「相続手続き終了後、財産を引き継いだ相続人が亡くなった場合は?」
「その後の相続人まで指定することはできるの?」
相続のことを考えると、さまざまな局面を想像しては「どうしたらいいんだろう?」と不安になってしまうものですよね。
実は、財産を引き継いだ相続人が亡くなった場合にその後の相続人まで指定することを「後継ぎ遺贈」といいます。後継ぎ遺贈については、民法上、無効であると解釈されており、一般的には望ましい形ではないとされているのです。
本記事は、通常の法律の文章は難しいことから、楽しくわかりやすくお伝えするためにクイズ形式にしています。
そのため、法律的な表現が少し変、厳密に言うとこうだ!等あるかと思いますが、そこは温かい心で読んでいただきつつ、ぜひご参考にして頂ければと思います。
では、クイズ形式で出題しますので、家族やご友人とチャレンジしてください。さあ、あなたのまわりで、遺贈クイズ王になるのは誰だ⁉
今回も、司会の私と、解説の行政書士長岡さんでお届けしいたします! 長岡さん、よろしくお願いします!
後継ぎ遺贈とは?
後継ぎ遺贈とは、遺言によって被相続人から遺贈を受けた人が死亡しても、被相続人があらかじめ他の相続人を指定して財産を受け継がせていくという遺贈です。受遺者である相続人に遺贈の目的物を相続させるのではない点に注意が必要です。
ではここで第1問です!
Q:被相続人AがBに対して遺贈をした。Bに遺贈された財産のゆくえを、Bの死後まで指定することができる。〇か×か?
遺言書で遺贈後の行方までは指定できない
一般的には遺贈された財産は、当人の死後は相続人に相続されたり、当人が指定する人に対して遺贈されたりしていきます。
答えは、〇です。では長岡さん、解説をお願いします!
長岡「はい、いきなり後継ぎ遺贈の本質に迫りましたね!」
我が家にもそんな財産あったらいいけど…。
長岡「でも、後継ぎ遺贈は、「Bの死後はCに相続させなさい」というように、財産の行方を指定していく方法なんです」
なんだか院政みたいですね。引退しても権力は握っておくぞ…みたいな?
長岡「受け取り方次第ですけどね(笑) でも民法上は無効であると一般的には考えられています」
ん? できるという話だったり、無効だったり…どういうことですか?
所有権は誰にも邪魔されない権利
長岡「実は民法の大原則である「所有権絶対の原則」に反すると言われているんです」
ありがとうございます。クイズなので、ちょくちょく挟み込んでいきますね。ではここで第2問!
Q:所有権絶対の原則は次のうちどれ?
A)人は何人からも妨害を受けることなく自分の所有物を自由に使用・収益・処分することができるという原則
B)人は自分の所有物を絶対に譲りたくないとなった場合には墓に一緒に入れられる原則
C)人のものは俺のもの、俺のものは俺のものと言ってはばからない絶対的強者がメガネをかけた弱者を空き地で圧迫する原則
答えは、Aです。
長岡「Cって絶対に嫌ですよね!(笑)」
ジャイアンですものね(笑)
長岡「所有権絶対の原則があるからこそ、遺言書を残している場合には国家のルールである法にすら縛られることなく相続人を指定することができるわけなんです。でも後継ぎ遺贈が許されるということになれば?」
遺贈や贈与などで財産を受け取った相手は、自らの所有物であるにもかかわらず、前の所有者の想いに拘束されたり制約される…あれ、これある意味ジャイアニズムでは?
長岡「まあ、民法にそんな用語はありませんが(笑) いずれにせよ、所有権絶対の原則から、ご自身が相続や贈与で取得した財産については、ご自分しか次の承継先を決めることはできないとされているんです」
例えば民法では、どのように決められているんですか?
長岡「わかりやすくいうと、いかに契約と言えど民法が決めていること以外の物権を作ってはいけないということですね」
となると…後継ぎ遺贈を有効なものとして認めてしまうと?
