「高齢の母が所有する財産には田舎の不動産がある。相続までにやっておくべき対策はある?」
「地方の実家をいずれ相続することになるが、住む予定もないしどうしよう」
「遠方の不動産を相続前から活用するアイデアはないか?」
今住まわれているエリアから遠い不動産をいずれ相続する可能性がある場合、どのように対策をしておくと良いでしょうか。不動産は相続すると相続登記を行う必要があるほか、所有すると不要な不動産であっても固定資産税を納める義務もあります。そこで、本記事では遠方の不動産相続に備えて、やっておきたい対策を行政書士が解説します。
遠方の不動産を相続すると大変?相続後に発生する負担とは
「地方の実家を出て、都市部で生活している」などの理由で、相続時に今のお住まいから離れている場所に位置する不動産を相続する方は少なくありません。また、相続を迎えてから始めて、被相続人が生前に遠方の不動産を所有していたと知る相続人もいます。では、遠方の不動産を相続するとどのような負担があるでしょうか。この章で詳しく解説します。
相続登記をする必要がある
不動産を相続すると、亡くなられた方から新しい所有者へと所有者を変更する必要があります。この手続きは「相続登記」と呼ばれており、2024年4月1日に義務化されました。義務化によって「不動産を相続したと知った日から3年以内」に相続登記をする必要があります。
詳しくは以下の記事もご一読ください。
合わせて読みたい:相続不動産の相続登記期限はいつまで?法改正による相続登記義務化について解説!
相続税が発生する場合がある
不動産は資産価値が高いものも多く、相続税が課税される可能性もあります。相続税は不動産だけが対象となるのではなく、被相続人が所有していた財産全体に加えて、生命保険からの死亡保険金などの「みなし相続財産」や、生前に行われていた贈与も一定の期間内が課税対象となります。(被相続人に債務がある場合は控除できます)
相続税が発生しており、納付の必要がある場合は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内」に申告・納付を終える必要があります。
空き家であっても管理する必要がある
遠方にあり、すでに誰も住んでいない空き家を相続する場合には管理を行う必要もあります。たとえば、隣家と接している空き家の場合は放置してしまうと雑草が生えてしまい、隣家に影響を及ぼす可能性があります。
また、放置されている空き家はゴミの不法投棄や放火がなされてしまった事例もあり、管理状況が不届きだった場合には管理責任が相続した方に及ぶおそれもあります。たとえ遠方にあっても、相続する以上は空き家も適切に管理する責任があるため注意が必要です。
合わせて読みたい:横浜で空き家の相続に直面したら?リスクや回避方法を行政書士が解説!
固定資産税が発生する
不動産を相続で取得すると、新たに所有する不動産の固定資産税も支払っていくことになります。固定資産税とは毎年1月1日(賦課期日)現在の土地、家屋等の所有者に対し、その固定資産の価格をもとに算定される税額が毎年春頃に請求されるものです。遠方にあり、利用する予定がない不動産でも納税義務は生じます。
地方によっては売りにくい不動産も多い
税金や空き家管理の負担から、相続後に「売却」を検討する方もいます。しかし、地方の不動産によってはすぐに売却できないことも多くなっています。過疎地など不人気のエリアでは思うように買い手が見つからないのです。
遠方の不動産相続に備える4つの対策とは
今後遠方にある不動産を相続する可能性がある場合には、あらかじめ生前から対策を講じておくことがおすすめです。そこで、この章ではやっておきたい対策について4つご紹介します。
不動産を収益物件化する
税金や空き家管理の負担を軽減するためには、遠方にある不動産の「収益化」を目指すことがおすすめです。収益化できると定期的に収入が入るため、相続税や固定資産税の支払いに活用できます。また、空き家ではなくなるため管理負担も軽減できます。
収益物件にできたら、その時点で贈与を進めることもおすすめです。贈与すれば誰が相続するか、相続開始後に話し合う必要がなくなるだけではなく、贈与後の収益は受贈者(贈与を受けた方)のものになります。相続財産も減るため、相続税対策の効果もあります。
ただし、不動産の贈与は贈与税がかかる可能性が高く、不動産取得税も発生します。贈与方法もいくつかあるほか、非課税にできる「住宅習得など資金の非課税制度」や「おしどり贈与」といった特例もあるため税理士に相談しながら安全に進めることがおすすめです。
合わせて読みたい:祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度について税理士が解説
収益がある場合は遺言書を作成しトラブルを防ぐ
遠方の不動産が収益化できていても、贈与をしない場合には遺言書を作り、あらかじめ誰が不動産を取得するのか決めておくことも相続対策につながります。収益物件は魅力的であり、相続人間で揉めるリスクがあるためです。遺言書があれば遺産分割協議を行う必要がありません。遺言者自身の思いを込めて、不動産を渡したい方を選べることも遺言書を残すメリットです。
ただし、遺言書は遺留分に配慮するなど注意をしながら作成することが望ましいでしょう。遺言書には不動産以外の財産を誰に渡すのかも、書き残すことができます。行政書士などの専門家にご相談されることがおすすめです。
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すでに空き家の場合は売却・解体を検討する
すでに空き家となっており、今後相続後に管理負担が予想される場合は、早期に売却・解体を検討することもおすすめです。先に触れたように不動産の売却は時間を要する場合があるため、不動産業者への相談はなるべく早くから始めましょう。
売却が難しい空き家の場合は、費用はかかりますが解体し、土地のみの状態で売却もしくは相続をすることも考えられます。解体しておくことで売れやすくなる土地も多く、相続をすることになっても建物がない分固定資産税も減り、相続財産を減らす効果もあります。
周辺で不動産を欲しい人を探しておく
売却や解体、贈与なども難しいケースではあらかじめ不動産の買い手を探してみることも検討しましょう。売れにくい不動産であっても、ご近所の方が購入を希望する場合があります。実際にある地方の事例では、空き家をご近所の方が購入を希望し、円滑に売却できたケースがあります。
■空き家バンクやマッチングの活用も可能
現在横浜市には、空き家の所有者と地域活動の拠点を探す団体や事業者とのマッチング制度が用意されています。(※)詳しくは以下リンクをご参考ください。
また、地方には空き家のトラブルを少しでも減らすことを目的に、空き家バンクも多く、譲渡や売却がスムーズになるしくみを自治体を中心に運用していることがあります。空き家が立地している自治体のHPを調べて、登録を希望することも検討しましょう。
(※)2024年11月現在、横浜市には空き家バンク制度はありません。空き家のマッチングについては「空家活用のマッチング制度」をご確認ください。
参考URL 横浜市 空家活用のマッチング制度
遠方の不動産相続には事前の備えを|長岡行政書士事務所へご相談ください
今回の記事では、遠方の不動産の相続について、事前にやっておきたい4つの対策を交えながら詳しく解説しました。遠方の不動産相続は空き家リスクや税金の負担などの問題に悩まされることが多く、生前から家族そろって対策を考えておくことがおすすめです。ぜひ本記事を参考に、贈与や売却、収益化などをご検討ください。
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