「お父さんが亡くなったけど、すぐに相続って始まるの?」
「まだ把握しきれてない借金があるみたいだけど、どうすればいい?相続放棄すべきなのかな、、」
「熟慮期間って何? どうすれば延長できるの?」
相続をする際に、相続するかしないのか(相続放棄するかどうか)を考える時間が欲しいこともあると思います。
相続は財産や権利が動く大きな出来事ですし、相続財産の中にはマイナスの資産である借金などもあります。
実は相続には、それについて考える期間が設けられています。いわゆる熟慮期間です。今回は相続放棄に迷ったときの手続きとして、熟慮期間を伸ばす方法について見ていきましょう。
相続の熟慮期間とは
熟慮期間とは要するに、相続方法を選択できる期間のことです。
熟慮期間を定めないと、いつまでたっても相続をどうするかが決まらず、権利や義務が誰にあるのかがあやふやになってしまいます。
民法では「相続の開始があったことを知った時から三か月」が熟慮期間だと定められています。
相続の開始があったことを知った時、というのは相続財産を遺した人が亡くなり、自分が相続をする立場だと知った時です。
まずは「熟慮期間は3か月間」ということを覚えておきましょう。
なお、「相続の開始があったことを知った時」が各相続人で異なるため、熟慮期間は各々で違います。たとえば、海外に住んでいる子が他の子よりも父の死亡を知るのが一週間遅れたというような場合、その子だけ熟慮期間が一週間分ずれることになります。
熟慮期間で判断する相続方法
熟慮期間は相続方法を選択できる期間と紹介しました。ここでいう相続方法とは、下記の3パターンのことです。
- 単純承認
- 限定承認
- 相続放棄
以下、それぞれの相続方法について説明していきます。
単純承認
単純承認とは、プラスの財産もマイナスの財産もまとめて受け継ぐ相続方法です。
一番基本的な相続の方法ともいえるでしょう。
たとえばお父さんが持っている家や預貯金などのプラスの財産と、事業などで借りた借金を両方まとめて受け継ぐような感じです。
限定承認
限定承認とは、プラスの財産の範囲でマイナスの財産も受け継ぐ相続方法です。
たとえば、お父さんに多額の借金がある場合、その借金を背負うのは大変でしょう。けれど土地や家などは受け継いでいく必要があるかもしれません。
そんな場合は、借金の範囲を限定して受け継ぐこともできます。この方法をとるには、相続人全員の同意がなければならないので注意してください。
合わせて読みたい:限定承認とは何か?資産もあるが負債もありそうな時の対処法を行政書士が解説!
相続放棄
相続放棄とは、すべての財産を受け継がない相続方法です。
これもシンプルで、もはや亡くなった方の財産も借金も譲り受けない、相続自体しないという選択肢です。
合わせて読みたい:相続放棄とは?遺産相続で負債がある場合の対処法を行政書士が解説!
熟慮期間内に行うべきこと
三か月の熟慮期間というのは意外と短いです。
そんな熟慮期間内に行うべきこととしては、次の4つが挙げられます。
- 亡くなった人の相続財産を調査する
- 誰が相続人かを調査する
- 相続人間で話し合う
- 限定承認・相続放棄は裁判所に申述する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
亡くなった人の相続財産を調査する
故人の財産が具体的に一体どれくらいあるのかがわからなければ、しっかりと相続はできません。
後から財産が見つかったり、死亡者の財産でないものを誤って相続してしまったりしてしまいます。
また財産がわからなければ、相続内容を話しあうこともできません。
相続方法を判断するために、まずは亡くなった人の相続財産を調査しましょう。
合わせて読みたい>>相続財産の調べ方とは?遺産の探し方や注意点を行政書士が解説!
誰が相続人かを調査する
相続人がひとり増えるだけで相続の内容は変わります。
たとえ、その人に財産が遺されていなかったとしても、相続人である以上遺留分という最低限もらえる財産が存在します。
合わせて読みたい:遺留分とは?具体例や侵害された遺留分請求方法を分かりやすく解説!
