法定相続人が熟慮期間中に死亡した場合はどうなる?再転相続を行政書士が説明!

法定相続人が熟慮期間中に死亡した場合はどうなる? 再転相続を行政書士が説明! 相続手続の基礎
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「再転相続、数次相続、代襲相続の違いがよくわからないのでもう一回説明してください」

「再転相続が発生した場合にどのような問題が起こり得るのでしょうか」

「どうすれば再転相続の複雑な状況を解決できるのでしょうか」

前回のコラムでは数次相続に関して説明をしましたが、その中で比較対象としての再転相続に関しても少し触れました。

あわせて読みたい>>>数次相続とは?両親が立て続けに死亡した時の手続きの概要と相続人の範囲を解説!

今回のコラムでは再転相続をメインに説明いたします。

再転相続とは?

相続が発生した際に、配偶者、子、親、兄弟姉妹は必ず相続を受けなければいけないわけではありません。

遺産の中には借金のようなマイナスの遺産もあるので、マイナスの遺産がプラスの遺産を上回るような場合は相続そのものを放棄することも可能です(=相続放棄)。

あわせて読みたい>>>相続放棄とは?遺産相続で負債がある場合の対処法を行政書士が解説!

ただ、いかに相続を放棄することができるといっても、相続人が複数人いるような場合に、ひとりの相続人が相続を承認するか放棄するかの態度をいつまでも決めないと、他の相続人にとって不利益につながる惧れがあります。

相続をするか検討する時間が熟慮期間

このため、法律では身内が亡くなった際に法定相続人となる人が遺産相続を承認するか放棄するかの検討できる期間を定めています。

この期間のことを「熟慮期間」と言います。

そして熟慮期間は相続が発生した日、もしくは亡くなったことを知った日から3か月以内と定められています。

なお、熟慮期間は伸長(延長)することも状況によっては可能です。
詳しくはこちらの記事をお読みください:相続するか迷ったら?熟慮期間の伸長について行政書士が分かりやすく解説!

熟慮期間中に死亡した場合を再転相続という

この熟慮期間中に承認も放棄も決めてない状態で法定相続人が亡くなってしまい、その法定相続人の子などに相続が移動する事を再転相続と言います。

例を用いて理解を深めましょう。

夫A、長男B、次男C、長男の子Dがいたとします。

夫Aが遺言を残さず亡くなると、法定相続人は長男Bと次男Cとなります。

しかし夫Aの遺産には借金も多く、プラスの遺産が多いかマイナスの遺産が多いかは微妙なところでした。

次男Cはすぐ相続を承認する意思表示をしたものの、長男Bはまだ熟慮期間中だからと態度を決めかねているうちに不慮の事故に遭い亡くなってしまいました。

この場合再転相続が発生し、長男Bの子(夫Aから見ると孫)であるDが長男Bの立場を引き継ぎ夫Aと長男Bの両方の相続の相続人となります。

相続における相関図20(再転相続)

数次相続と代襲相続の違い

それでは、「世代を一つ飛び越える」という点で似通っている代襲相続、数次相続との違いはどこにあるのでしょうか。

各相続の要件は以下の通りになります。

  • 代襲相続:相続人が被相続人より先に死亡してること
  • 数次相続:遺産分割協議が終わる前に次の相続が起きること
  • 再転相続:熟慮期間が経過する前に次の相続が起きること

代襲相続とは

代襲相続は遺産を残して亡くなった人(=被相続人)の前に相続人が亡くなっていることが発生要件です。

先ほどの例で行くと、夫Aが亡くなる前に長男Bが既に亡くなっていた場合に代襲相続が発生し、相続人は次男Cと長男Bの子であるDとなります。

長男Bが既に亡くなっているので飛び越えてその子のDに相続が受け継がれるイメージです。

翻って、数次相続と再転相続はどちらも相続人が被相続人の後に亡くなっているという点では共通していますが、違いは相続人が相続を受けることが決まってから亡くなったのか(=数次相続)、それとも相続を受けるか受けないか決まってないうちに亡くなったのか(=再転相続)という点になります。

あわせて読みたい>>>代襲相続と養子縁組がある場合の法定相続人の範囲と割合とは?行政書士が解説!

数次相続とは

再度先ほどの例を用いて説明いたします。

夫Aが亡くなった際にはまだ長男Bと次男Cが存命しており、二人とも夫Aの遺産を相続する意思表示をしました。もしくは熟慮期間である3カ月を経過しても何も意思表示しなかったので相続すると意思表示したものとみなされたとします。

その後相続人である長男Bと次男Cは法律に則って遺産を分割するか(=法定相続)、もしくは話し合いによって分割の割合を決めるか(=遺産分割協議)の手続きに入りますが、どう分割するか決まらないうちに長男Bが亡くなってしまいました。

この場合は数次相続となり、長男の子Dが長男Bの立場を引き継ぎ夫Aの遺産と長男Bの遺産の2回分を相続することになります。

この夫Aの遺産の事を一次相続、長男Bからの遺産の事を二次相続と言います。

数次相続の場合は長男Bが既に夫Aの遺産を相続することが決まっているので、長男の子Dはやっぱり夫Aの遺産は要らない、という事ができません。

既に長男Bが遺産を相続すると知っていた次男Cを、長男の子Dによる急な相続放棄から守るためです。

逆に再転相続の場合は長男Bが遺産相続を承認するか否かの意思表示をする前に亡くなっているので、その子Dは夫Aの遺産を相続放棄することが可能です。

あわせて読みたい>>>数次相続とは?両親が立て続けに死亡した時の手続きの概要と相続人の範囲を解説! 

