「いきなり警察から連絡があり孤独死があったって言われて、頭が真っ白になりました」
「身内が孤独死した場合、相続手続はどう進めたらいいの?」
「孤独死の相続手続では、なにか注意点がある?」
日本経済新聞に掲載された5月の記事によると、一人暮らしの自宅で亡くなった65歳以上の高齢者は年ベースに換算すると約6万8千人に上るとのことです。
また、孤独死が起きた場合にはその後の部屋の清掃や遺品の引き取りを含めた身辺整理が必要となってきます。 そして、相続手続も必要です。
あなたがもし孤独死の連絡を突然受けたとして、その人の遺産がもらえれば、言い方は悪いですが「棚からぼた餅」かもしれません。
しかし反対に、負担が発生することもあるでしょう。たとえば相続人に対して、孤独死した部屋の清掃をやってくれとか弁償を求められたら、払わないわないといけないのでしょうか。
このコラムでは、孤独死が発生するとどのような相続手続が必要になるのか、、そして自分が相続人になった場合に起きうるリスクを解説いたします。
なお、似たような言葉で「孤立死」があります。
厳密に使い分けると「孤独死」とは誰にも看取られることなく亡くなること、「孤立死」は社会から孤立し死後長期間放置されてしまうことを指しますが、このコラムでは簡素化のため孤独死に統一させていただきます。
孤独死が発生したあとの手続の流れ
実は孤独死でも普通の死亡でも、その後に発生する手続自体は変わりません。
法律に孤独死の場合のみを考慮した特別な規定はないのです。
孤独死が発生した場合、一般的には次のような流れで手続を進めます。
- 警察・役所などから連絡が来る
- 遺体の引き渡し
- 死亡届の提出・葬儀・火葬
- 相続人調査・相続財産調査
- 相続するかどうか判断する
- 相続手続(もしくは相続放棄の手続)
それぞれ順番に見ていきましょう。
警察・役所などから連絡が来る
孤独死が発見されるパターンは多々あります。
大家さんや管理会社が異臭や郵便受けからあふれ出るチラシを不審に思って通報したり、同僚がいつまでたっても出勤しないので家まで確認に来て発見されたり、または出入りのケースワーカーさんが定期巡回の際に発見したりですが、多くの場合は警察に通報が行き事件性の有無を確認されることになります。
何か事件に巻き込まれて亡くなったのであれば捜査の対象になりますが、病気等の自然死であれば事件性ナシということで警察が遺族への連絡を行います。 (役所などから連絡がくることもあります)
ここで気を付けていただきたいのは、警察から連絡が来たからと言って、必ずしもあなたが相続人であるとは限らないことです。
もしかしたら警察は亡くなった方の手帳にあなたの連絡先を見つけて連絡してきただけかもしれません。
警察は職権により普通の人より幅広く親族や連絡先を調べることができますが、誰に相続の権利があるかまでもを調べる義務はないのです。
そして、部屋の原状回復義務や遺品整理は相続人の義務なので、あなたが相続人でなければ、それらに対応する必要もないということになります。(もちろん遺産を受け取る権利もありません)
遺体の引き渡し
警察などからの連絡では、遺体の引き渡しも求められます。遺体を引き取る前には、あらかじめ葬儀社に相談しておいたほうが安心です。
また、遺体の引き渡しに際して、警察や葬儀社から費用を求められることもあります。
死亡届の提出・葬儀・火葬
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出しなければならないとされています。提出先は、「故人の死亡地」「故人の本籍地」「届出人の所在地」にある市区町村役場です。
死亡届を提出する際に、警察署で遺体を引き取る際に発行される”死体検案書”を添付する必要もあります。
そして死亡届の提出と併せて、火葬許可の申請も行いましょう。役所での申請後は、葬儀社に依頼して火葬・葬儀へと進みます。
相続人調査・相続財産調査
ここから先が、孤独死した方の相続手続をどうするかで重要なポイントです。
まず相続人が誰なのか確定する必要があります。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取り寄せ、相続人を特定しましょう。
また、相続財産もすべて把握しなければなりません。相続財産にはプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含まれます。
