイクを買ったということで、ドカドカと大迫力のエンジン音を響かせて、事務所にやってきました。

シロ「あれ、佐吉ちゃん。これまたずいぶんハンドルの位置が高いバイクだね。ほぼバンザイしているようになってるんじゃないの」

佐吉「おう、相続でいくらか入る予定だからよ。昔から親父がやりたかったことのひとつ、アメリカンバイクで西海岸をぶっ飛ばす夢を俺が代わりに叶えるんだよ。つうわけで、遺産が入るのはまだだけど、先に買っちまったぜ」

シロ「西海岸? ここ日本だよ」

佐吉「だからよ、伊豆のよ、西側のよ、海岸だってよ、西海岸じゃねえかよ」

シロ「のんきだねえ。遺産分割協議だってまだなんじゃない? そういえば、こないだお姉さんのお富さんが来て、遺産分割の禁止の手続きをするって言ってたよ」

佐吉「えっ…禁止? ちょちょちょっとまて、シロ。遺産分割の禁止ってなんだよ?」

シロ「じゃ、ちょっと説明するね。とりあえず、西海岸に向かうよ」

佐吉「行くんじゃん」

遺産分割協議の開始をストップできる3つの理由

遺産分割が、具体的に禁止されるケースは、相続人の中に未成年者がいるケースなど主に3つです。

  • 相続人の中に未成年者がいるケース
  • 話し合いをしばらく保留した方が望ましいケース
  • 複雑な相続が予想されるケース

佐吉「なるほど、うちの場合は話し合いをしばらく保留した方が望ましいケースだな。ま、いつも明るく素敵な俺だけど、後ろにはいろいろ抱えているもんなのさ」

シロ「まあ、興味ないけど」

相続人の中に未成年者がいるケース

未成年が相続人となる場合、遺産分割協議の開始をストップできます。

民法第5条により未成年は法律行為ができません。

そのため未成年者が遺産分割協議に参加するとしたら、家庭裁判所に申立て、特別代理人を立てる必要があります。

これでは一般的な相続よりも手続きに時間がかかるため、未成年の成人が近い場合は、遺産分割協議の開始をいったん保留状態にすることもあるのです。

合わせて読みたい:未成年の遺産分割協議はどうなるの?ポイントと対策を行政書士が解説!

話し合いをしばらく保留した方が望ましいケース

相続人の関係性が複雑で、すぐに遺産分割協議の開始が難しいケースでは、話し合いをしばらく保留することもあります。

海外に住んでいる相続人が多いなどの場合も、このケースに該当します。

複雑な相続が予想されるケース

遺産分割において紛争が予想される場合や、養子縁組や内縁関係との間の子など、相続人同士の関係性が複雑な場合は遺産分割そのものを禁止することもあります。

また、高額の財産が多かったり、価値の判定が難しい遺産が多い場合も、下準備を丁寧に行うために禁止することがあります。

遺産分割を禁止する際の注意点

遺産分割協議でトラブルになってしまう場合、無理に協議を進めるのではなく、遺産分割の禁止によって冷却期間を置くことも考えられます。そこで押さえておきたい注意点もあります。

佐吉「でよ、遺産分割協議を禁止するつったって、いろいろ気をつけなきゃいけないこともあんだろ?」

シロ「まあ、いくつかあるね。こんなふうに」

  • 遺産分割協議を禁止しても相続税申告は必要
  • 相続税の各種特例が受けられない可能性もある

遺産分割協議を禁止しても相続税申告は必要

シロ「まず、遺産分割協議を禁止しても、相続税申告は延期できないんだよね」

佐吉「どゆこと?」

シロ「相続税申告は相続財産の種類や評価を特定して、正しく相続税を試算しなくちゃいけないんだ。いくら算数が苦手な佐吉ちゃんでもね」

佐吉「うっせえ。九九は覚えたぞ」

シロ「…でね、遺産分割を禁止していると、どのように相続税を申告すればいいのかわかんなくなっちゃうわけ。期限は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内なんだけど、結局わけわかんないまま期限を迎えちゃうんだよ。佐吉ちゃんのテストみたいに」

佐吉「…それは…ぐうの音も出ない」

シロ「相続税の申告は、法定相続分を相続したと仮定して相続税を算出して、ちゃんと申告をしなくちゃいけないから、気をつけないとね」

合わせて読みたい:相続税は誰が支払うの?基礎控除など様々な控除について横浜市の税理士が解説

相続税の各種特例が受けられない可能性も

佐吉「でもよ、遺産分割ができていないまま相続税申告ってできんのか?」

シロ「もちろんできるよ。でも、やめたほうがいいよ。配偶者控除や小規模宅地の特例など、相続税申告時にメリットのある控除や特例が受けられなくなる可能性もあるみたいよ」

関連記事:相続時の「小規模宅地等の特例」とは?土地の評価額が最大80%減額される制度を税理士が解説

佐吉「つまり大損ぶっこくってことだな…」

シロ「まあ、仮申告時に申告期限後3年以内の分割見込書というのを提出しておいて、遺産分割完了後の翌日から4か月以内に修正申告もしくは更生の請求をすることで特例が認められることもあるみたいだけどね」

遺産分割協議がストップすることを避けるコツ

遺産分割協議はやむを得ない場合はストップされることもありますが、相続税申告やトラブルの長期化の視点から見ると、できれば回避したいものです。

遺産分割協議がストップすることを避けるコツについても見ていきましょう。

生前に家族と話し合っておく

シロ「やっぱり一番は、生前の段階から家族で話し合いをしておくことだね。特に相続財産が多い場合には、相続税計算や申告にも深く関わってくるから。家族と生前からしっかり話し合っておくことで、自身亡き後の無用なトラブルを防げるし、何より納得感があることは大事だよね」

佐吉「そいつを親父が生きてた時に聞かせたかったぜ」

合わせて読みたい:トラブルのない家族でも遺言を書くべきか?遺言を書くべき背景と理由を説明!

遺言書を用意する

シロ「あとは遺言者がきちんと生前の段階から、相続手続きを整備しておくためにも遺言書を準備しておくのが一番なんだけどね。あえて遺言書で遺産分割を禁止したい場合は、付言事項にその趣旨を添えておくと相続人が慌てることもないから」

佐吉「ふうん。やっぱり遺言書ってすげえ大事なんだな。俺も、ちゃんと書くようにしよう」

シロ「その時は手伝うよ」

合わせて読みたい:相続で優先する遺言書の効力と種類とは?行政書士が分かりやすく解説!

相続手続きに悩んだら行政書士に相談できる

佐吉「なあ、シロ。ひとつだけ気になってんだけどよ。遺産分割の禁止で冷却期間を置いても、思うように再開できず、問題が長期化したらどうなるんだ?」

シロ「すぐに考えられるのは、禁止状態が続くことで、預貯金や株式が特定の人に帰属させられないため、使いたい財産があっても無断で使えなくなることかな」

遺産分割が出来なければ、財産の処分もできませんから、それは大変なことです。何らかの事情があり、遺産分割協議をストップすることも、それはそれで正解となることもあります。しかし可能であれば、やはり相続手続きは早めに終わらせたいものです。

相続手続きをどのように進めたらいいのかわからず、いっそ遺産分割協議をストップさせたいと思う方もいるかもしれません。しかし家族で遺産分割の方法をある程度決められているのであれば、遺産分割をストップするのではなく、専門家に依頼して相続手続きを進めたほうが後々は楽になるでしょう。

横浜市の長岡行政書士事務所は相続手続きを全般的にサポートしていますから、ぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。

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長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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