相続における相関図21(数次相続)

再転相続で注意すべき点

再転相続で注意すべき点が2点あります。

相続放棄ができるか否かと、熟慮期間のカウントの仕方です。

相続放棄できるときとできない場合がある

再び先ほどの例を用いて説明しましょう。

長男Bが遺産を相続する、しないをはっきりさせないまま亡くなってしまったので、その判断は長男Bの子Dが行うことになります。

Dが行う事の出来る判断は

  1. 夫Aと長男B(Dから見れば父)の両方の相続を放棄する
  2. 夫Aの相続は放棄し、長男Bの相続は承認する

の2つです。

長男Bが相続を承認するか放棄するかを決めないまま亡くなっているので、その子Dが夫Aの遺産を放棄してももう一人の相続人である次男Cにとって不利益にはなりません。

また、夫Aの相続は一次相続、長男Bの相続は二次相続なので、子Dから見ると祖父の相続は放棄し、父であるBからの相続は承認する、という選択肢も可能です。

しかしながら、長男の子Dは

3.夫Aの相続は承認し、長男Bの相続は放棄する

という事はできません。

長男Bからの相続には夫Aの相続も含まれていると考えられているので、長男Bと夫Aの分をより分けて夫Aの遺産だけ相続・・・というわけにはいかないのです。

熟慮期間のカウントの仕方に注意

もう一つ注意すべき点としては熟慮期間のカウントの仕方があります。

熟慮期間には、

  • 熟慮期間は被相続人が死亡時もしくは自身が相続人であることを知った日から3カ月の、どちら遅い方からカウントスタート
  • 熟慮期間を過ぎてしまうと、相続を承認したことになる

というルールがあります。

相続の現場では疎遠だった人が亡くなっても自分が相続人になっていたことを知らなかった、というケースが多々あります。

半年前に亡くなっていた・・・という場合は、もし熟慮期間がその人の死亡時からスタートしていたとすると、自分の知らないところで遺産を相続していたという事になりかねません。

そして遺産は前述の通り常にプラスの遺産だけではなく、借金や負債といったマイナスの遺産が上回っている場合もあり得るのです。

そのような不都合を避けるため、法律では死亡時もしくはその死亡を知ってから3カ月以内の遅い方と熟慮期間を定めています。

半年前に亡くなった遠い親戚が借金を残していても、知った日から3カ月の熟慮期間が与えられていれば自分の意思でそれでも相続を承認するか放棄するかの判断が下すことができるからです。

さて、ここで問題になってくるのは、再転相続は2回の相続がたて続けに発生するという点です。

父からの相続が終わったあと急に疎遠だった祖父が亡くなっていた場合はどうなるのでしょうか。

この場合でも熟慮期間は遅い方、つまり祖父の死を知ってからカウントが始まりますので、この祖父が多額の借金をしていたような場合は相続放棄をすることができます。

熟慮期間のカウント方法を示した判例

実は令和元年に、この再転相続における熟慮期間の争いの判決が最高裁より下されました。

裁判所ウェブサイトより引用:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88855&_fsi=WgPM1BgD

伯父(父の兄)が借金を抱えたまま死亡し、伯父の子が相続放棄したため第三順位の法定相続人である自身の父が相続人となりました。

この父が熟慮期間中になくなり、その娘に再転相続が発生しました。

しかし、父は娘に伯父の相続の事を伝えてなかったので娘は自分が伯父の相続人となったことを知らないまま3年が経過してしまい、伯父の借金の債権者がやってきて娘の財産に対し強制執行を行おうとします。

債権者の言い分としては伯父の死から既に3年経っているので既に熟慮期間は終了しており、その相続人である娘は相続を承認したことになっているので借金を払うべき、というものでした。

娘は自身が伯父の相続人だったことを知らなかったことを理由に相続放棄と強制執行の中止を求めて提訴をしました。

最高裁は熟慮期間の起点を「自己が相続を継承した事実を知った時」と判決を下し、最終的に娘の相続放棄が認められ強制執行が無効となったのです。

再転相続が起きた場合は早めに専門家のサポートを利用

再転相続が発生すると2つの相続が関係することになるので人間関係や権利義務が複雑になり、スムーズに相続を執り行うことが難しくなります。

その為、早いうちから専門家へ相談し必要とあらばサポートを求めるべきだと言えます。

長岡行政書士事務所は相続手続き関連のお手伝い実績が数多くございます。

少しでも不安や疑問を感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事の執筆・監修者
長岡 真也(行政書士)

長岡行政書士事務所代表。1984年12月8日生まれ。
23歳の時に父親をガンで亡くしたことから、行政書士を志す。水道工事作業員の仕事に従事しながら、作業車に行政書士六法を持ち込んでは勉強を続け、2012年に27歳で合格。
当時20代開業者は行政書士全体の中で1%を切るという少なさで、同年開業。以来。「印鑑1本で負担のない相続手続」をモットーに、横浜市で相続の悩みに直面する依頼者のために、誠実に寄り添っている。最近は安心して相続手続したい方々へ向け、事務所公式サイト上でコラムを発信しており、相続手続の普及に取り組んでいる。

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