プラスの財産 | マイナスの財産 |
---|---|
現金・預貯金 不動産・借地権 骨とう品・貴金属類 ゴルフ会員権 株式・投資信託 著作権 | 借金(消費者金融などからの借入など) 住宅ローン・自動車ローン クレジットカードで未払いとなっているもの 買掛金 未払医療費・未払家賃 滞納税 保証債務 |
故人の財産を相続する場合、マイナスの財産も相続しなければなりません。もし借金が多い方の財産を相続すれば、相続人に返済義務が生じるということです。そのため相続財産については、しっかりと調査しなければなりません。
相続人・相続財産の調査については、少なからず手間がかかります。もし自分での調査が難しい場合には、行政書士などの専門家に依頼するようにしてください。
横浜市の長岡行政書士事務所も、相続人調査・相続財産調査に対応しています。
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相続するかどうか判断する
相続人・相続財産があきらかになったら、そもそも孤独死した方の財産を相続するのかどうかを判断します。
そもそも相続人だからといって、必ずしも相続する必要はありません。もしマイナスの財産のほうが多く、相続したくないという場合には、「相続放棄」を選択することも可能です。
孤独死した方の財産状況によって、相続するかどうか判断してみてください。
相続手続(もしくは相続放棄の手続)
孤独死した方の財産を相続する場合には、相続手続を行います。
もし遺言があれば、遺言の通りに遺産分割を執行します。終活意識の高まりもあり、独居の人でも遺言を残す人が増えてきました。
自分に身寄りはいないが遺産はボランティア団体に全額寄付してほしい・・・とか、ずいぶん前に離婚してあまり親らしいことをしてあげられなかったから、せめて遺産はあの子に譲りたい・・・等が遺言書に記載されているかもしれません。
一方、遺言書がない場合には、相続人全員で話し合い、遺産の分割方法を決めます。これが遺産分割協議です。協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、その内容に沿って相続手続を進めます。
あわせて読みたい>>>遺産分割協議とは|目的や条件・注意点を行政書士が解説!
そして、もし相続放棄するならば、相続放棄の手続を進めます。この場合は相続放棄申述書を家庭裁判所へ提出する必要があるため、専門家に依頼したほうが手間が省けます。
横浜市の長岡行政書士事務所では、遺言書の内容に沿った相続手続や、遺産分割協議書の作成などに対応しています。相続放棄する場合には、提携している弁護士や司法書士などの専門家をご紹介できますので、お気軽にお問い合わせください。
孤独死の連絡を受けた時に気をつけること
孤独死の連絡を受ければ気が動転したりしてしまうもの。
落ち着いて対処できるよう、これから3つのポイントを解説いたします。
- 孤独死の状況をはっきりさせる
- 自分が相続人なのかどうかを確認する
- 法定単純承認とみなされる行為をしない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
孤独死の状況をはっきりさせる
繰り返しになりますが、警察はあなたが相続人だから連絡してきているとは限りません。
落ち着いて、以下ポイントを確認しましょう。
- 孤独死した人の名前と住所
- 亡くなった時の状況
- なぜ自分に連絡がきたのか
- 今後どのようなことが起きるのか
- 自分がしなければいけないこと
- 相手の警察の連絡先
もちろん後からでも聞き直すことはできますが、こちらから聞くことで考えがまとまって落ち着きを取り戻すという効果も期待できます。
自分が相続人なのかどうかを確認する
状況がクリアになってきたら、次に自分が相続人であるかどうかを確認しましょう。
相続人であるかどうかで結果が大きく違ってくるからです。
遺言があれば故人による相続人の指定がありますが、孤独死の多くは遺言がありません。
このような場合は法律に則って相続人を確定させることになります(=法定相続人)。
法定相続人の範囲にはルールがあり、配偶者は常に相続人、子は第一順位で親が第二順位・・・等と決められています。
下記リンクにて相続人の範囲を詳しく説明していますので、ぜひご一読ください。
あわせて読みたい>>>相続人の範囲はどこまで?代襲相続・数次相続・再転相続も考慮して行政書士が徹底解説!