たとえば再婚などの場合、今の家族とは別に故人に子供がいることもあるでしょう。
誰が相続人なのかをしっかりと把握しなければ、相続の話し合いすらすることができません。
相続人間で話し合う
相続は財産をどう分配するかを定める場面であるため、やはりそこには相続人間の利害の調整が必要になります。
とくに先述したとおり、限定承認するためには相続人全員の同意が必要となるため、相続人同士で相続方法を話し合ってください。
限定承認・相続放棄は裁判所に申述する
熟慮期間の三か月を過ぎれば、相続人はすべての財産を受け継ぐ、つまり単純承認をしたものとみなされます。
逆に言えば、借金などの範囲を少なくしたり(限定承認)、そもそも遺産はもらわらない(相続放棄)と主張したりするためには、熟慮期間内に意思表示しなければなりません。
そしてそれは家庭裁判所に対して申述する必要があります。自分たちだけで決めてその通りになる、というものではないのです。
なお、行政書士は相続放棄・限定承認の手続きは代理できません。裁判所に提出する書類の作成となるため、司法書士や弁護士に依頼することになります。長岡行政書士事務所に相続手続きをご依頼いただいている場合は、信頼できる提携事務所と連携するためご安心ください。
熟慮期間の伸長とは
たとえば死亡者が経営者で、多額の借金や給料を支払う従業員をたくさん抱えていたりすることもあるでしょう。
数多くの有価証券を実は持っていた、あるいは海外にも資産があった、などの事情で財産の把握に時間がかかることもあります。
このような場合、3か月の熟慮期間では相続方法を判断できないかもしれません。
熟慮期間について民法は、以下のように述べています。
民法 第915条1項 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。 ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、 家庭裁判所において伸長することができる。
熟慮期間が三か月では足りない時のために特別に期間を延長することができるよう、民法は配慮してくれているのです。これを「熟慮期間の伸長」といいます。
熟慮期間の伸長が認められるケース
熟慮期間の伸長を認めるかどうかは家庭裁判所が判断することになります。
つまり、こういう場合なら熟慮期間を延ばすことができる、といった具体的な条件がないのです。
ただし、熟慮期間の伸長が認められやすいケースには次のような傾向があります。
- 相続財産の調査に時間がかかるとき
- 一部の相続人と連絡が取れないとき
- 財産の隠匿などがあったとき
それぞれ具体例を紹介します。
相続財産の調査に時間がかかるとき
上で述べたように故人の遺産があまりにも多く複雑で、相続財産の調査に時間がかかりやすかったりする場合です。
あるいはお葬式や、遺産調査の前提である相続関係を証明する戸籍謄本のとりよせに時間がかかってしまったりするケースもあります。
そうなると相続財産を調査するタイミングが遅れるので、三か月を超えてしまうこともあるでしょう。
普通に手続きをしていてもどうしても遅れてしまう、というような場合です。
一部の相続人と連絡が取れないとき
相続は相続人全員で進めていくものです。遺産分割協議には相続人全員の同意が必要ですし、さきほど述べたように限定承認も相続人全員でしなければなりません。
合わせて読みたい:遺産分割協議とは~知っておきたいポイントと注意点を解説
仮に相続を放棄するにしても、その放棄によって財産の配分が変わってしまうため(一人分の財産が他の人に分配されるようになるため)、やはり相続人間で意思疎通して行うことが大切です。
相続人全員がそろわないと、十分な相続上の手続きができないことになります。そのため、行方不明などの事情も含めて、一部の相続人と連絡が取れない状況だと、熟慮期間の伸長が認められやすいです。
財産の隠匿などがあったとき
あまり考えたくないことですが、自分が多くの遺産をもらいうけるために財産を隠してしまう相続人もいるかもしれません。
遺産分割の前提である遺産が、その行為により変わってしまい、さらに隠した相続人自身がそれについて説明もしないこともありえます。
行先不明の財産をどうするか、という問題は非常に厄介な問題であるため、熟慮期間の伸長が認められやすい傾向があります。
熟慮期間を伸長する際の注意点
熟慮期間を伸長する際にもいくつか注意点があります。
- 自分の熟慮期間を伸長することしかできない
- 熟慮期間を複数回伸長することもできるが適切な理由が必要
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自分の熟慮期間を伸長することしかできない
熟慮期間は各相続人それぞれが持っています。そのため、自分が熟慮期間を延長したからといって他の相続人の期間まで延長されるわけではありません。
自分の申請では、自分の熟慮期間を伸ばすことしかできないということです。
もし他の相続人の熟慮期間が終了しそうなら、各々で伸長を申し立てる必要があります。
熟慮期間を複数回伸長することもできるが適切な理由が必要
熟慮期間の伸長は裁判所の裁量であるため、複数回行うこともできます。
しかし、何度も何度も期間を延ばすことは、それこそ専門家を雇っているのに財産の調査がよっぽど難航しているなど、相応の理由がなければ難しいでしょう。
ですので、熟慮期間を伸長しようと思うのなら、早い段階で伸長の申し立てをし、すぐに問題解決に動いた方がいいでしょう。
相続方法に迷ったら行政書士へ相談を
相続は本当に大変な作業です。家族とは言え、故人の財産をきっちり把握している人は意外と少ないように思います。
それでも、その財産が借金も含めて自分のものになります。いつの間にか借金を抱えていた、なんてことはやはり避けたいですよね。
実際にとる選択肢は、①単純承認 ②限定承認 ③相続放棄と3つしかありませんが、その選択肢に至るまでには多くの過程を踏まなければいけません。
「自分が相続人になるんだ」と知り、これからどうすればいいのか迷うこともあるでしょう。
それぞれの相続方法についてもっと詳しく知りたいという方は、ぜひ横浜市の長岡行政書士事務所へご相談ください。個別のケースに応じて、選択肢をご提案いたします。
また、熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申し立てる際、相続人の立場によって必要書類が変わったりします。
熟慮期間の伸長が認められるかどうかは裁判所の裁量であるため、理由の書き方も注意が必要です。
熟慮期間の伸長の申述は本人、弁護士または司法書士等の専門家しかできませんが、ご希望があれば提携している専門家のご紹介も可能です。
熟慮期間を伸ばすべきかどうか、どの相続方法を取ればいいのかお悩みの方は、ぜひ長岡行政書士事務所へご相談ください。