不動産を相続する際には、共有相続と呼ばれる状態で相続することもできます。たとえば親が所有していた土地を、兄弟で共有名義にすることも可能です。
しかし、1つの不動産を複数人で相続することで、相続トラブルにつながるケースもあります。不動産の共有相続について、よくあるトラブルや解決方法を知っておきましょう。
今回はこの難解な不動産の共有について分かりやすく解説するために「童話風」にお話ししていきます。この記事を読めば不動産の「相続時の共有」に詳しくなること間違いなしでしょう。
相続時の不動産共有とは
相続の開始後に複数人の相続人がおり、遺言書もなく、遺産分割協議もまとまっていない場合には、いったん遺産共有財産の状態となります。
わかりやすく言うと、1つの不動産を複数人で相続するという状態です。それでは「三匹のこぶた」風に、兄弟で土地を共有するとどうなるのか見ていきましょう。
むかしむかし、あるところに三匹のこぶたがいました。石の家、木の家、ワラの家をそれぞれ作って育った兄弟ぶたたち。
隣村に住む赤ずきんちゃんと漁師さんの協力もあり、自分たちを罠にはめようとしたオオカミを見事に撃退!
その後、行政書士の資格を取得した赤ずきんちゃんたちに、相続や遺言のさまざまなことを教えてもらいながら、幸せに暮らしていました。
そんなある日のこと。
母ぶたさんが入院することになってしまいました。病院にお見舞いに行った兄弟ぶたと、赤ずきんちゃんを前に、母ぶたさんは元気がなさそうです。
母ぶた「あたしももういい歳だから、このまま家に帰れないんじゃないかっておもうこともあってね…」
兄ぶた「何言ってるんだい! すぐに退院して帰れるさ」
弟ぶた・末っ子ぶた「そうだよ!」
母ぶた「ありがとね…。でも、そんなことを考えていると、ふと気になってね。もしもこの先、私が虹の橋を渡ったら、今の家と土地はどうするのかってね」
弟ぶた「そんなの決まってるじゃないか。僕たちが仲良く守っていくよ」
末っ子ぶた「そうそう、3人共有でね」
母ぶた「それなら安心だねえ」
相続した土地を兄弟で共有するリスク
赤ずきん「ちょっと待って。水を差すようだけど、不動産の共有相続は…考えたほうがいいかも?」
兄ぶた「赤ずきんちゃん、どういうことなんだい?」
相続した土地を兄弟で共有するリスクとしては、次の2つが挙げられます。
- 不動産は共有になると単独でできることが限られる
- 不動産の共有者が死亡すると権利者が増えて複雑になる
不動産は共有になると単独でできることが限られる
赤ずきん「まず前提として、不動産は現金とはちがって、きっぱりさっぱり割り切るのが難しいの。たとえば土地を共有名義にすると、どこからどこまでが兄ぶたさんのものか、すぐには分からないわよね。」
兄ぶた「そうだね」
赤ずきん「だから、共有財産といっても、所有権を分割していることになるの。複数人の相続人で所有権を分割するわけだから、兄弟それぞれが一定の所有権の割合を持っているわけね」
弟ぶた「それに何の問題があるんんだい?」
赤ずきん「たとえば共有の土地を売りたいとか、土地を貸したいという場合には、全員の同意が必要になるの。兄ぶたさんは賛成だけど、弟ぶたさんが反対ということになったら、そういうことができなくなるわけ」
末っ子ぶた「僕たちは仲がいいから、話し合って解決できるよ!」
赤ずきん「もちろんあくまで一般論だけどね。でもそういうデメリットもあると覚えておいてほしいの」
兄ぶた「賃貸とかだと、より手続きが複雑になりそうだしね」
赤ずきん「2023年4月の法改正で、共有している不動産を賃貸に出すときには、短期間であれば共有者の半数以上、3年より長い長期間は全員の同意が必要になったわ」
弟ぶた「なるほど、確かに赤ずきんちゃんのアドバイスはしっかり考えておく必要があるね」
不動産の共有者が死亡すると権利者が増えて複雑になる
赤ずきん「あとね、複数人で共有相続した場合、共有者が亡くなってしまうと、さらに相続が発生し共有者が増えてしまうのよ」
兄ぶた「ぼくたちはまだ結婚してないけど、将来家族が増えたら、そうなるってことだね」
兄弟の共有相続を避ける解決方法とは
弟ぶた「じゃあさ、赤ずきんちゃん。共有相続ではない、いい解決策はあるのかい?」
法定相続分どおりに相続すると、遺産分割協議が不要になるなど一定のメリットはあります。しかし、次の世代に負担を遺す可能性も高いため、できれば回避をしたほうがいいでしょう。
赤ずきん「OK! もちろんあるよ。紹介するね」
- 遺産分割協議で不動産を相続する人を決める
- 不要な不動産は売却をする
- 将来に備えて話し合う
遺産分割協議で不動産を相続する人を決める
まず考えられるのが、遺産分割協議によって、一つの土地につき、相続する兄弟を一人に絞ることです。
もし複数の土地がある場合は、兄弟それぞれが別々の土地を相続してもいいでしょう。
特定の相続人に土地が集中するときは、その他の相続人には代償金を支払うこともあります。
参考:代償分割とは|メリット・デメリットや活用すべき例を行政書士が解説
不要な不動産は売却をする
将来的に管理コストがネックとなる可能性があったり、暮らす予定がない土地なら、相続のタイミングで売却を検討してもいいでしょう。
これは売却益を分割する換価分割といい、現金を分割できるため、遺産相続手続きで揉めにくいことがポイントです。
参考:遺産分割時の換価分割とは|押さえておきたい4つのポイントを行政書士が解説
横浜市の長岡行政書士事務所では、換価分割のサポートも可能です。
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将来に備えて話し合う
もし現時点で共有を検討している場合、将来の相続トラブルにも備えて、以下のようなことを、兄弟でしっかりと話し合っておくことも大切です。
- 将来的な賃貸化や売却の有無
- 空き家となった場合の管理責任の所在
- 共有者が亡くなった時の対応方針
- 一部の共有持分の売却により、見知らぬ共有者が入ってくるリスク
これらを話し合う過程で、やはり代償分割や換価分割にしようとなる可能性もあります。
相続した土地を兄弟の共有名義にしないためには代償分割・換価分割を活用
もし亡くなった方が遺言書を残していれば、兄弟での共有状態は避けやすいです。
しかし遺言書がない状態で亡くなった場合は、どうしても兄弟で話し合って相続方法を決める必要があります。
この記事で紹介したとおり、相続した土地を兄弟で共有することにはさまざまなデメリット・リスクがあるため、可能なら代償分割・換価分割を活用するといいでしょう。
横浜市の長岡行政書士事務所でも、代償分割・換価分割のサポートが可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。