自分が相続人ではないなら、相続人に連絡したほうがその後の各種手続がスムーズですし、自分が不要な責任を負ってしまう心配もありません。
なお、仮に自分が相続人だと判明しても、他に相続人がいる可能性があります。
自分一人で遺産や負債を引き受けることになるのか、もしくは他の相続人と分担することになるのかを把握するためにも、他の相続人の存在を確認しなければいけません。
この調査は警察や役場は行ってくれないので、自分で行う必要があります。
先述したとおり、亡くなった方の戸籍を生まれてから死ぬまで辿っていくことでこの相続人調査をすることができます。
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法定単純承認とみなされる行為をしない
繰り返しとなりますが、遺産にはプラスだけでなく、マイナスの遺産もある事に注意してください。
プラスの遺産として代表的なものは預貯金、有価証券、不動産、生命保険等があげられますが、マイナスの遺産には借金、未払金、ローンなどがあります。
そしてプラスの遺産だけもらってマイナス分は要らないと主張することはできません。
これが許されると誰もマイナスの遺産を引き受けてくれなくなる惧れがあり、故人にお金を貸していたような人が損害を被ってしまうことになるためです。
相続人に与えられた選択肢としては、 次の3つが挙げられます。
- 単純承認
- 相続放棄
- 限定承認
3番目の限定承認とは、プラスの遺産をもらった限度においてマイナスの遺産も引き受けるというものです。(マイナス分の引き受けを一切拒否するというわけではありません)
この限定承認は家庭裁判所に申し立ててほかの相続人全員の承認が必要であり、実現へのハードルは高いと言えます。
よって現実的にはプラスもマイナスも両方引き受ける(=単純承認)か、プラスもマイナスもどちらの引き受けも拒否する(=相続放棄)の2つが選択肢となります。
ここで注意しなければならないのが、「法定単純承認」に該当する行為です。これは法に定められた事由に該当する行為をした場合に”単純承認した”とみなされ、相続放棄や限定承認ができなくなるというものです。
法定単純承認とみなされる行為の例としては、次のようなものが挙げられます。
- 相続財産の全部または一部を処分した
- 熟慮期間内に限定承認や相続放棄をしなかった
- 定承認・相続放棄後の背信的行為があった
あわせて読みたい>>相続放棄ができなくなる行為とは?法定単純承認について行政書士が解説!
とくに問題となるのが、「相続財産の全部または一部を処分した」についてです。
たとえば相続人の財産から葬儀費用を支払ったとしても、これは社会的儀礼としての必要性が高く、法定単純承認には該当しないといわれています。一方、被相続人の預貯金口座を解約した場合などは、法定単純承認とみなされます。
現実的には、孤独死した方の死亡に伴い、さまざまな費用を請求されるかもしれません。これら費用を、とくに考えずに亡くなった方の遺産から支払ってしまうと、相続放棄ができなくなる可能性があるため注意してください。
なお、相続放棄は相続が始まったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申請する必要があり、あまり時間をかけてはいられません。
あわせて読みたい>>>相続放棄後の財産処分の可否とは?遺産の管理義務等も行政書士が解説!
孤独死した人の家の清掃や家財の処分義務は相続人に対して発生することになり、いちど単純承認すると原則として撤回はできないので、後から特殊清掃の費用をみて愕然とするという事態にもなりかねません。
そのため相続放棄する可能性がある場合には、法定単純承認とみなされる行為をしないよう注意してください。
孤独死の連絡を受けたときはすぐ法律の専門家に相談を!
警察や役所から連絡を受けた時の状況確認はできても、そのあとの相続人調査や財産調査は普通の人が自力で行うのは難しいと言えます。
戸籍を取り寄せて読み解くことに慣れている方は少ないですし、日中は仕事があり財産調査に時間を費やすこともままなりません。
また、近年の特殊清掃のニュースが物語る通り、孤独死が発生した場合は大家さんから家屋内の損害賠償されるリスクがあります。
なので相続放棄という選択肢も含めて財産調査は正確かつ迅速に行う必要があります。 また、どのような行為が法定単純行為(相続放棄ができなくなる行為)になってしまうのか、あらかじめ専門家に相談しておいたほうが安心でしょう。
横浜市の長岡行政書士事務所は相続の経験が豊富にあり、通常の相続だけでなくこのような孤独死が発生した場合もご相談者様に寄り添った解決が可能です。
ご不明な点や不安を感じた際には、是非当事務所にご相談ください。