長岡「前所有者の意思に拘束されるので、民法に規定されている自由な使用・収益・処分ができないということになるんです」
ジャイアン、民法の前に破れたり…。でもですよ、当事者間において納得の上での後継ぎ遺贈であったらどうなんですか? どちらも、後継ぎ遺贈を希望している場合とか。
長岡「法に規定されていない所有権を生じさせるような内容の契約は無効ですから、いかに希望していたとしても無効には違いないという考え方になるでしょうね。ですから、後継ぎ遺贈をしたい場合には、別の方法で近しいものを検討しなくてはいけません」
はい、長岡さんストップ! では、ここでラストクエスチョンです!
Q:後継ぎ遺贈には類似の制度が3つあります。それは予備的遺言、相互遺言、あとひとつはどれ?
A)釣りの魚拓
B)博多どんたく
C)家族信託
後継ぎ遺贈の類似の制度
後継ぎ遺贈以外の手段で遺言者の意思を後世に反映する方法には、予備的遺言、相互遺言、家族信託があります。
正解は…言わずもがな、Cですね(笑)
予備的遺言|遺言者より受遺者が先に死亡した場合を想定
長岡「予備的遺言とは、相続させたい相手が遺言者より先に亡くなった場合に備えて、第二順位の相続人を指定しておく遺言のことです」
たとえば、妻に全財産を相続させる遺言を遺して、妻の方が先に亡くなるなどのケースですよね。
長岡「その場合、妻が遺言者より先に亡くなったら、妻に相続させるとした財産を子どもなどの別の人に相続させると遺言に記載しておくわけですね」
合わせて読みたい:相続人が先に亡くなった場合どうなるの?予備的遺言について解説!
相互遺言||お互いに遺言書を作ることで財産の行方をコントロール
相互遺言はどういったものでしょうか?
長岡「これは、お互い「私が先に死んだら、全てあなたに相続させます」という内容を含んだ遺言のことです。相互遺言を行うパートナーとお互いの死後の財産の行方についてお互いに意思を確認しておけば、二次的な財産の行方までコントロールできるんです」
相互遺言+予備的遺言と組み合わせることもできそうですよね?
長岡「そうですね。予防策を取ることができるでしょうから、さらに安心な手続きができると思います」
で、最後に、かぞ…。
長岡「…博多どんたくですね。これは福岡県福岡市で毎年5月に開催されるお祭りで…」
ちょちょちょ…え、ボケた? いまボケました?
長岡「失礼、たまには(笑) 家族信託ですね」
改めて、お願いします!
合わせて読みたい:LGBTや同性パートナーの遺言書の残し方~相互遺言について行政書士が解説!~
家族信託|2次相続以降の財産の行方を指定
長岡「家族信託は、資産を持つ方が、特定の目的に従って不動産・預貯金等の資産を家族に託すという仕組みです。例えば自身の老後の生活・介護等に必要な資金の管理や給付などですね」
いわば、信頼できる家族の家族による家族のための信託ってわけですね。
長岡「家族・親族に管理を託すので、高額な報酬も発生しません。資産家のためのものでなく、誰にでも気軽に利用できるという点で注目されているんです。家族信託であれば二次相続以降の資産承継をすることもできますから」
遺言書を作成の際は無効にならないよう専門家に相談
なるほど。ご自身の大切な資産ですから、後の世代の手に渡っても大切にしてほしいと望むお気持ちはよくわかりますからね。こういう仕組みをどう使っていくか、しっかり考えて遺言書に書いていかないと。
長岡「はい。裁判所の見解では、遺言者の真意を重視する判例もありますが、実務上の運用では後継ぎ遺贈は無効とみられているため、後継ぎ遺贈の記載はしない方が望ましいと言えます」
皆様も、ご不安あれば長岡さんにぜひ相談してくださいね。長岡さん、ありがとうございました!
この記事を詳しく読みたい方はこちら:遺言書で次の次の相続人まで指定できる?後継ぎ遺贈について行政書士が解説!